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第二章
建物が出来たら次は人手でしょ
しおりを挟むホール右手の階段を上がり、奥へと進んだ突き当たりにあるのがダンスホールだ。
正面に見える半楕円の形をした大きな扉が5つ並び、それぞれに凝った意匠が装飾されゴテゴテしている。ザ・ゴシックという感じのヨーロッパのお城のようだ。
私としてはもう少しシンプルでも良い気がするが、ダンスホールなので華美な方が良いとベルサイユ宮殿の鏡の間の壁や柱のようになってしまった。
中に入ると、フランスにあるヴォー=ル=ヴィコント城の楕円形サロンのような広間が目に飛び込んでくる。天井も円状に窪み、そこは窓となっていて空を写す。放射状の格子が雰囲気を出していてこの辺は私の推したい箇所でもある。
正面には上に行く階段があり、階段奥はドレープががったカーテンで幾重にも覆われて、いかにも王族が出て来ますよという感じだ。さらに左右に通路があり、2階の歓談席へと繋がっている。
中央は3段程階段を下って行く造りで、ダンスを披露する舞台となっている。
中央から見て小上がりになっている入り口から入ってすぐの場所には、所々に豪華なベンチが置いてありここでも歓談出来るように配慮されていて食事も出来る。
周りには半楕円形の窓が並び、その内の2ヶ所からバルコニーに出る事が出来るのだ。
1つは浮島の端っこにひょっこり出るように作られたもので、まるで火サスの崖上のようなスリルを味わう事が出来るバルコニー。
もう1つは、薔薇の庭園へと繋がるバルコニーである。
以上で分かると思うが、このダンスホール…異様に出入口が多いのだ。
日当たりは抜群だが、警備する人からすると最悪である。
つまり、ここに入ってから顔色が優れないのはロードであった。
私には従者的精霊がいるわけでもないし、創ったばかりの天空神殿に人が住んでいるわけもない。
だだっ広い2つの浮島で、案内人もいなければ給仕係すらいないのだ。警備する者がいるわけもない。
実質彼は、この浮島をたった1人とお子様ドラゴン2人で警備しろよと言われているようなものであった。
その為、自身の騎士団を警備にあたらせても良いかとヴェリウスに相談し始めたのだ。
はっきり言おう。
良いわけねぇだろ。それ、ルマンド王国の騎士団だからな。
『神々の集まりに只人を呼ぶ事は許されぬ。お主はミヤビ様のつがいであるからこそ許されているのだ。それを忘れるでない』
ヴェリウスさん、それ以前の問題です。
「そりゃ分かるけどよぉ…ここを俺とマカロンとショコラだけで警備すんのは無理があんだろ」
頭をガリガリとかいて「あ゛ーーっ」と唸るロードに、ヴェリウスは落ち着いた声音で話す。
『勘違いするでない。お前達3人はあくまでもミヤビ様の護衛であって神殿の警備が仕事ではないのだ。大体、浮島全土の警備等ミヤビ様のお力で万全よ。まぁ、こけおどしとしては人手もいるかもしれんが…』
何やら考え出したヴェリウスにやはり困り顔のロードをホールの中央で見ていると、
「ミヤビ様ーー! ショコラの声響いてますーー!!」
《あーー…すごーい! 僕の声も響くーーっ》
等と私の傍で山びこのような真似をしているお子様ドラゴン達の声が聞こえたのか、ロードが遠い目をしていた。
項垂れているロードの前を通り、トコトコとこちらへやって来るヴェリウスに首を傾げる。
「どうしたの?」
『ミヤビ様、私の精霊を給仕や案内係として招いてもよろしいでしょうか?』
そんな事を言い出したので驚いた。
「助かるけど、ヴェリウスの神域は大丈夫なの?」
精霊は珍しいそうだから、数もそんなにいないんじゃないかと心配になる。
ただでさえだだっ広い神殿で少数の精霊が働くなど、1日~2日といえども過労死してしまいそうだ。
それならいっそAIのような機能を導入した方がいいのではないかと考えてしまう。
まぁ、パーティーが終わればここは住みたい人に住んでもらえればいいかなぁなんて考えてもいるのだが。
神殿はリゾートホテルのような宿泊地にして、下の浮島を人族や獣人等に管理してもらったり? どうせなら食と衣に特化した街を作ってもいいかも…。で、たまに観光に来たりすれば楽しいだろうし。
等と明後日の事を考えていたら…
『ご心配には及びません。私の神力はミヤビ様のおそばに侍る事で増幅しておりますゆえ、精霊の100や200生みだすのに何の問題もございません』
え? 精霊って自分で生みだすの?
聞き捨てならない事実を知った。
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