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第二章
吊り橋効果っていうけれど
しおりを挟む階段を15段残した位置に突然転移する為、そこだけは驚いて落ちない様前方を除き周りを透明な壁で囲っている。
当然50段目から転移した私達はすでにスカイツリー程の高さに来ているわけで、下を見た瞬間気絶しそうだ。
しかも2メートル近い神輿に乗って高さが嵩増しされた状態の私はすでに涙目なのだ。
平然としているロード達の気が知れない。
《皆待ってー!! いつの間にそんな上に移動したのー!?》
「すっごーい!! 下の浮島の全部が見えますよーっ キレー!!」
階段を歩いていないマカロンは私達に合わせて飛んでいた為、急に転移した私達に驚いたのだろう。少し可哀想な事をした。
ショコラさんはいくらテンションが上がってるからって、こんな高い位置にある階段でぴょんぴょん跳ねるのはお止めなさい。私の心臓が止まるから。
『さて、そろそろ神殿の全容が見えてくるぞ』
ヴェリウスの声に下の浮島を見ていた2人と1匹が前を向き階段上を見た。
皆見るからにワクワクしているのが分かる。それが余計に嬉しいのだろう。ヴェリウスは尻尾を細かく振り、先頭きって階段を上っていく。
その後ろ姿は興奮を抑えられない子供のようにも見えて微笑ましい。
「ヴェリウスは何であんなに張り切ってんだ?」
常にはない師匠の様子が気になったのだろう。ロードは不思議そうな表情でヴェリウスの後ろ姿を見てから訪ねてきた。
「神殿のデザインを考えたのはヴェリウスだからね。皆が次は何が出てくるの!? って楽しみにしててくれる事が伝わるから余計張り切ってるんだと思うよ」
「あ~、まぁこんだけすげぇもんを次から次に見せつけられたら期待しちまうよなぁ」
前を歩く1人と2匹を見上げて苦笑いするロードに、
「でしょ! きっと期待を裏切らないよ。ね、ロードも早く行こう!」
と急かす。
ロードはそんな私に優しく微笑みかけると
「分かった、分かった。けどなぁ、その前に」
等と言いながら神輿抱きから横抱きに体勢を変えられたのだ。
「え? どうしたの?」
「オメェ高い所がダメだろ。下見ねぇように俺の胸に顔を埋めてろ。そしたら怖くねぇから」
「うそっ 何で分かったの!?」
怖いなんて一言も話していないのに、とロードを見れば
「そりゃあこんだけ体をカチコチにしてりゃあ誰だって分かんだろ」
そう言ってククッと喉の奥で笑われたので恥ずかしくなって目をそらした。
ロードはたまにこうやって“大人の男”を出してくるから侮れないのだ。卑怯な奴め…。
「ほら、俺の首に腕を回してりゃ下も見えねぇし多少マシになんだろ」
そう言われ、恐る恐るロードの首に腕を回す。
思ったよりも首が太くて、まるで抱きついているみたいで益々恥ずかしくなってくる。
目を泳がせながら徐々に手をずらし、肩辺りの服を掴めば、「それじゃあ落ちんぞ」と笑われた。
何だかこっちばかりが意識しているみたいで段々腹が立ってきたので、ムッキムキの胸筋に頭突きする勢いで顔を埋めると、ロードの心臓が思ったよりも速く脈打っている事に気付いて顔が上げられなくなった。
「おっきーーーい!!!!」
《でっかーーーい!!!!》
階段を上りきった先で、ショコラは両手を目一杯空に向かって掲げ、マカロンは羽を大きく広げて尻尾をピーンと立て、上を見上げて叫んでいた。
その通り。天空神殿はこの浮島目一杯の敷地面積と、300メートルの高さを誇る超巨大な建物なのだ。
そして見た目は、フランスにあるモンサンミッシェルのように、中心部が一際高い塔になっている。
正面の造りはゴシック様式のお城のようだが、実はこの神殿、3つのゾーンに別れているのだ。
正面のゴシック建築ゾーンと、その右奥にある日本建築ゾーン。左奥にはギリシア建築ゾーンがある。
主に使用するのはゴシック建築ゾーンで、今回のパーティーもここを使用して開催する予定だ。
ゴシック建築ゾーンの中は入ってすぐの大回廊が圧巻で、アイスランドにあるハットルグリムス教会の内部のようなドーム型の光溢れる回廊は、見る者の心を奪う美しさだ。
ヴェリウスとランタンさんは光の大回廊と呼んで興奮していた。
私としては通路のサイドにある柱の一本一本が森の木々のようなデザインという所を推したい。
イメージとしては、森の中に自然に出来た木々の巨大トンネルといった感じか。窓を大きく多く作って光を取り入れているので神々しく輝いているけれど。
そんなドラゴンも通れる大回廊を皆で賑やかに進んでいるとだだっ広いホールが現れる。
その正面と左右に階段があり、正面の階段を進めば謁見室に。右の階段を進めばパーティー用の大ホールに繋がっている。左は休憩室や、宿泊ルームに繋がる通路があるのだが、今はパーティー用の大ホールへと向かう事にする。
何しろ近々使用するのはこの部屋なのだから。
ロードは神殿に入ってからずっと、真剣な顔をして扉や窓の位置、柱やその裏側などを細かくチェックしている。
何をしているのか問えば、「オメェを守る為に色々チェックしてんだよ」と言われ顔が熱くなった。
そういえばこの人、一応騎士だったんだ!!
真剣に仕事をしている所を見た事がなかったから今の今まで忘れていた。
むしろオッサンなゴリラだとばかり…。
「どうした? まさか真剣に仕事してる俺に見惚れちまったかぁ~?」
しかしあっという間にいつものオッサンゴリラに戻ってしまったので、
「んなわけあるか!」
と言って頬をつねってやった。
それでもニヤニヤしていたので「先へ進もう!」と腕中で叫び、皆をびっくりさせてしまった。
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