異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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第二章

メロン閣下と貧民ミカン

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?視点です。

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何というデタラメな力だっ まさか私の結界をものともしないとは…っ

核を手にしようと精霊ガットに触れた瞬間に感じた違和感。
集中して気配をおえば、精霊の力ではないものが瞳の辺りから僅かに感じられ気付いた。

これは神王の力だと。

ずっと干渉されていたのだ。

歴然とした力の差に恐怖し血の気が引く。
しかし、私はあの時決めたのだ。例え神王に仇をなす事になろうがのだと。


神王の力の一端を見せつけられ、核まで奪い返されて私の心は酷く荒れていた。それを鎮める為に神殿の最奥にある部屋へと足を向ける。

先程の広間とは比べ物にならない程慎重に、幾重にも張り巡らせた結界は私以外の全ての者を拒む。
他神の眷属チカラを利用してまでも厳重に張っただけあって十二分にその役割を果たしている。

そうした結界を抜け、私だけが入る事の出来る扉を潜ると目に写るのは部屋の3分の1を占める巨大な天蓋付ベッドだ。
天蓋のカーテンは閉じられ、誰にも会いたくないのだと拒否されているように感じるのは私がかのひとをからさらってきてしまったからだろう。

ゆっくりとベッドに近付き、カーテンを捲ればかの人の姿が見える。
先程までの荒れ狂うような心は嘘のように鎮まり、目の前の人で一杯になっていく。


瞳は閉じられ今はまだ眠りから覚める事はないが、核さえ取り込めば目覚めてくれるはずなのだ。

「大丈夫、すぐに君を目覚めさせてみせるからーー…」


   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


雅視点です。

◇◇◇

「神王様、アタクシの愛し子を取り戻して頂き、更に貴方様にお目にかかる機会まで与えて下さった事、心より感謝致します」

西の山から帰って来た翌日の今、目の前で極上の美女に膝をつかれ面を下げられているのだが、一体何事だろうか?

『よく言う。突如押しかけて来おって』

ヴェリウスが美女に胡乱な目を向けボソリとこぼすが、その声が耳に届いたのか美女は面を下げたままヴェリウスをキッと睨むと、

「黙りなさいな小娘!!」

と吼えた。

「アタクシに黙って神王様の神域に押しかけたのはアンタが先でしょう!! しかもアタクシが謁見を申し込む度に邪魔をして!」
『小娘は止めんか。お主の方が数日早く生まれただけで先輩面しおってからに』
「フンッ数日でもアタクシの方が先輩で間違いないでしょう。お姉様とお呼び!!」

女王様!!!!?

『何がお姉様だ。自身をよく省みるがいい』
「んまー!? 何て言い草かしらっ アタクシの大切なドラゴンちゃんまで謁見の為の賄賂として渡したというのにこのふてぶてしい態度!!」
『馬鹿者。お主の送り込んできたドラゴンがどれだけ我らに迷惑をかけたと思っておる。
引き取ってやっただけありがたいと思え』

ん? ヴェリウスと女王様の話すドラゴンって、もしかして…?

「馬鹿者!? アンタッ ドラゴンちゃんがどれだけ希少か分かって言ってんの!? しかも若い雄よ!! アタクシがどれだけ身を削る思いで手離したかっ 神王様に献上するから納得したっていうのに嫌がらせみたいに人族に与えるなんて!! キィーッッ」

キィーッて怒る人初めてみたなぁ。でもその怒り方、何か似合ってますねお姉様。


はい。この美女が何者かわかってきましたよ。
ズバリこの美女、“竜神”でしょう。

金色の切れ長な瞳に高い鼻と赤い唇。エメラルドグリーンの波打つような髪が腰にかかり、メロンのような立派なお胸がたゆんたゆんと揺れてウエストの細さを際立たせている。

メロン閣下!! メロン閣下が降臨されぞぉぉぉ!!
この卑しい貧民ミカンに是非とも秘訣を!!

と心の中で思いながら遠くを見た。


「ーー…でもさすが神王様ですわ。生まれたばかりとは思えない圧倒的なそのお力…」

いつの間にかヴェリウスとの言い合いを終えていたメロン閣…女王…、竜神はうっとりしながら私を見上げてきた。膝はついたままなのがいたたまれない。そして私の格好、麦わら帽子にTシャツ、ステテコにサンダルをお洒落に着こなしているのだ!!

「神王様の御前にて失礼を致しました」

再び面を下げる竜神。

いえいえ、こちらこそメロン様の御前にてミカンごときを晒してしまい失礼致しました。

「お初におめもじいたします。アタクシ、東の山を司っております竜神で、“ランタン”と申します」

凛とした声と姿はで先程とはうって変わったような雰囲気だ。

「この度は事前の御約束もなく突然参りました事お詫び申し上げます。一刻も早く神王様にお礼をのべねばと参上致しました事、どうかお許し下さいませ」

丁寧に謝罪をされいたたまれなくなるんだが…。

「あ、はい。大丈夫ですのでお顔を上げてもらえますか?」

こんなボンッキュッボンの迫力美女に頭を垂れさせるなんてこの人のファンに殺されそうだ。

「まぁ!! アタクシの顔を気に入って頂けたのでしょうか!? 嬉しいですわ!!」

違う。そういう事じゃない。
何だかアクの強そうな人がやってきたなぁ。
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