50 / 587
第二章
ホッとしたのもつかの間
しおりを挟む「ハァ、ハァ……ッ ミヤビ、待ってろよ…っ いま、いく……」
すでに瀕死ーーー!!!?
「ロード!? 何で瀕死なの!?」
ロードを召喚したら目は虚ろで汗を吹き出し、意識が朦朧として倒れてるんですけど!?
『…ミヤビ様、何てモノを召喚しているのですか…』
《ロード様、魔力の使いすぎですね~》
ああ…飛行訓練まだやってたんだね。
ロードを回復させながら偉い偉いと頭を撫でてやる。
こんな頑張り屋さんだから師団長になれたんだろうなぁと思いながら。
『何故ソレを召喚されたのですか?』
「だって2人が暴走していたから、止められる人を呼んだんだよ」
結果的に止める事が出来たわけだし。
『…申し訳ありません』
くぅ~んと鳴いてすり寄ってくるので可愛くて首や頭に顔を埋めれば、パタパタと尻尾を振っている音と風を感じる。
《主様ぁ~ごめんなさい》
ドラゴンの姿なの抱きついて来れないショコラは、鼻の頭だけを肩に寄せてきた。
「2人共怒ってくれてありがとうね」
両手に花状態でもふっていれば、地をはうような声で「おい」と聞こえそっちを見る。
「ミヤビは俺のつがいだぞ!!」
バリッという音がするんじゃないかという位の勢いで2人から剥がされた私は、あっという間にいつもの定位置へ。
「ロード、もう大丈夫?」
そうロードの腕の中である。
「ミヤビ、回復してくれてありがとうな……じゃねぇよ!! 何で黙って出掛けやがったこのばかが!!」
「黙って出掛けてないよ。ちゃんと伝えたよ」
「アホか! マカロンにゃ伝わっても俺に伝わってなけりゃ意味ねぇんだよっ」
怒っているのにぎゅうぎゅう抱き締めてくるので苦しいんだけど。
「聞いてんのか!?」
「ハイ! 聞いてマス!」
鬼の形相で睨んできたので姿勢を正して即座に返事をする。
「っとにオメェは目が離せねぇ」
「スミマセン…」
説教モードに入ったロードに、何か忘れてる気がするなぁと思うが、今目をそらせると大変な事になるので仕方なく怒られる事にする。
しかし最近ヴェリウスとロードによく怒られてるよなぁ。
『ロードよ、説教は帰ってからでも出来るであろう。そろそろこっちの問題に目を向けてやらねば、精霊が拗ねてしまうぞ』
「あ゛ぁ゛?」
ヴェリウスの声に振り返るロード。
良く言ってくれたヴェリーちゃん。しかし帰ってからも説教されるの? ご勘弁を~。
「…次から次へと忙しい奴らだ」
動けない間抜けな精霊男はそう呟くと召喚したロードを見た。
「召喚とは…貴女も神か」
等と言って私に目を移すので、ロードが視線を遮るようにさらに腕の中へと閉じ込める。
「テメェ何人様のつがいを見てやがる。殺すぞ」
ヤンキー襲来ィィ!! 止めてっ何か恥ずかしいから!
「つがい…貴様人族か…まさか神をつがいだという人族がいるとは……」
少し驚いたように表情が動いたが、またすぐ無表情に戻るとじっとロードをみている精霊男。
「だから何だ」
警戒し始めたのか、私をヴェリウスとショコラの間に降ろすと剣を構えるロードは忘れがちだが騎士なのだ。
決してヤンキーやヤクザ、冒険者ではない。
「人族は弱い。私は人族に手を下す趣味はない」
動けないクセに格好をつける精霊男の方が騎士に見えてきた。
「弱いかどうかは試してからにしろや」
「止めろ。死ぬぞ」
お前がな。
と心の中で呟く。だってあの人動けないんだよ?
『ソレをただの人族だと思うなよ。ソレは私が一から鍛えた馬鹿弟子よ』
いつの間にかヴェリウスがロードの師匠になってたーー!!?
いや、師匠っぽいなぁとは思ってたけどね。
「っ神獣が人族を弟子にするだと!?」
驚愕しヴェリウスを凝視すると、冷静さを取り戻す為か一度目を閉じ「ならば相手をしよう」とロードを見た。
いや、貴方今動けないから。何言ってんの? すごいこっちを見てくるんだけど、拘束を解くわけないでしょうが。
「どこの神かはわからんが、空気を読んで解放してほしいのだが…」
お前が空気を読めェェェ!! 何言ってんのこの人!?
周りを見るとヴェリウスもショコラも呆れたような表情をしている。ロードは首を傾げているが、この反応は来たばかりだから仕方がないだろう。
『貴様は我らを馬鹿にしているのか』
「何だぁ? オメェ拘束されてんのか? なら俺の出番はねぇなぁ」
ガシガシと頭をかき私をの腰を抱くロードに呆れる。
しかし、拘束されているというのにこの男の余裕は何だろうか…?
手の中にある幻獣の核を見れば、深い青が鈍く光った気がした。
「ーー…そろそろ遊びは終わりだ。どうやらドラゴンの核も手に入れたようだからな」
『ドラゴンの核だと!? 貴様何を…!?』
ヴェリウスがハッとして精霊男と幻獣の核を見比べた刹那、手の中の核が黒い炎に包まれた。
「ミヤビ!!」
反応が早かったロードに核を叩き落とされ、それが吸い込まれるようにコロコロと転がって男の足下で止まる。
「それでは神族の方々、失礼致します」
核を手に取ると、男はニヤリと笑っておどけた調子でそんな事を言い、まるでヨーロッパの紳士のようなお辞儀をしてそのまま黒い炎と共に消えてしまった。
79
お気に入りに追加
2,570
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?
せいめ
恋愛
女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。
大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。
親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。
「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」
その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。
召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。
「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」
今回は無事に帰れるのか…?
ご都合主義です。
誤字脱字お許しください。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる