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第二章
その頃…〈ロードside〉
しおりを挟むロード視点です。
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「あ゛ーー死ぬ…っ ドラゴンに乗る事がこんなに大変だとは思わなかったぜ…っ」
《僕も人間を乗せるのがこんなに大変だとは思わなかったし…》
何度か結界を纏いマカロンに乗る訓練を繰り返したが、体力の消耗(正確にいやぁ魔力の消耗だが)が激しく、手足がガクガクしてやがる。
立ち上がれず地面に大の字になっている俺を見下ろして遠い目をするマカロンに鼻を鳴らす。
「はっ オメェは人の事を考えずに飛ぶからなぁ。もうちっと背中を意識しやがれ」
《そんな事言われても~。人なんて乗せて飛んだことないし。ロードさんこそもうちょっと丁寧に乗ってくれないかなぁ。僕の背中殴るの止めてよ》
「バカか。そりゃオメェが俺の存在を忘れて回転したりするからだろうが」
バカなドラゴンに文句を言いつつ結界内の家に目を向ける。
結界外からは今まで見えなかった内側が、同棲を許してくれたからか見えるようになった幸せを噛みしめ目を細める。
ミヤビを置いて王都に戻ったあの日を思い出すと、よく離れられたもんだと今となってはゾッとする他ない。
確かに森へ戻って来る気満々で陛下を救いに王都へ行ったが、今なら何があってもミヤビを離さないだろう。一緒に行く選択しかない。
ああ…あの時にした初めての口付けは忘れられないな。
口付けといやぁこの間の口付けは最高だった。
何しろミヤビが酌をしてくれるってんでひどく興奮したんだよなぁ。まるで夫婦の晩酌みてぇだろ。そりゃ俺的には夫婦のつもりだけどよぉ、ミヤビがまだ“夫婦”ってのを認めてねぇんだよなぁ。勿論恋人期間も大切だけどな。
更にあんな可愛く「お酌しようか?」なんて言われたら普通ムラッとすんだろ。
あまりの事に手酌で入れた分を一気飲みしたからな。
けど我慢したんだぜ。でもじっとあんな可愛い顔で見られたら理性の糸も切れるってもんだろ。
くそっ ショコラとヴェリウスさえいなけりゃ今頃は…っ
《そういえば、ミヤビ様はいつ帰ってくるのかなぁ~》
「あ?」
このバカ、俺がミヤビとのラブラブな生活を思い出してた時に何て言いやがった?
《だって少し前にミヤビ様が出てきて、“ちょっと出掛けてくるね~”って》
「何だと!? 少し前っていつだよ!?」
《え~、ロードさんがヴェリウスさんに笑われて頑張るーって飛んでからちょっとして~?》
「っ一時間近く前じゃねぇか!! 何ですぐに言わねぇんだこのバカドラゴン!!!」
疲労感も忘れて飛び起きると結界内へと走る。
ミヤビが出掛けるなんてまずありえねぇ。アイツは人に会いたくないだ、動きたくないだと外出を嫌っていた。アクティブな奴じゃねぇんだよ。
家が好きでゴロゴロしてるのも好きだしな。
そんなミヤビが外出だと? 何か余程の事があったんじゃねぇか…。
家に入ると人の気配は無く、ヴェリウスやショコラも居ない事を知った。
そりゃそうか。アイツらがミヤビを置いていくわけがない。
一体どこに行きやがったんだっ
いたる所に何か残していないか探すが何も出て来ず、またバカドラゴン…マカロンの所へと戻る。
「マカロンっミヤビはどこに行くって言ってた!?」
《ミヤビ様は目的地は言ってなかったけど、ヴェリウス様が西の山に帰ったみたいだから、それを追いかけて行ったんじゃないかなぁ?》
ヴェリウスが自身の神域に帰ったという話がマカロンの口から出た事に驚いたが、今はどうでもいいことだ。
それよりミヤビが追いかけて行ったってどういう事だ!? 一体何があったってんだ…っ
「マカロン!! 西の山まで飛べ!!」
《え? 何で??》
「何でじゃねぇよ!! テメェショコラが心配じゃねぇのかっ」
キョトンとしているマカロンに、本当にショコラに惚れてんのか!? と思いながら叫べば、
《ショコたんは強いし、神王様がいるんだから大丈夫だよ~》
等とクソみてぇな事を言うので頭を殴って背に飛び乗った。
俺の結界が例え5分しかもたなかろうが、何もしねぇまま行かねぇ選択肢はねぇんだよ。
マカロンが渋々空へ上がって行く中、そんな事を思いながら気を引き締めたのだった。
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