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第二章
竜神のお使い
しおりを挟む「とりあえず、目が覚めてまた箱入りドラゴンにまとわりついても困るから小さくしておこうかな」
「小さくだぁ?」
「そう。手の平サイズなら危なくないだろうし」
願えばみるみるうちに縮んでいき、手の平サイズとなる。
凍らされていた身体も解凍し拾い上げると、まるでフィギュアのようで面白い。
「本当に何でもありだな…」
『神王様だからな』
一緒に暮らすようになって、私が“神王”だと知ったロードは特に態度を変えるわけでもなく普通(?)に接してくれている。
たまにこうして力を使う時、思い出したかのように不思議そうな、でも呆れたようなそんな顔をして起こる出来事を見ているのだ。
基本面倒だと思った時に力を使うので呆れているのだろうけど。
「これでもう怖がらなくて大丈夫だよ」
箱入りドラゴンに話し掛けると、彼女は嬉しそうに寄ってきて頭を下げた。
《主様、有り難うございます。これでいつもの仕事に戻れます》
箱入りドラゴンは一体何の仕事をしているのか…。
『ミヤビ様、水色のドラゴンには森で何かがあった場合即知らせるように警備を任せているのです』
「もしかして、いつもウチの周りをパトロールしてくれてるアレの事?」
私の思考を読んだヴェリウスが説明してくれるが、驚きの事実である。
《それも仕事の一部ですが、主様の家の周りは競争率が高いので交代でやっています》
シフト組んでたー!!!
「そうなんだ…いつもありがとう…ハハハ…」
思わぬ事実がわかったが、今はそんな事よりこのフィギュアをどうするかなんだよね…。
手の平ですやすや眠っている変態ドラゴンをのぞきこむ。
「ミヤビ、危ねぇからこっちに寄越せ」
専用神輿…ゴホンッ ロードの手は私を抱き上げている為塞がっているにもかかわらずそんな事を言ってくるので、下ろしてもらわないと渡せないだろと言えば、片手に乗せられ変態ドラゴンを奪われた。
「で、コレをどうする気だ?」
『やはり殺してしまいましょうか』
ヴェリーちゃん、たまに過激になるよね。
ロードの手の平にいる変態ドラゴンを皆で見ていると、ピクリと反応した。どうやら起きたようだ。
《私は仕事に戻ります!》
箱入りドラゴンがその反応を見て逃げるように行ってしまった。かなりトラウマになったらしい。
それはそうだろう。あんな変態今まで見た事がなかっただろうし、衝撃的だったに違いない。
ロードが訝しげに箱入りドラゴンを見ていたので、言葉がわかるようにしてあげた。
変態ドラゴンを持ってるのはロードだしね。
《…あれ…ここは…?》
モゾモゾと動き出して目を開けると、周りをキョロキョロして呆然としている。
ドラゴンの言葉が突然分かるようになったロードは驚いて、チラリとこっちを見ると溜め息を吐いてから変態ドラゴンに話しかけた。
「そこは俺の手の平で、テメェはさっき水色の奴に氷漬けにされたんだ」
《手…? 水色…!? あの水色の美しい彼女はどこに!?》
どう考えても手の平に居る事と、目の前の人間が巨大な事に驚きがあってしかるべきだろうに、この変態ドラゴンは箱入りドラゴンの事を気にしてキョロキョロと探している。何て奴だ。
『あやつはもうおらぬわ。それよりも貴様、ここを神王様のおわす神域と知って来たのか』
ヴェリウスの鼻の頭のシワが凄い事になっている。私だったら泣いてる位には怖い。
変態ドラゴンからみれば、あり得ない程デカイ犬が鼻の頭にシワを寄せて威嚇してきているわけだからちょっとは怖がってもよさそうなものなのに平気そうだ。
《あ、はい。あの、もしかして神獣様でしょうか?》
『分かっていてやって来ただと!?』
変態ドラゴンの話により怒りが増したらしいヴェリーちゃんは、グルグルと唸りだす。
ヤバイ。このままでは変態ドラゴンが食べられてしまう。
《竜神様より神獣様に伝言を承ってまして、それでこちらに来ました》
あれ? 移住って言ってなかったっけ?
『何だと…貴様移住すると言ってなかったか?』
《はい。僕、運命の出会いをしたので是非ここに住みたいです》
同じように思っていたヴェリウスが直接聞いてくれた。
しかしこの変態ドラゴン、何となく新入社員感が…。
「何か……新人の騎士でたまにこういう奴がいるよなぁ」
ロードも新人あるあるを思い出したらしく、遠い目をしている。
そういう子程社会の荒波にもまれて、3年後には別人のようにしっかりした子になってるから。
等と現実逃避していると、話が進んでいたらしい。
『ミヤビ様、竜神がミヤビ様に謁見したいと望んでいるようです』
ヴェリウスの話にハッとして現実に戻った。
「竜神が?」
『このように非常識な謁見の申し込みなどありえません。断りましょう!!』
ヴェリウスはぷりぷりと怒り、変態ドラゴンに『断る』と伝えておけと返事をしている。
《そんな返事を持って帰ったら僕が竜神様に叱られてしまいます! 大体精霊を何度送っても神獣様に断られるので僕が直接来る羽目になったんですからね》
『当たり前だろう。神王様は2歳になられたばかり。謁見などまだ早いわっ』
目をつり上げて話すヴェリウスはやはり私を幼児だと思っていたらしい。
「は? オメェ2歳って…マジか」
「いや~、う~ん…成人してるはずなんだけどね…?」
「成人してなかったら俺ぁヤりてぇって感情はねぇはずだから、成人してんのは間違いねぇだろ」
ひいぃぃ!
そっちで判断しないでくださいーっっ
《お二つとはいえ、世界を魔素で満たされたのですから、充分神とお会いする事も出来るのでは?》
『まだ幼い神王様は私以外の神族と謁見した場合何をされてしまうか予測がつかないのだ!!』
ヴェリウスさん、謁見を断る理由がそれって。
せめて人見知りって事にしようよ。
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