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第2章
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しおりを挟む階段を上がり3階の一角にある部屋へと案内されたシン達の前には、書類へ目を通しながら忙しそうに仕事をする中年の男が在った。
「呼び立てして申し訳ない。そちらに座ってもらえるか」
チラリとシン達を見た男はそう言ってソファをさすので戸惑いながらもそこへ腰掛けたのだ。
机の上を多少整理してから立ち上がると、男はシン達が座るソファへと移動してきた。
「私がここのギルドマスターをしている“ノイン・マッカート”だ。“灰色の城”の諸君に訪れていただけるとは光栄に思う」
ーーーーー
「なぁ、俺達のパーティー名何にするよ?」
12歳で冒険者ギルドへ登録し、1年が過ぎたある日の事。
ギルドの依頼の仕事で魔物を狩った帰り、ウィキは前を歩くシンとチュウに向かって言った。
パーティーは組んで居た3人だったが、まだパーティー名が決まっておらず申請出来ずに居たのだ。
「パーティー名は付けても付けなくてもいいんだろ」
シンの言葉にそりゃそうだけど付けた方が格好良いじゃんと答えたウィキは、爛々とした瞳で2人を見返したのだ。
ちなみにパーティー名を申請しない場合は、“シン、ウィキ、チュウのパーティー”と書類に記入される。
「格好良い名前付けようぜ!」
「格好良い名前ねぇ…」
シンとチュウはウィキのはしゃぎように顔を見合せ柳眉を下げた。
「あっ俺達の髪の色を混ぜたら灰色になるし、“灰色の狼”とかどうよ!?」
すげぇ格好良い名前思いついちゃったよ~とニヤニヤしているウィキに、2人は思った。
何故髪の色を混ぜ、狼を付けるのか、と。
「何で狼なんだよ」
「え? 格好良くね? 狼って何か格好良い代名詞だろ?」
何となく格好良いからと言うウィキに、13歳になったばかりの男の子だしなと納得したシンだったが、チュウは納得出来なかった。
「灰色はまだ分かるわよ? けど狼って単純すぎよ。狼と付くパーティーが世の中にどれだけいるかわかってるの!」
いや、そんなに多いの? ウィキ的思考の冒険者。とシンは思ったが口には出さなかった。
「じゃあチュウは何が良いんだよ!!」
代案出してから文句言えよなと唇を尖らせるウィキに、チュウは堂々言った。
「髪繋がりなら、“灰色の毛玉”でいいんじゃない? アンタの髪が一番目立つし」
「毛玉じゃねぇよォォ!?」
酷すぎるパーティー名に、チュウのセンスの無さが浮き彫りとなった出来事であった。
ぎゃーぎゃーと言い合っている2人に呆れ溜息を吐くと、シンは仕方ないと案を出したのだ。
「なら、“灰色の家”とか? 俺達が帰る場所って事で」
単純だが、パーティーを組むならこの3人以外には考えられないし、幼い頃から共に居る3人はすでに家族のようなものだとシンは考えていた。
例え大人になって巣だって行っても、このパーティーが自分達のホームなのだと忘れないで欲しいと意味もこめているのだ。
「あら、良いじゃない」
「えーでもさ、家って何か格好悪くね?」
チュウは喜んでくれているが、どうも格好良さを求めるウィキには納得出来なかったようだ。
するとチュウが付け加えた。
「家なら、私達が住む国の象徴の王宮はどう? 私達の家はこの国にあるんだし、シンの本当の家でもあるし、“灰色の王宮”なら“家”よりはグレードも上がるわよ」
若干面倒臭くなってきたのだろうか。家のグレードをアップして王宮にするという投げやりの発想にシンは苦笑う。
しかしウィキはそうではなかった。
「それな! 何か豪華になって良い!! けど、王宮より城のが響きも良くねぇ? 」
“灰色の城”。
こうして決定したシン達のパーティー名は、その後の活躍により世界中のギルドへと知れ渡る事となる。
ーーーーー
「ー…Aランクパーティーである君達をここに呼び出したのは他でもない。
ヒルデン公国の“ミスリーオの迷宮”のスタンピードを阻止してもらいたい」
自己紹介もそこそこに本題を切り出したギルドマスターは、シン達に向かってそう言い放ったのだ。
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