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番外編 〜 ミーシャ 〜
番外編 〜 ミーシャの日常 授業参観編1 〜
しおりを挟むミーシャ視点
「おはよう! ミーシャ」
「クロエ、おはよう」
公爵令嬢と告白してからも、三人が言っていた通り、私たちの関係は変わらなかった。
ただ、秘密が無くなったからか、三人と目が合うとお互いに、なんとなく笑ってしまって、くすぐったいような、泣きたくなるような、良くわからない感情が湧き上がってくる。
「やっぱりもったいない」
「え?」
「あの芸術品のような顔を、前髪と眼鏡とそばかすで隠すなんて……っ」
クロエが朝からそんなことを言ってくるものだから、「ちょ、声抑えて」と慌てて口を塞ぐ。
誰にも聞かれていないかと、キョロキョロと教室を見渡すが、朝のこの時間はみんなお喋りに夢中で、誰も気にしていなかった。
「みなさま、ご機嫌よう」
と、そこに、現在このアカデミーで一番位が高く、今年の冬のデビュタントでも関心を集めるだろうと評判の美人であるロペス侯爵令嬢がやって来たことで、お喋りしていたみんなの注目を一気に拐っていく。
「オーロラ・ブルー・ロペス侯爵令嬢。綺麗な人よねぇ。二日前までは、あんな綺麗な子見たことないって思ってたけど、本物の美人を目にすると、言われてるほどでもない? って思っちゃうのよね」
「クロエ……」
「本物の女神様を前にしたら、あの自信は打ち砕かれるでしょうね」
まぁお母様は、毎年皇后陛下と一緒に、デビュタントする令嬢たちの自信を木っ端微塵にしてるって、アベルお兄様が言っていたけど……。
「それにロペス侯爵令嬢の友だちは、ロペス侯爵令嬢が皇太子殿下の婚約者に選ばれるって言って回ってるみたいよ」
「アスお兄様、人気だからね」
「もうっ、私たちはミーシャを応援しているからね!」
クロエは何を応援しているんだろうか??
「ミーシャってば、自分があのディバイン公爵令嬢だってことを自覚しなさいよね」
「クロエ! しーっ」
「どうせ授業参観でバレるんだから、時間の問題でしょ」
バレる前提!?
「今年の皇城でのデビュタントは、ロペス侯爵令嬢じゃなく、ディバイン公爵令嬢の話題で一色になるはずよ。あーあ、私も貴族だったら面白いデビュタントが見れたのに」
「ミーちゃんのデビュタントの話?」
デビュタントの話で盛り上がっている時に、コニーが教室に入って来た。
「コニー、おはよう」
「おはよう、コニー。そう! 私も貴族だったら見れたのに! って言ってたの」
「おはよう二人とも。そうだね。貴族って色々大変そうだから、なりたいかって言われたら遠慮したいけど、ミーちゃんのデビュタントは見たいよね」
などと話しているのが聞こえたのか、ロペス侯爵令嬢の友だちが、「貧乏男爵令嬢がデビュタントの話をしているわよ」と、馬鹿にするようにコソコソと話しているのが耳に入った。
貴族はカーストを気にするよう教育されているから仕方ないとはいえ、あまり良い気分ではない。だというのに、コニーもクロエも気にしていないようなので、頼もしく思ってしまった。
「参観日が楽しみよね」
「うん。あの鼻っ柱がポッキリ折れるのが楽しみ」
と二人が笑っていたことには気付かず、そろそろ先生が来るなと、教科書を鞄から引っ張りだしていたのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~ おまけ ~
三人が帰った後、私は一人頭を抱えていた。
三人との友人関係が壊れなかったのはすっごく嬉しいけど、大問題が残っていたのだ。
授業参観、どうしよう……っ
『ミーシャ、なやむ。アオ、そーだんのる!!』
絶対いらない。
『アオ、かいけつできる!!』
引っ掻き回して終わるだけだと思う。
『ミーシャ、チロ、イイカンガエ、アルノ!』
アオの申し出を断っていた時だ。
私の肩に乗り、ずっとそばで見ていたチロちゃんが、顔の前に飛んできてそう言ったのだ。
アカやアオとは違い頼りになるチロちゃんは、くるくると周りを飛び回り、良い考えとやらを教えてくれた。
『ベル、テオ、ヘンソースルノ~!』
変装? お父様とお母様が?
『ミーシャ、イッショー』
「そうか……、お父様とお母様に私と同じような変装をしてもらえばいいんだ!」
『ミーシャ、ベル、オソローイ』
「うん。早速お母様たちに言ってくるね。ありがとう。チロちゃん」
『あーっ、チロ、めっ!! それ、アオいおーとした!!』
さすがチロちゃん! アオは、「おもちゃもっていくー!!」とかそんなしょうもないことを提案しようとしたに決まっている。だってアオだから。
『アオのてーあん、チロとった!!』
『チロ、トッテナイノ』
お母様たちにチロちゃんの提案を言いに行こうとしたのだが、後ろでアオとチロちゃんが珍しく言い合いになっていて驚いた。
「二人とも、ケンカしないで……」
『チロ、とったー!!』
『チロ、トッテナイ……』
「わかった。わかったから……。アオもチロちゃんと同じ提案、してくれようとしたんだよね。ありがとう」
ケンカしている妖精たちを引き離し、アオにお礼を言うと、アオは『アオ、ほんと、チロとおなじ……』としおらしくなってしまった。もしかしたら、本当に同じ提案をしようとしたのかもしれない。
「うん。アオありがとう」
抱き上げて頭を撫でたら元気になったので良かったけど、悲しませることになるかもしれないから、もう決めつけた態度を取るのは止めよう。反省だ。
『ミーシャ、アオ、しんじる?』
「うん。信じるよ」
『ミーシャ、チロモ』
「うん。チロちゃんも信じてるよ」
二人のキノコ帽子をなでなでしていると、珍しくアオが『チロ、アオわるいこした……、ゴメン』と謝ったのだ。これにはチロちゃんも驚いたようでちょっと動揺していたけど、
『アオ、アヤマッテクレタノ。チロ、ウレシイ』
そう言って、アオのほっぺにチュッとしていた。
『チロ、だいすき!! アオもチュッ』
妖精たちは今日も仲良しだ。
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