継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ぺーちゃん 〜

番外編 〜 教皇の正体1 〜 ノア10歳、アベル5歳

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ノア視点


大変だ。フロちゃんはエビフライに目がないから……っ

「アス殿下、大司教は妖精や精霊のオーラが見えるそうなのです」
「なるほど……。アカ、アオ、私たちから離れ、身を隠してほしい」
『『りょーかい!!!』』

アス殿下は私の言いたいことが分かったのか、アカとアオに指示すると、私を見て頷いた。

「ノア、フローレンスの元へ行くのだろう」
「はい。放ってはおけません」
「うむ。行こう」

お皿に山盛りにされたエビフライを、必死に食べているフローレンスに近づくと、大司教が私たちに気付く。
私の容姿はお父様に似ているし、アス殿下には会ったことがあるようなので、すぐに分かったらしい。
ゆっくり立ち上がると、会釈をし、声を潜めて言ったのだ。

「これは、イーニアス皇太子殿下と、ディバイン公爵家の公子様ではございませんかな」
「お初にお目にかかります。ノア・キンバリー・ディバインと申します」

悪びれもせず、微笑んでいる大司教は、見た目だけでいえばとても優しそうなお爺さんだった。

「うむ。大司教、久しいな。御忍びで来ているのでな。秘密で頼む」
「ほほっ、それはそれは……、楽しそうな御忍びですなぁ。よろしければ、ご一緒にいかがですか?」
「いや、私たちは友人を見かけたので、声をかけさせてもらったのだ」
「ご友人、ですか」
「うむ。そなたの隣にいる……、フローレンス、ここで何をしているのだ」

アス殿下が、未だ必死にエビフライへ食らいつくフロちゃんに、話しかけた。

「むぐ……、アス殿下。ご機嫌麗しく……」

やっと私たちに気付いたフロちゃんは、顔を上げ、立ち上がってカーテシーをする。

「うむ。口の周りを拭いてから挨拶するといい。油でベタベタなのだ」

お世話好きの血が騒いだのか、ハンカチでフロちゃんの口と手を拭ってあげるアス殿下は、皆のお兄様だ。
よくミーシャやアベルのお世話もしてくれている。

「ありがとう、存じます、わ」
「うむ。それで、フローレンスは大司教と知り合いなのだろうか?」
「大司教……?? 知りません、わ」

やっぱり……知らない人と一緒に食事していたんだ……。

「フローレンス、なぜ知らない人と共に食事をしているのだ。危ないだろう」
「店員さんに、相席を頼まれたのです、わ」
「「相席?」」
「私も評判のカフェとやらに来てみたくてね。しかしお店が混雑していて、偶々、相席させていただいたのがこのお嬢さんだったのですよ」
『アス、ノア、その人間の言う事は本当だよ』

ナサニエルが教えてくれる。
本当に、偶然なんだろうか……。

「じーじ、あー!」

突然、大司教の膝の辺りから、ミーシャぐらいの子供の声がして、少し驚いた。

「おー、よしよし。この柔らかいパンが気に入ったんだね」
「ん、おぃち!」

大司教の膝には、ミーシャよりすこしだけ大きな子供が、ちょこんと座っていて、大司教が小さく千切った食パンを、小鳥のように食べていた。

「大司教、その子供は、大司教の孫なのだろうか?」
「そのようなものです。……この子は珍しい能力を持っていましてね……それが原因で親に捨てられてしまい、私がこうして育てております」

珍しい能力?

「じーじ、あー!」
「フェリクス、その前に、皇太子殿下とディバインの公子様に挨拶せねばならん」
「ぅー、……ペーちゃ、にちゃい!」

2歳になったばかりなのかな?

黒髪に黒目の子供は、まん丸な瞳で私たちを見つめている。

「にーちゃ、かご、ぃっぱー!」

カゴ??

「これ、他人を勝手に『鑑定』してはならんと教えたであろう?」
「じーじ、めぇ?」

鑑定って……、

「あの、大司教……鑑定というのは、まさか……」
「はい。フェリクスは人間や植物の情報を読み取れる能力があるのです」
「「情報を読み取る能力!?」」

まさか、そんな……、

「ねーちゃ、しぇーじょ!」

フェリクス君は、褒められたと思ったのか、キャッキャと喜び、フロちゃんを指差して言ったんだ。

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