継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ぺーちゃん 〜

番外編 〜 アベルの正体と教会4 〜 ノア10歳、アベル5歳

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~ イザベルたちが帰って来る少し前 ~


「おにさまぁ……っ、お、おれ、おとぉさま、との、おやくそくっ、やぶ、やぶった……ひっく、から、すてられちゃう……っ」
「アベル、そんなことないよ。お約束を破ったことは確かにいけないことだけど、お父様もお母様も、アベルを教会に連れて行かせないために、今話し合っているんだよ」
『そうだよ、アベル。だいじょうぶ。テオも、ベルも、ぜったいアベルをてばなさないよ』
『アベル、だいじょーぶ!!』
「で、でも……、おどぅざま、おかお、こわ……っ、こわがっだぁ」
「お父様は元々お顔が怖いんだよ」
『そうっ、テオ、もともとかおこわい!!』
『テオはおこってないよ。だからだいじょうぶ。なかないで』
「ぐすん……っ、おで……わるいご……っ」
「アベルは悪い子じゃないよ。猫が弱っていたのを見捨てられなかったんだよね。優しい子だよ」
『アベルはやさしいこだよ!』
『アベル、やさしー!!』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「───ということがあったんです……」

ノアから、わたくしたちが出掛けている間に何があったのか聞いたのだけど、いまいち、アベルが捨てられると思った理由がわからない。

テオ様のお顔が怖いから?

「奥様、発言してもよろしいでしょうか」

アベルを部屋に運んだ後戻ってきたマディソンが、首を傾げていたわたくしに言った。

「ええ。かまいませんわ」
「では……、アベル様は坊っちゃま……いえ、旦那様に、治癒魔法を使用しないようにと注意される際、何故使用してはならないのかもきちんと説明を受けております。ですから、治癒魔法を使った所を見られてしまったという事が、教会に送られるという話を思い起こさせ、捨てられるのだと思い込んでしまわれたのではないかと推測いたします」

そういう事でしたのね……。

「さらに坊っちゃまの常日頃の無愛想なお顔が、アベル様を不安にさせたようです」
「マディソン……」

母親代わりのマディソンからチクリとさされたテオ様は、項垂れて顔を手で覆っていた。

「そうでしたのね。ノアも、ウィルもアオも、マディソンも、アベルを慰めてくれてありがとう」
『アオ、アベルしんぱい!! たすける、とーぜん!!』
『アベルはわたしのたいせつなひとだから』

アオもウィルも慰めるのは当たり前だと胸を張る。ノアは少し照れたように俯き、マディソンはニコリと笑う。

「皆を不安にさせたようだ。すまない」

珍しく謝るテオ様に、皆が目を見開き、顔を見合わせる。

「テオ様は出来る限りの事をしてくださいましたわ。教会側も、自国、他国問わず狙われる聖者を保護しようとするのもわかりますし、もちろんアベルが悪いわけでもありません」
「ベル……」

今回は、タイミングが悪かったのだ。

わたくしは、アベルに弱っている動物を見捨てるような人間に、なってほしくはない。約束を破ったとしても、優しい子に育ったのだと嬉しく思ったのも事実なのだ。

「教会側は、見間違いという事で引いてくれましたが、きっとこれから、アベルとフロちゃんの行動に注視していくでしょう」
「ああ。アベルを邸に閉じ込める事はしたくないが、外出制限しなければならないだろう。ドニーズとナサニエルにも、フローレンスはディバイン公爵邸とシモンズ伯爵邸のみ転移は許すが、暫くはそこ意外に転移しないよう言っておかねばな……」
『テオ、アオきょーかい、てーさついく!!』
『わたしも!』

あら、アオもウィルも随分積極的ですわね。

「少し待て。大司教はお前たちのオーラを見る能力を持つようだ。もし、お前たちが大司教の周りをウロウロしていれば、余計怪しまれる」
『じゃー、どーする!!』
『どうしたらいいの?』

そうなのよね……大司教のあの能力が……

「あら?」
「どうした、ベル」
「そういえば、あの方、卵たちの事は見えていなかったですわ」

だって、あの場にいるのはチロとナサニエルと陛下の小妖精だと言っていましたし。

「……もしかすると、ある程度の力がある妖精でないと見えないのかもしれん」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「大司教、言われた通り、フローレンスという少女の事を調査したのですが、少女が『おもちゃの宝箱』帝都支店に出没したと同時刻に、シモンズ伯爵邸の門の前にいたという話があり、しかもそれが何度もあったようなのです」
「ふむ……フローレンスという少女は、双子なのかね?」
「いえ、そのような事実はございません」
「……そうか。もう下がって良い。ご苦労だったね」
「はっ! 失礼いたします」
「───転移魔法か……フローレンスという少女……直接会いに行かねばならないか」

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