継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 家族旅行1 〜 ノア6歳間近の5歳

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テオ様が前のわたくしの誕生日に約束してくださった、別荘地への家族旅行を、アベルが生まれて半年後にやっと行ける事になった。

今まで悪魔の事や妊娠、出産、子育て、マタニティグッズ、子供用品専門店、などで時間が取れなかったが、今回どうにかテオ様もわたくしも時間を作り、明日の出発のために現在旅行の準備真っ最中なのだ。

まぁ、動き回っているのはメイドや侍女が中心なのだけど。

だからこうして私たちは、いつものお茶の時間にゆっくりと家族の時間を持てるのよね。

「ディバイン公爵家の別荘地は、わたくし初めて参りますから、どんな所かワクワクしますわ」
「将来ノアがディバイン公爵家を継いだら、私たちが隠居する予定の地だ。気に入ってくれるといいのだが」

テオ様、ノアはまだ5歳ですわよ。引退を考えるのはまだ早くてよ。

「おとぅさま、わたし、まだ5さいよ」
「もうすぐ6歳だろう。お前が大きくなるのもあっと言う間だ」
「わたし、ずーっと、おかぁさまといっしょなの」
『アオともいっしょ!!』
「おかぁさまと、アオといっしょなの!」
『ずーっといっしょ!!』

あらあら、いつまでこんな風に言ってくれるのかしらね。

わたくしがアベルを抱っこしているように、ノアはアオを抱っこし、可愛らしい事を言ってくれるので、つい頬が緩んだままノアを見る。

「そうね。ノアが結婚するまでは、お母様はここにいるわ」
「わたし、ずっとけっこん、しない!」

ノアの意外な言葉にギョッとする。

前世ではそれもありだったけれど、この世界で、しかも公爵家の跡取りとして生まれたノアが、独身でいる事は困難かもしれない。

女性嫌いのテオ様だって結婚したくらいだ。

「きっと、ノアにも大切な方ができますわ」
「そうだな。ノアにも私とベルのように、愛し合う相手ができるだろう」

テオ様が、わたくしの肩を抱き寄せる。
ぐっすり眠っていたアベルが、わたくしの腕の中で「ふにゃ……」と小さな声を出した。

「おとぅさま、おかぁさまはわたしと、りょおおもいなのよ!」
「ふっ、ノア、お前はどうやら、夫婦とはどういったものかを知らないらしい」

テオ様ったら、息子をからかうのが楽しいのね。

「おかぁさまは、おとぅさまより、わたしがすきなの!」
「何だと……」

またそうやって大人げなく対抗するんだから。マディソンも呆れた目で見ていますわよ。

「ベルは私を愛しているんだ」

明日からの家族旅行が思いやられますわ……。



こうして、わたくしたちの初めての家族旅行が幕を開けたのだ。

「───ウォルトは先に別荘へ行っていますのね」
「現地の者に管理を任せているとはいえ、こちらには赤ん坊や幼い子供もいる。色々と準備があるからな。不備が無いよう、先にウォルトを行かせた」

そんな話を馬車の中でしながら、窓からの景色を楽しみ、朝から出発した馬車は暗くなってからやっと、別荘へ到着したのだ。

「ノアもアオもぐっすりですわ」

せっかく楽しみにしていた別荘へ到着したというのに、ノアもアオも移動に疲れて眠ってしまっている。

「私が運ぼう」

テオ様がそう言って二人を抱っこし、馬車を降りたのだ。

すっかりお父さんになって……。感慨深いですわ。

別荘はシモンズ伯爵家ほどの大きさで、領地の邸宅と比べ小さめだった。

知らない使用人たちとウォルトに迎えられ、わたくしたちの部屋へと案内される。

「奥様、アベル様はマディソンにお任せください」

そう言ってアベルをわたくし腕から抱き上げ、別室へと連れて行ってしまったのだ。
マディソンは信用しているから大丈夫だろうけど、知らない使用人も多いから、少しだけ不安ですわ。



この不安が的中してしまうことを、この時のわたくしは知る由もなかったのだ。

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