継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
117 / 186
番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 イザベルの里帰り2 〜

しおりを挟む


サリーとカーラは、アベルが闇の女神の力をどれだけ継いでいるのか確かめたいのだと言っていたけれど……、アベラルド様の生まれ変わりだから、闇とは正反対の光属性なのよね。

「イザベルの部屋はそのままにしているから、ノアはとりあえず君の部屋で寝かせておこうね」

お父様は嬉しそうに言って先導してくれる。

屋敷の中はわたくしがいた頃とは違い、目に見えるほど美しく修繕されていた。
そのままにしていると言っていたわたくしの部屋は、綺麗に掃除されているものの、使っていた時代遅れのドレッサーも、クローゼットも、ベッドも、本当にそのままだった。

「結婚式の朝のままですのね……」
「ああ。掃除はしてもらっているけれどね……、君の部屋だから」
「そうですのね……」

サリーに梳かしてもらっていた櫛もそのまま置かれ、あの日のバタバタした早朝を思い出した。

「閣下がもし、君を不幸にするような事があれば、いつでも連れ戻す気でいたんだけどね」

と笑いながら、ノアをわたくしのベッドへと寝かせると、「その必要もないようだ」と、優しい眼差しですやすや眠るノアを見つめ、布団をそっとかけてあげる父の後ろ姿に、涙が込み上げた。

「お父様、ありがとう存じますわ」

そう伝えた時、父はわたくしに後ろ姿を見せていて、何も言わなかったけれど、その無言の時間が何故か心地良い気がした。

その後リビングへと移り、お父様の補佐官と初めて顔合わせをし、昔から働いてくれている執事(今は執事長)に挨拶している間、お父様はアベルをずっと抱っこしていた。

「オリヴァーが生まれた時を思い出すなぁ」と懐かしそうにつぶやきながら目尻を下げる父は、孫バカなおじいちゃんだ。

おじいちゃんというにはまだ若いのだけれどね。

「マディソン、あなたは馬車の移動で疲れているでしょう。今日はもう、アベルのお世話はサリーとカーラに任せてゆっくり休んでちょうだい」と責任感の強いマディソンが渋るなか、「明日からまた、アベルのお世話をお願いしますわ」と半ば無理矢理休ませる。

こうでもしないと、マディソンは休もうとしないのですもの。カミラもなかなか長期で休もうとしないから、今回は里帰りするタイミングで、良い機会だと思い、一週間有給休暇を取らせたのよね。
「そんなにお休みをいただいたら、クビになったんだと家族に誤解されます!」と言っていたけれど、大丈夫だったかしら。

「そうだ、お父様。ノアが起きてきましたら、遊んであげてくださいましね。ノアったら、お父様と遊ぶのを楽しみにしておりましたのよ」
「そうなのかい。もちろんだよ!」

嬉しそうに返事をするお父様も、どうやらノアと遊ぶのを楽しみにしていたようだ。

そして、一時間後、ノアが目を擦りながらサリーに連れられ起きてきた。

「おかぁさま、めっよ。どぉして、すぐ、おこしてくれないの?」

寝起きで、ご機嫌斜めなのか、シモンズ邸に着いてすぐ起こしてもらえなかったことに怒っているようだった。

真剣に怒っている息子には不謹慎かもしれないけれど、ノアの「めっ」は可愛いですわ。

「まぁ、ノア、もしかしてぷんぷんしておりますの?」
「はい。わたし、ぷんぷんしてるのよ」

と言いながら抱きついてくるノアを、膝の上に乗せる。

「あらあら、ごめんなさいね。お母様が悪かったわ」

ノアに謝ると、ノアはハッとしてわたくしの顔を見る。

「……おかぁさま、わるくないの。ぷんぷん、ごめんなさい」

あら、ノアったらもうぷんぷんがなくなりましたのね。

「フフッ、ぷんぷんしているノアも可愛かったですわ」
「ぷんぷん、はずかし……ごめんなさぃ」

ぎゅうっと、わたくしに抱きついてくる息子が可愛すぎますわよ。

「ノア、起きたんだね。おじいちゃんにも抱っこさせてくれないかな?」

と手を広げたお父様に、ノアはぱぁっと表情を明るくし、わたくしの膝から降りるとお父様に抱きついた。

何だか負けた気分だわ。

「おじぃさま、あいたかったの!」
「私もだよ。おおっ、この間よりも大きくなっているね」
「あのね、わたしね、せがのびたのよ!」
「それはすごい! どのくらい伸びたかな?」
「しゅ、すごーい、のびたの!」

実際は、この間より1センチ伸びただけなのだけど、ノアはすごく伸びたのだと自慢している。

「どれ、ああ、本当だ! 重くなってるね!」
「きゃーっ」

ノアを持ち上げ、高い高いをする父と、それにきゃーきゃーと喜んでいるノアを眺めつつ、アベルを抱っこしているサリーにも目をやる。

「サリー、アベルはどうですの?」
「どう、とは?」

首を傾げるサリーに、わたくしも首を傾げる。

「サリーが、アベルの力を確認したいから連れて来いと言いましたわよね?」
「確かにそうお伝えしましたが、見ただけでわかるものではありません」
「そうなんですの!? わたくしてっきり、オーラとか気のようなものでわかるものとばかり思っておりましたわ……」
「属性ならばそんな感じでわかりますが」
「わかるんですの!?」

前世のマンガのような事が、現実に出来る人をこの目で見れるなんて!

「というわけで、暫くアベル様をカーラのもとに預けますのでご了承ください」
「暫くってどれくらいですの?」
「二時間ほどでしょうか。カーラがアベル様の夢に潜って、潜在能力、セレーネ様の力の影響などを調べます」

ゆ、夢に潜るんですの!?

しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

〖完結〗愛人が離婚しろと乗り込んで来たのですが、私達はもう離婚していますよ?

藍川みいな
恋愛
「ライナス様と離婚して、とっととこの邸から出て行ってよっ!」 愛人が乗り込んで来たのは、これで何人目でしょう? 私はもう離婚していますし、この邸はお父様のものですから、決してライナス様のものにはなりません。 離婚の理由は、ライナス様が私を一度も抱くことがなかったからなのですが、不能だと思っていたライナス様は愛人を何人も作っていました。 そして親友だと思っていたマリーまで、ライナス様の愛人でした。 愛人を何人も作っていたくせに、やり直したいとか……頭がおかしいのですか? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全8話で完結になります。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...