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番外編 〜ノア5歳〜 〜
番外編 〜 公園の完成1 〜 ノア5歳
しおりを挟む※ノア君が5歳、イーニアス殿下が6歳、アベル君が8ヶ月頃のお話です。
ついに……、ついに公園が完成しましたのよぉ!!
構想から一年半、騎士団の宿舎はまだ建設中ですけど、レール馬車もぐるりと公園を一周出来るようになっておりますの!
そして今日は、ディバイン公爵領都公園の完成を記念して、皇帝一家をキャンプにご招待したのですわ!!
領地のディバイン公爵邸で、いつものように皇后様の転移でやって来た皇帝一家と合流し、使用人の馬車も含めた三台の馬車で(護衛は馬車の周りを馬で並走)やって来た貴族街側の公園は、巨大な柵に囲まれ、まるでマドリードのレティーロ公園のようで、立派な柵門を通って入るようになっている。
もちろん柵門の両サイドには門番も立っていた。
彼らは公園内に建設中の寄宿舎に住む予定の騎士なのだそうだ。
馬を走らせる事も兼ねて、柵の周りをパトロールしている騎士も何人か見える。
これなら公園内で何か起きた時もすぐ対処出来そうだわ。
柵門を潜り、園内に作られた駐車場に馬車を停め、ついに外へと一歩を、
「ベル、少し待て。使用人がベビーカーを準備している」
「おかぁさま、すこしまってね」
テオ様とノアが立ち上がろうとしたわたくしに待ったをかけた。
『ベル~、アベルトウィル、ネテル~』
チロが、わたくしの腕の中にいるアベルの体にちょこんと座って、ニコニコ笑った。その隣には、小さなぬいぐるみ程の大きさの女の子(※性別はない)がアベルに抱きつくように眠っていた。
「フフッ、テオ様もノアもありがとう存じますわ。チロも、アベルとウィルを寝かしつけてくれてありがとう」
アベルが生まれて8ヶ月。初めての外出に、テオ様は少し心配そうに、ノアは嬉しそうに、アベルの乳母が、用意してくれているベビーカーを見ていた。
もちろんこのベビーカーは、ベル商会の商品で、前世のものと遜色ない出来なのだ。
「ベル、アベルを私に預けてくれ」
先に降りたテオ様がそう言って、馬車を降りる前にわたくしからアベルを抱き上げそっとベビーカーに降ろすと、手を差し出し、エスコートしてくれる。
初めて会った頃を思い出すと、この変わりように驚いてしまいますわね。
「アベルのベビーカーは、わたしがおすのよ」
「ノ、ノア様!?」
ノアのその行動に、アベルの乳母が驚いて目を白黒させる。
公爵家の跡取りにそんな事はさせられないと思うわよね。でも、お庭の散歩でベビーカーを押していたから、ノアは普通にやっちゃうのよ……。
「あら、ノアちゃんったら、ベビーカー押してあげるの? 偉いわねぇ」
と言いながら馬車から降りてきた皇后様の横にもベビーカーが一台鎮座していた。
「まーまっ」
ベビーカーから皇后様に手を伸ばしているのは、あの第三皇子だ。
「あらあら、ママはここよ~」
「まーま!」
皇后様にあやされて、きゃっきゃと笑う第三皇子の姿に、皇后様と第三皇子との絆が見えた気がした。
「ははうえ、わたしもベビーカーをおしたいです!」
6歳になったイーニアス殿下はハツラツとしており、しっかりしたお兄ちゃんになっている。
将来イケメン間違いなしのお顔に優しい性格で、すでに小さなレディたちから大人気らしい。
「これは、ノアちゃんに触発されたわね」
「こうきゅうでは、ベビーカーもおしたことがあるので、だいじょうぶです!」
「イーニアス、朕も一緒にベビーカー押したいのだ」
「では、ちちうえはこっち。わたしはこっちをおしますね」
「うむ! 親子で共同作業なのだ!」
イーニアス殿下と皇帝陛下のやり取りは、なぜかイーニアス殿下の方がお兄様に見えてきますわね。
「……本当でしたら、陛下のお子様を皆様招待したかったのですが、そうなると大規模な移動になってしまって目立ちますものね……。警護の問題も出てまいりますし」
「気にしないで。他の子供たちは、また違う機会に少人数ずつ連れてくるから!」
皇后様、何度も来る気満々ですのね。
「ノア、アベルはねむっているのか?」
「はい。リュークでんかは、おめめぱっちりね!」
ノアが一生懸命背伸びしてベビーカーを押していると、イーニアス殿下が皇帝陛下とベビーカーを押しながらノアのそばに行く。
「にょあ! にー、にょあ!」
まぁ、第三皇子殿下は、ノアの名前ももう呼べますのね!
ノアも嬉しそうにニコニコしていて、なんて可愛いのかしら。
「うむ。ノアなのだ」
「! だぁ~ぅ、あ~」
「あ、アベルがおきた! ちちうえ、アベルのおめめが、ぱっちりしたのです!」
「うむ。可愛らしいのだ」
アベルはイーニアス殿下が大好きなのよね。殿下が近付いたら眠っていても、ぱっと目を開けて喜ぶのよ。
「ベル、まずはレール馬車に陛下を案内しよう」
テオ様が心なしかウキウキしている様子で、ある方向を見ている。
テオ様の視線の先には、まさに前世の鉄道の停車場である、あの“駅”が、美しい花と、青々とした木々の中、その存在感を放っていたのだ。
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