継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 妖精大戦争2 〜 ノアもうすぐ5歳

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『お前らを倒して、アスはオレと契約してもらう!!』
『アス、わたさない! ボコボコ、してやるー!』
『かえりうちー!!』

これは、一体なんですの……。

「奥様、何かございましたか??」

妖精が見えないミランダは、私の様子に訝しみ、心配そうに問いかけてくる。

「ミランダ、今すぐテオ様を連れてきてちょうだい。それと……遊びに来られているイーニアス殿下とノアは避難……」

避難させようと思ったが、テオ様のそばの方が安心かもしれないと考え直す。

「いえ、子供たちもテオ様と一緒にお願いしますわ!」
「承知いたしました。すぐに呼んで参ります」

ミランダは一礼すると足音も立てず、すごいスピードでいなくなったのだ。

相変わらず忍者のようね!

「アベルが心配だけど、今はマディソンが付いていますものね……」

生まれたばかりのアベルは、マディソンがお世話をしてくれており、わたくしは気分転換に散歩をすすめられて、庭に出ようと向かっている途中、この廊下で訳のわからない状況に巻き込まれたのだ。

『ねぇねぇ、あなた、私たちが見えるの?』

いつの間にかわたくしの後ろに浮かんでいた少女……風の妖精王に声をかけられ、驚いて肩を揺らしてしまう。

『ベルに話しかけるな! ベルはボクの縄張りの人間なんだから!!』
『話しかけるくらいいいでしょ! この人間からは、聖女に近い匂いがするもの。いい香りね!』

か、香り??

にこぉっと笑う風の妖精王に、ウチの正妖精がプンスカ怒ってつっかかっている。

『ベル、チロノ~! メッ!』

わたくしの髪の毛の中に今の今まで隠れていたチロが、震えながらも肩の上に現れて牽制しだすではないか。

チロまでどうしたのかしら!?

『赤ちゃん妖精じゃない。あなた、私たち妖精王の力に触れたら消えちゃうわ。いくら契約者を守る為でも、出てきたらダメよ』
『ベル、チロノ~……』
『はいはい。分かったから。あなたの契約者には手を出さないわ。私、赤ちゃんには弱いの……って、卵たちまで集まってきてるじゃない!? あなたたちも、隠れてないと危険よ!』

風の妖精王は、怒りでピカピカ光っている正妖精と、焔の妖精王の炎から卵たちとチロを守るように風の膜をわたくしたちの周りに張ってくれたのだ。

「あの……ありがとう存じますわ」
『いいのよ。私はアイツらほど縄張り意識も契約者に対しての執着も強くないもの。あ、もちろんノアは魅力的だから、契約者になってほしいけど!』
『ベルにもチロにも近づくなって言ってるでしょ!』

少女はわたくしにウィンクすると、ぎゃーぎゃーと騒いでいる正妖精にべーと舌を出す。

可愛らしい仕草だけど、正妖精を逆なでしないでほしいですわ。



「───ベル!!」

と、そこに、テオ様の声が届いて振り向けば、目に入ってきたのは……、

「おかぁさまっ」
「イザベルふじん!」

テオ様がノアとイーニアス殿下を両腕にかかえ、駆け寄ってくるではないか!

写真を撮りたい! と思ってしまったのは秘密にしよう。

「テオ様!」
『テオ! テオが来たからね!! もうお前たちに明日はないぞ!!』
『まおー、しょうかんした! あ、アスー!』
『まおー、こわいぞー!! あ、ノアー!!』

今まで猫のようにフーフー言っていた正妖精とアカ、アオたちは、テオ様が来た途端、態度が大きくなる。
野良猫と家猫の喧嘩中に飼い主が現れて、家猫の態度が大きくなったような既視感がある。

アカとアオは、それぞれの飼い主……ゴホンッ、契約者を見つけた途端、腕の中へと飛び込んだ。

「アオ、だいじょおぶよ。わたし、きたの」
『ノア、だいすきー!!』
「アカ、もうだいじょうぶなのだぞ。わたしがきたから、あんしんだ!」
『うえーん、アスー!』

可愛いけれど、さっきまでボコボコにしてやるとか、返り討ちとか言ってましたわよね……。

「ベルっ、怪我はないか!? 何があった……?」
「怪我などございませんのよ。わたくしも何がなんだか……」

テオ様がわたくしを抱きしめようと、二人を降ろし、手を伸ばした瞬間、風の膜が邪魔をした。

「っなんだ、この風でできた壁は……!?」

そういえばさっき、風の妖精王に膜を張ってもらいましたのよね。
危険なものではないから、触れても危なくはないけど、感触が、扇風機の前に手をかざしたあの感じですわ。

「なぜ、ベルは閉じ込められている……っ」

え?

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