78 / 189
番外編 〜 ノア3〜4歳 〜
番外編 〜 狙われたイザベル1 〜 ノア4歳、イーニアス5歳
しおりを挟む??視点
「───新素材に新型馬車、そしてレール馬車に娯楽施設、その他にも画期的な開発をし、販売しているディバイン公爵家とシモンズ伯爵家……、その全てに、一人の人物が関わっている」
「なんと!? して、その人物とは……?」
「イザベル・ドーラ・ディバイン。ディバイン公爵の妻であり、シモンズ伯爵家の長女。そして、あの『ベル商会』の会長だ」
「では、そのイザベル公爵夫人を……?」
「手に入れなければ、我らに未来はない───」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
イザベル視点
最近、外出すると視線を感じるようになった。
ディバイン公爵家の紋章が入っていない馬車を使用しているというのにだ。
それもこれも、親方たちがおかしな像を立てたからに他ならない。
あれが庶民街の広場に建てられてから、街に行けば皆が見てくるようになったのですわ……!
なんですのあの女神像!?
女神様の像を建てたいという事だから許可したとウォルトから聞きましたけど、わたくしてっきり、教会にあるような、風の女神様の像だと思っていましたのよ。ディバイン公爵領だから、風と水の神の像を建てるのかしら。なんて思っていたら……、
なぜわたくしをモデルにしましたの!?
「ハァ……、何だか慣れませんわ」
外出の度に視線にさらされると、胃がチクチクしてきますの。悪女顔の女神像とか笑えませんもの。
「おかぁさま、おなか、いたた? だいじょぶ?」
今日は外出せず、大人しく邸にいたのだけど、思い出して胃を押さえいたら、愛息子に心配されてしまった。
ノアは、黒蝶花の解毒の際に、わたくしがお腹を壊した事が記憶に刻まれているのか、お腹を押さえると、腹痛を起こしたと思うようになってしまったのよ。
「ノア、大丈夫よ。お腹は痛くありませんわ」
「おなか、おてて、あててりゅのよ?」
心配そうに見上げてくる息子を抱き上げる。
あら、昨日よりも少し重くなったかしら? 背も高くなった? なんて、そんなわけはないのだけど、抱っこする度そう思ってしまうのよね。
「おかぁさま、おげんき?」
「ええ、元気いっぱいですわ!」
「わたち、おかぁさまとおにわ、いきたいの」
「じゃあ、お庭に行きましょう。デュークとナラも触らせてもらいましょうか」
「はい! でゅーくと、なりゃ、さわりゅの!」
そんな他愛のない話をしながら、二人で庭に出る。
『ベル! ノアー! 聞いてよー!! ボク最近アカとアオに除け者にされてるんだ! 今日だって、連れて行ってくれなかったし、酷いよねっ、酷すぎるよね!?』
外に出た途端、正妖精が泣きながら突撃してきたのだ。
そういえば、今日はアカとアオの姿を見てないと思っていたけど、どこかに出掛けているのかしら?
「のけもの、めっね!」
『そうなんだよノア! アカとアオをめっしてよー!!』
「はい! めっ、ちてあげりゅの!」
あらあら、ノアがアカとアオに「めっ」する気満々ね。
「それで、アカとアオはどこに行ったのかしら?」
『それも教えてくれないから困ってるのさ! ボク、妖精王なのに!』
ぷんぷんしながら、ぐるぐる飛び回る正妖精に呆れながら、デュークとナラの所へ向かう。正妖精も付いてくるので、今日はわたくしたちと一緒に過ごすらしい。
「でゅーく、なりゃー!」
「ワンッ」
「ウォンッ」
ノアが名前を呼ぶとすぐにやってくるデュークとナラは、千切れそうなほど尻尾を振って、ノアに飛びつい……あら、急ブレーキをかけましたわ。もしかして、ノアを驚かさないように気を使ったのかしら。
『あー、怖い顔の犬だ!』
「ワンッ」
「ウォンッ」
妖精が見えるのか、正妖精の言葉に反応して吠えると、正妖精はわたくしの後ろにサッと隠れる。
妖精って犬が苦手なの?
『犬って、突然飛びついてくるから、ちょっと苦手なのさ……』
「あら、デュークとナラはとても賢いのよ。ノアにも飛びつかなかったでしょう」
『そうだけど……顔が怖くない?』
それはわたくしも思っていたけれど。
「フフッ、くすぐったいのよ!」
「ワンッ」
「ウォンッ」
まぁ、ワンちゃんと戯れるわたくしの息子、可愛いわぁ。
『やっぱり怖い顔だね』
「ノアと戯れる二匹は可愛らしいですわ。あなたも触ってみらたどうかしら?」
『ぅう……、ボクは遠慮しておくよ』
正妖精、やっぱり犬が苦手なのかもしれませんわ。
アカとアオは平気のようですけれど。
「おかぁさま! でゅーくと、なりゃ、おさんぽちたいの!」
「ノアがお願いすれば、デュークとナラも付いてきますわ」
「はい! でゅーく、なりゃ、わたちと、おさんぽちよ?」
「ワンッ」
「ウォンッ」
今日も我が家は、平和ですわ。
そう、思っていたのだけれど───
667
お気に入りに追加
6,494
あなたにおすすめの小説
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。
百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」
妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。
でも、父はそれでいいと思っていた。
母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。
同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。
この日までは。
「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」
婚約者ジェフリーに棄てられた。
父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。
「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」
「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」
「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」
2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。
王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。
「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」
運命の恋だった。
=================================
(他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる