継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 ノアの赤ちゃん返りリターン2 〜 ノア4歳 イザベル妊娠発覚直後

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「奥様っ! ミランダっ、ムーア先生を呼び戻して来てください!!」
「はい!」

目の前が真っ暗になり、遠くにマディソンとミランダの声が聞こえていたが、わたくしはなにも伝える事が出来ず、そのまま気絶してしまったのだ。


「───ベルッ、イザベル!!」

あら……? わたくし、どうしたのかしら……。

テオ様の心配するような、切羽詰まったような声に意識が浮上する。

「ベル……ッ、気付いたか!?」

どうして、テオ様は泣きそうなお顔をしておりますの……?

「テオさま……、わたくし……」
「君は診察を終えた後に倒れたんだ……っ」
「たおれ……っ、わたくしの赤ちゃん!! 赤ちゃんは無事ですの!?」

慌てて、お腹に手をやり膨らみを確かめる。
ちゃんとお腹に膨らみがあり、ホッと息を吐いた。

「安心しろ。赤ん坊は無事だ。それと、君は貧血で倒れたんだ」
「貧血……」

食事をあまりとれていないので、貧血気味になってしまったのだろうか。

「奥様、こちらの聖水をお飲みください」
「マディソン……、ありがとう」

すぐにミランダが背中にクッションをさしこんでくれて、身体を少し起こす事が出来た。マディソンから差し出された小瓶を受け取る。

「聖水は、貧血に効果があるわけではございません。飲まないよりは飲んだ方がマシという程度ですので、暫くは安静になさってください」

先程お帰りになったはずのムーア先生が横にいて驚いた。

「ムーア先生、申し訳ありませわ。呼び戻してしまいましたのね」
「奥様、申し訳なく思う必要はございません。今はどうか、お休みください」
「……はい。テオ様……」
「どうした? ベル」

テオ様はわたくしの手をぎゅっと握って、優しく話しかけてくださるの。

「ノアはどこにいますの? わたくし、ノアと遊ぶ約束をしておりますのよ」
「ノアならば、侍女と自室にいる。君が倒れたと聞き、この部屋に来たがっていたが、治療でバタバタしていたからな」
「そうでしたの……。寂しがってはいないかしら」
「……連れて来よう」

そう言ってテオ様は部屋から出て行き、暫くしてノアを抱っこし戻って来た。

「おかぁさま!」

テオ様に抱き上げられたまま、手を伸ばしてくる息子に、わたくしも手を伸ばす。

「ノア、遊んであげられなくてごめんなさい」
「おかぁさま、わたち、おかぁさまといっしょ、いる!」
「ノア、ベルは安静にしなくてはならない。お前がいてはベルが休めないだろう」
「……やぁ! しょば、いる!」
「ノア」
「はなちて! おかぁさまっ、わたち、ぎゅっちて!」

あらあら、ノアが駄々こねるなんて珍しいですわ。

「テオ様、わたくしは大丈夫ですわ。ノア、こちらにいらっしゃい」
「ベル……」

渋々ノアをベッドに乗せるテオ様は、心配してくれているのだろう。眉間にシワが寄って、不機嫌そうな顔になっている。

「おかぁさま! ちなないで!! わたち、ひとり、ちないで!!」

ベッドに降ろされた途端、抱きつき泣き出すノアを抱きしめたのだが、わたくしが死ぬと思われている事に呆然としてしまう。

「ちょっとノア? わたくし死にませんわよ?? 可愛いあなたを独りぼっちになんて、するわけありませんわ」
「やっ、ちんじない! おかぁさま、もおだいじょぶ、いったの! でも、たおれたのよ!!」

ああ、陛下からあのお弁当を貰って来てくれた時、わたくしこの子に、もう大丈夫よって、元気になったわって言いましたものね。
それなのに倒れてしまったから……。

「ノア……」
「おかぁさま、はなさないの! わたちの!! しにがみさん、わたさないのよ!」

わたくし、ノアの中では瀕死なのかしら……。死神が迎えに来ているように思われていますのね。

「ノアが守ってくれるから、死神さんもどこかにいってしまいましたわ」
「ほんとぉ?」
「本当よ。ノアとお父様が追い払ってくれましたもの」

そう言えば、ノアはテオ様をチラッと見る。
テオ様は未だに眉間にシワを寄せ、「ベルを死神などに渡すわけがない」とブスッとしている。

その様子を見ていたムーア先生はホホッと笑って、

「公爵閣下と公子様が見事に追っ払ってしまいましたね。後は、お母様が、きちんとお食事をされれば大丈夫ですよ」

お医者様の言葉には説得力があったのか、ノアは「はい!」と頷いて涙を拭い、笑顔を浮かべたのだ。

わたくしは、いつものノアに戻ったのだわ。と思っていたのだけれど、翌日、朝起きてからもずっとわたくしのそばから離れない事に、あら? と首を傾げた。

「ノア、今日のお勉強はどうしたの?」

朝食後、いつもならお勉強に行くはずのノアは、わたくしが横になっているそばでお絵かきをしているではないか。

「おべんきょ、ないのよ」
「え?」

カミラを見ると、明らかに困惑している。

「ノア、」
「わたち、はなれりゅと、ちにがみくりゅの!」

エェッ!?

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