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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜
番外編 〜 ノアの赤ちゃん返り 〜 ノア4歳
しおりを挟む「ノア、お前の弟か妹を作ろうと思っている」
「おとおと、いもおと……ちゅくる?」
テオ様ァ!? 何言っちゃってるんですの!?
確かにわたくし、ノアに弟妹を作ってあげたいと言いましたけれど! 率直に伝えすぎですわ! 不器用にも程がありますわよ!?
「そうだ。私とベルが夜に二人きりで過ごさねば、弟や妹はやって来ない」
テオ様ァ!
テオ様の言葉に恥ずかしくなって、両手で顔を覆う。
「おかぁさま、よる、わたちとねんね、なのよ?」
「それは昨日までの話だ。ベルが、お前に弟か妹を作ってやりたいと望んだからな」
「おかぁさま、わたちと、ねんねない?」
ノア……!!
愛息子が、瞳をうるうるさせてこちらを見上げているではないか!
「そうよね。まだ一人でねんねは寂しいものね、」
「ノア、それでは弟も妹も生まれないんだぞ。ベルに似た赤ん坊が欲しくないのか」
「おかぁさま……あかんぼ……?」
「ノア、少し我慢すれば、お前は兄になるんだ」
「わたち、おにいちゃ……?」
「ああ。修行と同じだ。頑張れるな?」
「わたち、ひとり、ねんねできる!」
テオ様の無理矢理の説得の後、ノアがそう宣言した一週間後に、大問題が発生するのだが、この時のわたくしは、ウチの子、なんて可愛くてイイコなの! としか考えていなかったのだ。
「───夜泣き? ノアが?」
「はい。ノア様がお一人でお眠りになる時は、お隣のお部屋に私やメイドが待機するのですが、一昨日までは特に何もなかったんですよ。でも、昨夜になって突然、夜中に目を覚まして、泣きじゃくって……」
心配そうにカミラが報告してくれたのだけど……、もしかして赤ちゃん返りってやつかしら?
「報告してくれてありがとう。ノアと話してみますわ」
「ノア様をお願いします。奥様!」
カミラと話した後、すぐにノアの部屋へとやって来たのはいいけれど、今はお勉強中かしらね……。
扉の前で暫く、邪魔したらいけないわよね、とウロウロしていると、中から「やっ! ちない!」とノアが声を荒らげたのが聞こえ、慌てて扉を開けたのだ。
「ノア!?」
目に飛び込んできたのは、困り果てたマナー講師と、いやいやしているノアの姿だった。
「これは……、一体何がありましたの?」
「奥様……、私も何がなんだか……。いつも一生懸命お勉強をされる公子様が、本日は何故か嫌がっていらっしゃるのです……」
「やっ! ノア、おべんきょ、ちないの!」
これは……大変な事になっているんじゃないの?
「分かりました。今日はわたくしが息子と話してみますので、お帰りになっていただいて結構です。わざわざお越しいただいたのに、申し訳ありませんわ」
マナー講師には帰ってもらい、不機嫌なノアのそばへと近づくと、大きな瞳でわたくしを見上げ、「おかぁさま、だっこちて」と手を伸ばしてくるではないか。
やっぱり、これはどう考えても、赤ちゃん返りですわ。
「ノア、今日はお勉強はお休みして、お母様と一緒に過ごしましょう」
ぎゅっと抱き上げ、背中をポンポンして落ち着かせる。
「ノア、おべんきょ、できないの……」
一人称が、「わたち」から「ノア」になってしまっているし、甘えているのね。可愛いけれど、これはわたくしのせいよね……。
「どうしてお勉強したくないの?」
「……できないのっ」
「そうなの。じゃあ、お母様とおもちゃで遊びましょう!」
そう言うと、目を輝かせて頷くので、ノアが疲れて眠るまでずっと、一緒に遊んでいたのだ。
「───テオ様、というわけで、今夜は三人で寝ましょう」
「……その赤ちゃん返りというのは、それで治まるものなのか?」
「どうでしょうか……、とにかく、赤ちゃん返りがあった時には、話をよく聞いてあげて、スキンシップを多くとる事が必要なんですの」
「分かった。君がそう言うなら……、ノアを優先しよう」
「ありがとう存じますわ!」
テオ様が理解を示してくれて良かったわ。
「さすがわたくしの旦那様ですわ。わたくし、テオ様が旦那様で幸せです」
「君はそうやって、すぐに私を煽るのだな……」
何故か深い溜め息を吐かれたのだけど、悪い事言ったかしら??
「そこが君の魅力の一つではあるんだが……」
まるで物語の王子様のように髪を一房手に取ると、キスをしたテオ様は、「まぁ、子づくりは夜でなくとも出来る」と耳元で囁いてきたので、死ぬほど恥ずかしくなった。
「て、テオ様……っ」
「慌てるベルも可愛いな」
もう……っ、何でこんなに色気があるんですの!?
結局、ノアの赤ちゃん返りはここから一週間程で落ち着いてくるのだが、妊娠後、また赤ちゃん返りする事になろうとは、思いもしなかったのだった。
子育てって、楽しくて幸せだけど、大変だわ。
「おかぁさま、いっしょ、おねんね、だいしゅきよ!」
やっぱり幸せだわ。
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