継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
上 下
23 / 187
その他

番外編 〜 オリヴァーの婚約者選び2 〜

しおりを挟む


後日皇后様から送られてきた手紙には、招待候補者たちの名前、年齢、特徴や性格、家柄などが書かれたリストが添付されており、皇后様の情報網のすごさに改めて驚かされた。

「これは……素晴らしいですね。家門の情報は調査済みですが、令嬢個人の事となると私共でも骨が折れますので、助かります」

とはウォルトの言葉だ。

招待候補の年齢は下は3歳から上は16歳までと幅広く、リストの中にはあのブルネッラちゃんの名前も載っていた。
ブルネッラちゃんは、前前世ではノアを好きになったのだけど、今世では今のところ仲の良いお友達なのよね。

「というか……、幼児を候補にするのはどうなのかしら……」
「奥様、今は例え幼児といえども、オリヴァー様がシモンズ伯爵家を継ぐ頃には立派な淑女でございますよ。それに、旦那様と奥様の年の差はもっと大きいです」

うっ、それを言われると何も言えなくなるのだけど……。

「まぁいいですわ。ウォルト、この中で問題のある方はいらっしゃらないとは思うのだけど、確認をお願いね。精査した後、お父様にリストを送ってちょうだい」
「かしこまりました」

◇◇◇

こうして、オリヴァーのお見合いパーティー当日を迎えたのだ。

ディバイン公爵家のお邸に比べると小さめだが、それでも貧乏貴族だったシモンズ伯爵家からすると、十分大きなこのタウンハウスは、新素材の事業が軌道に乗る前に、テオ様が用意してくださったものなのよね。

そこに何故、わたくしとテオ様、ノアも居るのかというと、皇女様が来ると知った父が怖気づき、わたくしたちにオリヴァーのフォローを頼んだからに他ならないのよ。

「もう、お父様ったら。テオ様、お手を煩わせてしまって申し訳ありませんわ」
「ベル、私は義父上に頼られて嬉しいと思っている。愛する君の父上なのだから」
「テオ様……」

わたくしの旦那様、何て優しいのかしら。

「ベル……いつも美しいが、着飾った君はさらに美しくて、周りが霞んでしまうな」
「もうっ、そんな事言われると恥ずかしいですわ」

テオ様ったら、自分の方が美しいのにいつもわたくしを褒めてくださるのよね。

「おかぁさま、おじさま、おたんじょおび?」

ノアが可愛いお顔をこちらに向け、首を傾げる姿が萌え……ゲフンッ。

「ふふっ、お誕生日ではありませんのよ。そういえば、ノアはお誕生日パーティーしか参加した事ありませんでしたわね」
「おたんじょおび、ちがう?」
「そうなの。今日は……お友だちを作りましょうっていうパーティーなのよ」
「おともだち!」

お友達=遊ぶという構図のノアは、すっかりおもちゃや遊具で遊べると思っているようだ。

「あっ、ブルちゃん!」

瞳を輝かせたノアが、わたくしの手を引いて移動を始める。

あらあら、お友達を見つけてもわたくしを一緒に連れて行こうとする所は、まだまだ甘えん坊さんね。

「ぁ……ノアちゃん」
「ブルちゃん!」

ノアが嬉しそうに話しかけたのは、ブルちゃんこと、かませ犬令嬢のブルネッラちゃんだった。

「ベルしゃ、さま……おひさしぶりでしゅ」

もうすぐ4歳のブルちゃんは、ご挨拶もきちんと出来るようになっている。

やっぱり子供の成長って早いのね。

「ブルちゃん、お久しぶりですわね。今日はブルちゃんとテディはお揃いのドレスですのね! とっても素敵ですわ」

薄紫と水色のグラデーションの、プリンセスラインの可愛らしいドレスを抱きしめているテディにも着せていて、そのお揃いコーデがとても可愛らしい。

「はぃ……テディ、いつも……おそろい、でしゅ」

く……っ、かわい……っっ

「ブルちゃん、とってもかわいいのよ!」
「ありがと……ノアちゃんも、かわいい……」

ノアったら、さらりと女の子を褒める事が出来るなんて……将来が恐ろしいわね。

「ベルさまも……かわいい」
「まぁ! ありがとう存じますわ」

ブルちゃんが恥ずかしがりながら言ってくれた言葉に、ノアが胸を張っているのがなんとも……っ。

この子たち、わたくしを悶え殺す気かしら。

ノアとブルちゃんが仲良くお話ししている中、お父様とオリヴァーに挨拶を済ませた皇后様が、10歳前後の女の子を連れてこちらへとやって来る。

「イザベル様、あなたたちも来ていたのね」
「皇后様、ご機嫌麗しく……」

皇后様が連れているという事は……

「紹介するわね。この子は第一皇女のエリザベスよ」

やっぱり!

赤茶の細かいウェーブがかった髪で、皇帝陛下に似たお顔をされている可愛らしい皇女様は、わたくしの事を興味津々に見ている。

「第一皇女殿下、お初にお目にかかります。イザベル・ドーラ・ディバインと申します」
「っ……わた、私、エリザベスと申します!! あの、ずっとディバイン公爵夫人のファンだったんです!!」

はい?

しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

番を辞めますさようなら

京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら… 愛されなかった番 すれ違いエンド ざまぁ ゆるゆる設定

処理中です...