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第二部 第4章
523.侵略?
しおりを挟むそれって、グランニッシュ帝国が、ロギオンを侵略するという事ですの……?
「ベル、勘違いをするな。グランニッシュ帝国は、侵略ではなく、君のいう革命後に、いい関係を続ける為の介入だ」
顔に出ていたのか、テオ様がすかさず説明をしてくれる。
「イザベル様の心配も当然よね。政治に介入なんて言われちゃ、侵略と勘違いもしてしまうわ」
皇后様が頷きながら、そばにやって来た。
「皇后様……」
「安心してちょうだい。アタシたちグランニッシュは、侵略ではなく、共に歩む国を得る為に、彼女たちに協力するのよ」
「そうなのか!? 朕は初めて聞いたのだ!」
「アンタには今初めて言ったわね」
「レーテ!?」
この緊張感の中で、漫才を始めるなんて、さすがこの国のトップですわ。
「その、どういった計画をされているのか、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「その前に、穴だらけの部屋から移動しよう……」
天井も床も、穴が空いてしまった部屋の惨状に溜め息を吐き、眉間を揉むテオ様の胃は大丈夫なのだろうか。
将来ドニーズさんのように胃薬を飲むようにならないよう、妻であるわたくしが、しっかり支えてあげなくてはなりませんわね。
「君も、無理はするべきではない。ストレスがかかぬよう、迅速に安全な場所に移動させるつもりが、まさか子供たちも巻き込んで戦っているなど、誰が想像できる……」
あら? テオ様の胃に負担をかけているのって、もしかしてわたくし?
「ディバイン公爵、申し訳ない。私の警戒心を無くす魔法で、奥方にストレスをかけぬようしたつもりだったのだが、監視者がいる手前、子供らに誤解させてしまい……」
「エリスは悪くない! 悪いのは監視のコイツ!」
「むーっ、んー!」
エリス王女が無表情に申し訳無さそうな声を出し、うっかり娘と呼ばれていた天井裏に潜んでいた少女が、猿轡を噛まされた男の頭をバシバシ叩く。
「坊ちゃ……旦那様、子供たちの教育によろしくない者が視界に入って参りますので、お先に移動させていただいてもよろしいでしょうか」
マディソンの視線の先には、監視者の姿がある。
確かに猿轡を噛まされた男性は、子供たちの教育によろしくないですわ。
「ああ、そうしてくれ。ウォルト、その男を逃げられぬよう閉じ込めておけ」
「かしこまりました」
こうして、部屋を移動したわたくしたちは、テオ様と皇后様から、ロギオン国の未来を大きく変える、とんでもない計画を聞いたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~ おまけ ~
「こっちの大きな男は、地中を掘る魔法を使えるんだけど、あまり深く掘り進めると息が出来なくなるんだよ」
「うす……」
「ちゅち、ほる、しゅごいのよ!」
「そのまほうならば、かだんのつちも、あっというまに、なら……なら、す、せる!」
子供たちに、自分たちの特異魔法を教えているのは、天井裏のうっかり娘で、その隣で恥ずかしそうに頭をかく大男は、庭や床に大穴を空けた張本人だ。
「で、あたしは見た者を拘束出来るんだけど、足だけしか固定できないの。しかも、ターゲットを見てから目をそらしたり、瞬きしたりすると、十秒で解けるわけ。まぁ十秒以内にもう一度視界に入れさえすれば、また十秒延長できるんだけどね」
ずっと目が離せないから、大変なんだよね! などと、うっかり娘は明るく笑う。このチームのムードメーカーのようだ。
「おおっ、オーガごっこではさいきょうの、まほうだ!」
「オーガ、じぇったい、かてないの!」
ノアもイーニアス殿下も、能力を聞いて大絶賛している。
「え、オーガごっこ? 何、それ」
「しらぬのか? とてもおもしろい、あそびだ」
「わたち、オーガごっこ、だいしゅき!」
「ふりょ、おーぎゃ! がぉ~」
「ぺぇちゃ、みょ!」
あらあら、今度はオーガごっこを始めてしまいましたわ。
「何この遊び! 面白いんだけどー!」
うっかり娘ちゃんは、オーガごっこをとっても気に入ってくれたみたいですわ。
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