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第二部 第4章
502.マディの作戦 〜 フェリクス(ぺーちゃん)視点 〜
しおりを挟むフェリクス視点
「ノア様、奥様が危険だというのは、間違いないのでしょうか? おそばにいる妖精様に聞いていただけませんか?」
「まじしょん、アオ、まちがいにゃ、ないって。あのね、おーじょさま、けーかい? ちないまほー、ちゅかえりゅって、いってりゅ」
マディが今にも突撃しそうなノアとフローレンスを捕まえ、本当かどうか確認している。とても真剣な顔で、いつも優しいマディが少し怖いくらい、怒っているように見えた。
「そうでございますか。王女とは名ばかりの、侵入者だったと……しかも、警戒心を無くす特異魔法とは、厄介ですね」
「し、侵入者!? 侍女長っ、奥様が危険なのでは!?」
「カミラ、落ち着きなさい。私たちが取り乱してはいけません。緊急事態だからこそ、冷静に何が出来るのかを考えるのです」
「は、はい!」
ノアの侍女を諭し、「警戒心……」と呟くマディを、私たち三人は見上げていた。
「ノア様、奥様には妖精様が付いておりますか?」
「チロ、いっちょよ」
「では、チロ様から今の状況をうかがうことは可能でしょうか?」
「アオ、だいじょぶって」
マディ、すごい……。冷静に、状況を把握しようとしている。
「ぺーちゃん様、フローレンス様、大丈夫ですよ。ここには護衛も侍女長もいますから、安全ですからね。怖くありません」
ノアの侍女のカミラは、自分が怖くて青い顔をしているのに、私たちを安心させようと必死で笑顔を作って、盾になるように囲ってくれているんだ。
「にゃ!」
私たちこそが、カミラを安心させてあげなくては、と思って元気に返事をした。
「らい、じょぶ! ふりょ、ピカッしゅりゅ」
フローレンスも頼もしい。
「───王女が豹変……」
「チロ、こわいって、ないてりゅ……っ、わたち、おかぁさま、チロ、たしゅけ、いく!!」
「ノア様、何の対策も無しに助けに行ったとしても、警戒心を無くされ、敵の思うつぼでございます」
「おもう、ちゅぼ?」
「ノア様も捕まってしまう、という事です」
「わたち、ちゅかまりゅ、どぅちよ……?」
ノアがマディに止められて、涙目になっている。だけど、王女の特異魔法は厄介だ。警戒心を無くされるという事は、敵と認識出来なくなる。そうなれば、エンプティのボスの前で無力になってしまうだろう。
「ノア様、ご安心くださいませ。このマディソンがおります」
「まじしょん……」
「よろしいですか、ノア様、ぺーちゃん様、フローレンス様、この場にいる者たちは今、王女に警戒心を持っております」
「はい!」
「そして、この場にいる者の共通点は、王女と面会した事がない、というものでございます」
「おーじょさま、おかおちらない」
「はい。そこから推測できるのは、特異魔法は範囲指定をするものではなく、対面しなければかけられないもの、という事になります」
「しょうね。まほー、わたち、かけりゃれてないの」
ノア、四歳でマディの話している事を理解している! 天才だ。すごい!
「注意しなければならないのは、王女の姿を見る事で魔法が発動されるのか、という事です。たとえば目から魔法を催眠かけるように発動されるのか、それとも声を聞くとなのか、もしくは触れると警戒心が無くなるのか、など様々な可能性が残っております」
「たくさん、ありゅのね」
「そうでございますね。しかしノア様、ポイントは一つ。王女と接触する事なく、奥様を助け出すのです」
「たしゅけ、だしゅ!」
ノアの顔が、キリリとして、とてもかっこいい。さすが、英雄と呼ばれるに相応しい凛々しさだ。
「しかし、ノア様たちを危険にさらす事だけは、絶対にあってはなりません。ですから───」
マディには、何か考えがあるようだ。
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