継母の心得

トール

文字の大きさ
上 下
338 / 406
第二部 第3章

485.平等とは 〜 ネロウディアス皇帝視点 〜

しおりを挟む


皇帝ネロウディアス視点


「クソッ! これでは一体、何のためにここに来たのか……っ」
「……」
「女が大国の王など、あってはならないだろう!? なぜネロウディアス帝はそのような愚かな選択をした!? 二王政などと……っ」
「……兄上様、どうか落ち着いてください」
「うるさい!! 女はただ黙って、男の言う事を聞いていればいいんだ!」
「……申し訳、ありません……」



中央諸国首脳会議の一日目が終わり、ほっとしていたのも束の間、私室に戻ろうとした所をレーテとディバイン公爵に捕まり、引きずられやって来た執務室の中で、イーニアスの妖精であるアカが、各国の王たちの現在の様子を報せてくれたのだ。

ここに朕がいる必要はあるのだろうか……。

「その王って確か、皆平等、ウチは社会主義国! とかなんとか謳って、実際は男尊女卑の、不平等の極み、みたいな国だったわよね。ロギオン王国だったかしら」

何と! 妹に当たり散らす王は、平等を謳っているらしい。

「何なのだその国は……!? そもそも、皆平等ならば王などおらぬだろうに、王を名乗っているのか? しかも妹に当たり散らすとは……どこが平等なのだ」
「ロギオン王国は良い噂を聞きません。平等と聞こえはいいが、内情は働き者から搾取し、働く気の失せた者たちは堕落していく危険な国」

公爵がどういう国かを教えてくれるが、そんな国は長くは保たぬのではないだろうか。

「その通り、破綻間近な国だからこそ、新素材ベリッシモの製造方法を手に入れたかったのでしょう」

公爵の言葉に増々怒りが湧いてくるのだ。

『アカ、あのオー、きらーい! それに……』
「許せぬ!! 自分たちが愚かな国政を行ってきた、そのツケが回ってきただけだというのに、他国の素材に目をつけるなど、自分勝手にも程があるのだ!!」

レーテがオーガ超えするのも無理はないのだぞ。

「ネロ、世界には欲望に忠実な王も多いのも事実よ。アリエット国王やビオラ女王はその代表よね。それに、誰だって自国が一番大切だもの」

自国の為になるのなら、戦争も辞さないという王もいる、とレーテは溜め息を吐く。

戦争など、民に苦しみを与えるものでしかないのだ。戦争で得をするものなど、特権階級の者しかおらぬ。

「朕は、戦争をするような国にはせぬぞ。レーテも、子供たちも、民も、平和に暮らせる国をつくるのだ!」
「おほほっ、ネロのように考える国が在るのもまた事実よね」

朕は、レーテや子供たちがいてくれたから、今のように思えるのだぞ。

「その為にも、新素材ベリッシモや、シモンズ伯爵家、それにイザベル様を守らないといけないのよ。アタシたちが、最強の盾になるの」

さすがは朕のレーテ、かっこいい。

「妻は私が守ります」

公爵よ、レーテに対抗意識を燃やすのは止めるのだ……。

「にしても公爵、『エンプティ』が世界各地の教会を拠点にしている、と報告を受けてはいるが、もしや、ろ、ろ……ロギ? なんとかという国にも拠点とやらがあるのだろうか?」
「それですが、不可解な事に、ロギオン王国、アリエット王国、ブラムス公国の三国では、『エンプティ』の活動は確認出来ていません」
「うぬ? それは、犯罪組織の取り締まりを大規模に行なっているからだろうか?」

アリエット……確かあの黄金好きの、レーテに不躾な視線を送ってきたおじいさんの国ではないか? あの王は、意外にも賢王だったのだな。人は見かけによらぬ。

「陛下、おそらくこの三国は、『エンプティ』と関わりが深いのではないか、と考えています」

え……

しおりを挟む
感想 11,461

あなたにおすすめの小説

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

赤ちゃんが生まれたら殺されるようです(連載版)

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で夫と愛人の罠から抜け出したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

妹を溺愛したい旦那様は婚約者の私に出ていってほしそうなので、本当に出ていってあげます

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族令嬢であったアリアに幸せにすると声をかけ、婚約関係を結んだグレゴリー第一王子。しかしその後、グレゴリーはアリアの妹との関係を深めていく…。ある日、彼はアリアに出ていってほしいと独り言をつぶやいてしまう。それを耳にしたアリアは、その言葉の通りに家出することを決意するのだった…。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?

朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!  「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」 王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。 不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。 もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた? 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。