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第二部 第3章
485.平等とは 〜 ネロウディアス皇帝視点 〜
しおりを挟む皇帝ネロウディアス視点
「クソッ! これでは一体、何のためにここに来たのか……っ」
「……」
「女が大国の王など、あってはならないだろう!? なぜネロウディアス帝はそのような愚かな選択をした!? 二王政などと……っ」
「……兄上様、どうか落ち着いてください」
「うるさい!! 女はただ黙って、男の言う事を聞いていればいいんだ!」
「……申し訳、ありません……」
中央諸国首脳会議の一日目が終わり、ほっとしていたのも束の間、私室に戻ろうとした所をレーテとディバイン公爵に捕まり、引きずられやって来た執務室の中で、イーニアスの妖精であるアカが、各国の王たちの現在の様子を報せてくれたのだ。
ここに朕がいる必要はあるのだろうか……。
「その王って確か、皆平等、ウチは社会主義国! とかなんとか謳って、実際は男尊女卑の、不平等の極み、みたいな国だったわよね。ロギオン王国だったかしら」
何と! 妹に当たり散らす王は、平等を謳っているらしい。
「何なのだその国は……!? そもそも、皆平等ならば王などおらぬだろうに、王を名乗っているのか? しかも妹に当たり散らすとは……どこが平等なのだ」
「ロギオン王国は良い噂を聞きません。平等と聞こえはいいが、内情は働き者から搾取し、働く気の失せた者たちは堕落していく危険な国」
公爵がどういう国かを教えてくれるが、そんな国は長くは保たぬのではないだろうか。
「その通り、破綻間近な国だからこそ、新素材の製造方法を手に入れたかったのでしょう」
公爵の言葉に増々怒りが湧いてくるのだ。
『アカ、あのオー、きらーい! それに……』
「許せぬ!! 自分たちが愚かな国政を行ってきた、そのツケが回ってきただけだというのに、他国の素材に目をつけるなど、自分勝手にも程があるのだ!!」
レーテがオーガ超えするのも無理はないのだぞ。
「ネロ、世界には欲望に忠実な王も多いのも事実よ。アリエット国王やビオラ女王はその代表よね。それに、誰だって自国が一番大切だもの」
自国の為になるのなら、戦争も辞さないという王もいる、とレーテは溜め息を吐く。
戦争など、民に苦しみを与えるものでしかないのだ。戦争で得をするものなど、特権階級の者しかおらぬ。
「朕は、戦争をするような国にはせぬぞ。レーテも、子供たちも、民も、平和に暮らせる国をつくるのだ!」
「おほほっ、ネロのように考える国が在るのもまた事実よね」
朕は、レーテや子供たちがいてくれたから、今のように思えるのだぞ。
「その為にも、新素材や、シモンズ伯爵家、それにイザベル様を守らないといけないのよ。アタシたちが、最強の盾になるの」
さすがは朕のレーテ、かっこいい。
「妻は私が守ります」
公爵よ、レーテに対抗意識を燃やすのは止めるのだ……。
「にしても公爵、『エンプティ』が世界各地の教会を拠点にしている、と報告を受けてはいるが、もしや、ろ、ろ……ロギ? なんとかという国にも拠点とやらがあるのだろうか?」
「それですが、不可解な事に、ロギオン王国、アリエット王国、ブラムス公国の三国では、『エンプティ』の活動は確認出来ていません」
「うぬ? それは、犯罪組織の取り締まりを大規模に行なっているからだろうか?」
アリエット……確かあの黄金好きの、レーテに不躾な視線を送ってきたおじいさんの国ではないか? あの王は、意外にも賢王だったのだな。人は見かけによらぬ。
「陛下、おそらくこの三国は、『エンプティ』と関わりが深いのではないか、と考えています」
え……
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