継母の心得

トール

文字の大きさ
上 下
362 / 406
第二部 第3章

480.悪女フラグ再び!?

しおりを挟む


テオ様に、どうしてそんな事が言い切れるんだ、というような視線を向けられ、余裕ぶって微笑んでみる。

新素材ベリッシモを使用したおもちゃは、組み立てこそこちらでいたしますけれど、パーツはシモンズ伯爵家やディバイン公爵領の職人たち、孤児院、工場、様々な場所で作っておりますわ」
「確かにそれらを取り仕切るベル商会といえども、その全ての情報を手に入れる事はできない」

テオ様は納得したのか頷き、独り言のように呟いた。

「そうですわ。しかも、新型馬車も、レール馬車も、おもちゃだって、ベースは全て、腕を磨いてきた職人さんの手で作っておりますのよ。さらにそれらに使用されている主な素材は、新素材ベリッシモやゴムですわ。たとえ情報を盗まれようとも、簡単に真似出来るものではありませんのよ」
「君が意気揚々と胸を張るのはわかる。だかな、ベル……」

テオ様が眉間を解しながら、大きな溜め息を吐く。

「ベル商会、系列店舗、さらには商会と取引のある職人などの防犯対策を強化せねば、同じ事が何度でも起こるだろう」

ぅう……、テオ様の仰る通りですわ。

「可能性は低いが、今回の間諜が模倣コピーのような特異能力を持っていたら……、腕の良い職人たちを取り込んでいたら、君の事業に携わる人々の今までが無に帰す事になりかねん」
「はい……。わたくし、楽観視しすぎておりましたわ」

反省ですわね。ノアの誘拐事件後には、ディバイン公爵家の防犯対策を見直しましたけれど、商会なども全て、見直すべきでしたわ。

「いや、あの時に私が指示を出すべきだった。後手に回ってしまうなど……っ、すまない」

頭を下げるテオ様に、わたくしは慌てて、夫のほっぺたを両手で挟み止める。

「ベル……、一体何をしているんだ?」
「夫に、頭を下げさせるなんて、わたくし酷い妻ですわ」

悪女フラグが、まだ残っていたのだろうか。今誰かに見られたら、恐ろしい噂がたつに違いないわ。と苦笑いが漏れる。

「私のベルが、酷い妻などと……、そのような事はあり得ん」

そうは仰いますけれどね、

「わたくし、社交界に酷い噂をたくさん流されるほど、嫌われておりますのよ。という事は、今誰かに見られたら、夫に頭を下げさせたオーガのような悪妻、などと噂されますわよ。ですからどうか、頭をお上げになって」

こうでも言わないと、人一倍責任感の強いこの人は、自分を責め続けるのではないだろうか。
部下の責任は全て自分の責任だと考えるような人なのだから。

全責任は私が取る! みたいに言えてしまうところは、とても素敵なのですけれどね。

「ベル……」

頭を下げ続ける夫に言えば、ようやっと、顔を上げてくれたのだ。

テオ様ったら、頑固な面がありますのよね。そういう所、ノアとそっくりですわ。

「テオ様、どのように防犯対策を強化すべきか、一緒に考えてくださいませ。わたくし一人で対策を考えて、また間諜に潜入されても困りますもの」
「妻から、そのような可愛いお強請りをされると、頑張らねばならないか」

力を抜いて微笑むテオ様に、わたくしの責任を一手に背負い込まさずに済みそうだ、とひと安心する。

「フフッ、頼りにしておりますわ。旦那様」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



~ おまけ ~


「ぺーちゃん、おとぅさま、おかぁさまに、めっ、されたのよ」
「!? みゃおー、めぇ!?」
「さっきね、おかぁさまのおへや、いったの。そちたら、おとぅさま、ごめんなさい、ちてた」
「みゃおー……」
「おかぁさま、おとぅさまのおかお、さんどいっちみたい、ちて、めって、ちてた」
「ちゃ!?」

イザベルの予想だにしないしない所で、噂されているのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした

仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」  夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。  結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。  それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。  結婚式は、お互いの親戚のみ。  なぜならお互い再婚だから。  そして、結婚式が終わり、新居へ……?  一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?

【完結】本当の悪役令嬢とは

仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。 甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。 『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も 公爵家の本気というものを。 ※HOT最高1位!ありがとうございます!

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

クロユキ
恋愛
「俺と離婚して欲しい、君の妹が俺の子を身籠った」 パルリス侯爵家に嫁いだソフィア・ルモア伯爵令嬢は結婚生活一年目でソフィアの夫、アレック・パルリス侯爵に離婚を告げられた。結婚をして一度も寝床を共にした事がないソフィアは白いまま離婚を言われた。 夫の良き妻として尽くして来たと思っていたソフィアは悲しみのあまり自害をする事になる…… 誤字、脱字があります。不定期ですがよろしくお願いします。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。