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第二部 第3章
480.悪女フラグ再び!?
しおりを挟むテオ様に、どうしてそんな事が言い切れるんだ、というような視線を向けられ、余裕ぶって微笑んでみる。
「新素材を使用したおもちゃは、組み立てこそこちらでいたしますけれど、パーツはシモンズ伯爵家やディバイン公爵領の職人たち、孤児院、工場、様々な場所で作っておりますわ」
「確かにそれらを取り仕切るベル商会といえども、その全ての情報を手に入れる事はできない」
テオ様は納得したのか頷き、独り言のように呟いた。
「そうですわ。しかも、新型馬車も、レール馬車も、おもちゃだって、ベースは全て、腕を磨いてきた職人さんの手で作っておりますのよ。さらにそれらに使用されている主な素材は、新素材やゴムですわ。たとえ情報を盗まれようとも、簡単に真似出来るものではありませんのよ」
「君が意気揚々と胸を張るのはわかる。だかな、ベル……」
テオ様が眉間を解しながら、大きな溜め息を吐く。
「ベル商会、系列店舗、さらには商会と取引のある職人などの防犯対策を強化せねば、同じ事が何度でも起こるだろう」
ぅう……、テオ様の仰る通りですわ。
「可能性は低いが、今回の間諜が模倣のような特異能力を持っていたら……、腕の良い職人たちを取り込んでいたら、君の事業に携わる人々の今までが無に帰す事になりかねん」
「はい……。わたくし、楽観視しすぎておりましたわ」
反省ですわね。ノアの誘拐事件後には、ディバイン公爵家の防犯対策を見直しましたけれど、商会なども全て、見直すべきでしたわ。
「いや、あの時に私が指示を出すべきだった。後手に回ってしまうなど……っ、すまない」
頭を下げるテオ様に、わたくしは慌てて、夫のほっぺたを両手で挟み止める。
「ベル……、一体何をしているんだ?」
「夫に、頭を下げさせるなんて、わたくし酷い妻ですわ」
悪女フラグが、まだ残っていたのだろうか。今誰かに見られたら、恐ろしい噂がたつに違いないわ。と苦笑いが漏れる。
「私のベルが、酷い妻などと……、そのような事はあり得ん」
そうは仰いますけれどね、
「わたくし、社交界に酷い噂をたくさん流されるほど、嫌われておりますのよ。という事は、今誰かに見られたら、夫に頭を下げさせたオーガのような悪妻、などと噂されますわよ。ですからどうか、頭をお上げになって」
こうでも言わないと、人一倍責任感の強いこの人は、自分を責め続けるのではないだろうか。
部下の責任は全て自分の責任だと考えるような人なのだから。
全責任は私が取る! みたいに言えてしまうところは、とても素敵なのですけれどね。
「ベル……」
頭を下げ続ける夫に言えば、ようやっと、顔を上げてくれたのだ。
テオ様ったら、頑固な面がありますのよね。そういう所、ノアとそっくりですわ。
「テオ様、どのように防犯対策を強化すべきか、一緒に考えてくださいませ。わたくし一人で対策を考えて、また間諜に潜入されても困りますもの」
「妻から、そのような可愛いお強請りをされると、頑張らねばならないか」
力を抜いて微笑むテオ様に、わたくしの責任を一手に背負い込まさずに済みそうだ、とひと安心する。
「フフッ、頼りにしておりますわ。旦那様」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~ おまけ ~
「ぺーちゃん、おとぅさま、おかぁさまに、めっ、されたのよ」
「!? みゃおー、めぇ!?」
「さっきね、おかぁさまのおへや、いったの。そちたら、おとぅさま、ごめんなさい、ちてた」
「みゃおー……」
「おかぁさま、おとぅさまのおかお、さんどいっちみたい、ちて、めって、ちてた」
「ちゃ!?」
イザベルの予想だにしないしない所で、噂されているのだった。
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