継母の心得

トール

文字の大きさ
上 下
326 / 387
第二部 第3章

474.子供祭6

しおりを挟む


「ソロモンあにうえ、フルーツあめを、ください」
「ふふっ、イーニアス、いらっしゃい。どのフルーツの飴がいいかな?」
「わたしはイチゴで、ちちうえはブドウで、あねうえは、リンゴです!」
「ノアの分はいいの?」
「あっ、ノアのぶんも、いります! ノアは、ブドウがすきだから、ぶどう、ください」

仲の良い兄弟の話し声が聞こえてきますわ。ソロモン殿下はフルーツ飴のお店ですのね。イーニアス殿下は、たくさん飴を頼んでおりますが、そんなに持って歩けるのかしら。と、思ったら、ソロモン殿下も一緒に持っていってあげますのね。優しいお兄様ですわ。

「おかぁさま、わたち、きたのよ」
「よーてーたん、ふりょも、ちた!」
「ぺぇちゃ、みょ!」

まぁっ、わたくしの天使たちが来てくれましたわ!
ふ、フロちゃんが、ぺーちゃんを抱っこして、よたよたしておりますけれど……あぁ……ぺーちゃんが重力には逆らえずに、身体が伸びて、下にズレていっていますわ。顔が苦しそう……あ、クレオ枢機卿がさすがに見かねて、取り返しましたわ。

「ノアっ、フロちゃんっ、ぺーちゃん!」
「お嬢様、チーズ3、さつまいも3、コーン6お願いします」
「え……」

サリー、ちょっと空気を読んでちょうだい!?

「おかぁさま、おいしょがちぃの……」
「ふりょ、ちゃべちゃい」
「かぁちゃ、ぅちょ、ちぃ?」

あっ、三人とも待ってちょうだい!! 行かないで……っ

わたくしの様子を見た三人は、とぼとぼと離れていくではないか。

「ノア! わたしが、フルーツあめを、もってきたぞっ」
「アスでんか!」

そこへイーニアス殿下が来たものだから、ノアの意識はもうわたくしにはない。ぺーちゃんも「あちゅ!」と嬉しそうで、フロちゃんはエンツォお父様に、何か食べ物をもらって食べている。ドニーズさんは先ほどからわたくしの屋台に並びながら、ウィーヌス様とお話されている。

「ぺーちゃんと、フローレンスも、いっしょだったのか!」
「あちゅ、ぺぇちゃ、ばぁん!」
「ん? ばぁん?」

あらあら、ぺーちゃんがこれからやる、的あてゲームを見ていてほしいとでも言っているのか、「ばぁん!」と身振り手振りで話している。

「ホホッ、殿下、フェリクスがこれから、フローレンスの露店で、ボールの的あてゲームをするから、見ていてほしいと言っております」
「まとあて……おもしろそうだ!」

クレオ枢機卿から、ぺーちゃんの意図を知り、的あてゲームに興味を持ったイーニアス殿下に、口の端にチョコレートを付けたフロちゃんが近付いていき、

「ばぁん、ちゅりゅ?」

可愛いのだけれど、言葉は物騒ですのよね……

「うむ。わたしにも、ばぁん、させてもらえるか!」
「ぁーい。あ、いらちゃい、ましぇー」
「あちゅ、ぺぇちゃ、みょ!」
「わたちも、もういっかい、しゅる!」

イーニアス殿下からもらった、ぶどうの飴を食べながら、ノアもやる気満々だ。

こうして、お祭りを楽しんだ子供たちは、満足したように帰っていった。

ちなみに妖精紙幣(子供紙幣)を一番稼いだのは……

「お姉様、子供祭でお姉様の露店が一番人気だったそうですね。大人げないですよ」
「普通は、料理人の屋台のように、おもちゃの紙幣は受け取らないのではないでしょうか」

弟とサリーに冷たい視線を向けられ、落ち込むわたくしがそこにいたのだった。

「おかぁさま、わたち、とーっても、たのちかったのよ!」
「ぺぇちゃ、みょ!」
「また、ちましょーね」
「にゃ!」

まぁ、当初の予定通り、ノアとぺーちゃんが喜んでくれたから、大成功ですわよね!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



~ おまけ ~


ぺーちゃん派

「やっぱりフェリクスが一番可愛かったです!」
「ウィーヌス様、折り紙貰えて良かったですね」
「ホホッ、親バカ丸出し、ですなぁ。しかし、折り紙は私の方がたくさん貰えましたがな」


皇子、皇女派

「やはり朕とレーテの子供だけあって、どの子の露店も素晴らしかったのだ!」
「そうね。子供たちがまさか、露店の店主になるだなんて、イザベル様も面白い事考えるわよね!」
「次回は朕も、露店の店主になるのだ!」
「次回のアンタの参加は、見送るわよ。仕事しなさいよね」
「レーテ!?」


フローレンス派

「ああ……、どうしてフローレンスは、オークの的あてゲームを選んだんだろうか……ボクの育て方が悪い?」
「がおぉ!」
「フローレンス!? 何してるんだい!?」
「がおぉ! おーく、ちてりゅ」
「やっぱり、ボクの育て方が原因!?」


ブルネッラ派

「ディバイン公爵夫人さえ、露店を出していなければ……っ」
「ママ、ぶるねっら、たのちかった……」
「うふふ、良かったわね。あなた、主家の奥様に悔しそうな顔を向けないでください!」
「くそぅ! ブルネッラの露店が一番なのに!」


しおりを挟む
感想 11,225

あなたにおすすめの小説

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
 もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。  誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。 でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。 「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」  アリシアは夫の愛を疑う。 小説家になろう様にも投稿しています。

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。