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第二部 第3章
465.大成功
しおりを挟むな、ナンバーワンポーズ!?
しかし、それで終わらないのがわたくしの可愛いノアだ。もう片方の手を水晶にあて、ナンバーワンポーズのまま魔力を込め始めたではないか。
「ノアまで……、一体何を遊んでいるのか」
テオ様は呆れ気味に眺め、わたくしは、なんて可愛いのかしら、ノアこそ可愛さナンバーワンよ! と微笑ましく見ていたのだが、先ほどまで炎の鳥が浮かび上がっていた水晶が、今度は凍っていくのに気付き、メを剥いた。実際に水晶が凍っているわけではなく、まるでCGのように、映像が映し出されている感じだ。
炎の鳥を中心に、氷の結晶が周りを囲む幻想的な光景は、一生忘れる事ができないだろう。
「なんという事だ!」
「もしや、ポーズがあの水晶の反応と関係あるのでは……?」
「イーニアス殿下といい、ディバイン公子といい、素晴らしい子供たちですね!!」
「息をのむ美しさとは、まさにこの事か……っ」
「将来が楽しみですなっ」
「将来どころか、今すでに、大人よりもすごい事を成していますよ!」
まさにスタンディングオベーション。皆が立ち上がり、拍手喝采で二人に賛辞を送る。
「ちゃっく、ちぇ、にょーぃ!」
ぺーちゃんが胸を張り、鼻からフンッと息を吐く。
おそらく、「作戦通り!」と言ったのだろう。監督か、と言いたくなる満足気で得意気な顔が、可愛すぎる。
「フフッ、作戦通り、皆を驚かせる事が出来ましたわね」
「にゃ!」
「作戦……?」
テオ様だけが訝しげな視線を向けてくるが、戻ってきた子供たちの、やりきった表情を見て、褒めるしかないと思ったのだろう。
「……ノア、よくやった」
「おとぅさま、わたち、かっこいーぽーじゅ、ちた」
「そうか……」
「わたち、かっこいー、かった?」
ノアからじっと見上げられ、少したじろぐテオ様が面白い。なんて返事をするのかしら? などと、好奇心が湧いてくる。
「格好いいかはわからんが……誰にでもできる事ではない。自分を誇れ」
「ホコリ? わたち、ばっちぃ、ないのよ」
「違う」
勘違いしてしまったノアに、「お父様はね、ちりや埃の事ではなく、胸を張りなさいって仰っていますのよ」とフォローすると、そのくりくりおめめが輝き、「はい!」と大きく頷いていた。
「ノア、とってもカッコよかったですわ」
「ぽーじゅ、かっこいー、かった!」
「ええ。こう、指を天に向かって伸ばす所なんて、ノアが一番って思えるほどカッコよかったですわよ」
どこがどう格好良かったのか、きちんと答えてあげないと、適当に言っていると思われてしまいますものね。
詳しく褒めてあげると、ノアは嬉しそうに笑い、
「おかぁさま、わたち、アスでんかと、ぺーちゃんと、さくせん、たてたのよ。ほんとはね、ちょき、ちたかった……」
と、コソッと教えてくれるのだ。
「まぁっ、あれはピースをしたかったのね。でも、作戦は大成功でしたわね。皆、ノアとイーニアス殿下がカッコよかったと褒めておりますわ」
「はい! だいしぇーこーね」
「にゃぃ、だぁっちぇっ、こ!」
ノアとぺーちゃんは顔を見合わせ、成功を称え合う。
イーニアス殿下も、皇帝陛下と皇后様に褒められて、照れくさそうに笑っていた。
皇帝陛下がイーニアス殿下を抱き上げて、ものすごい勢いで褒めているものだから、皇后様が苦言を呈していたのは、いつも通りの光景ですわね。と頬が緩んだ。
こうして、七神祭は格好いいポーズと共に終わりを迎え、参加した人々は笑顔で教会を後にしたのだ。
この五年後から、儀式にはポーズを付けるという事が常套化された事で、ノアが大人になった時に恥ずかしい目に合うのだが、それはまた未来の話。
「ぺぇちゃ、にゃんにょ、ちゃめ、ちた?」
「ほほっ、フェリクスや「何のために来た」のか、と言うがな、七神祭の後は、各司教に挨拶をしにいってからが本番なのだよ」
あの長すぎる祝詞を暗唱していたクレオ枢機卿が、疲れも見せずに、ニコニコと笑いながらやって来て、ぺーちゃんを抱き上げ言う。
「にゃ?」
「帝都の民たちが、七神祭で集まる各領の司祭や司教を歓迎する、『夜祭』を開いてくれておりますぞ」
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