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第二部 第3章
459.七神祭 〜 ぺーちゃん視点 〜
しおりを挟むぺーちゃん(フェリクス)視点
「教会のお祭りですの?」
「そうです。5年に一度、帝都の教会に、各領にある教会の司教、司祭が集まり、七神に祝詞を奏上する大祭でしてな、簡単に言えば、毎年行う五穀豊穣を願う祈年祭の、集大成のような祭りですかなぁ」
クレオが私を膝の上に乗せ、口に入れるとシュワッと蕩けて消える、丸い小さな粒のようなクッキーを食べさせてくれながら、お母さんと話している。
どうやら教会で大きなお祭りがあるらしいのだ。
ディバイン公爵家に遊びに来た……孫である私に会いに来てくれたクレオは、ここでしか飲めない、お気に入りの最高級の紅茶を飲みながら、ニコニコしている。
クレオ、髭にケーキのクリームが付いているぞ。後、もっと丸いクッキーを食べさせてくれ。
「それは盛大なのでしょうね。わたくし、旦那様と結婚してから初めて帝都に足を踏み入れましたから、『七神祭』という大きなお祭りに参加した事がございませんの。楽しみですわ」
『七神祭』は前世で執り行った事がある。
焔、風、水、土、光、闇、創世神の七神に感謝の祈りを捧げる祭りで、国民の祭りというよりは、教会関係者の祭りだ。参加するのは司祭以上。貴族もそれぞれの神の加護を持つ家と、焔の加護を持つ皇族の五家のみである。しかし、今回一番問題なのは……
「しかし問題は、土の神の加護を持つ貴族がおらぬという事ですかなぁ」
「土の神の加護といえば、確か、ダスキール公爵家……」
ダスキール公爵家。そう、あの稀代の悪女、オリヴィアの生家だ。
「お取り潰しにあった貴族の一つですな」
「ダスキール公爵本家の方は……、全員お亡くなりになりましたから……ですが、一族自体はご存命のはずではありませんの?」
「おや、ディバイン公爵夫人はご存知ありませんか? 神の加護は基本的には本家の者、しかも全員ではなく、一部にのみ授けられるのです。ディバイン公爵家も、加護持ちは閣下とノア公子だけではありませんかな?」
「そうでしたわ」
『七神祭』で加護持ちが欠ける事は大問題だ。何故なら、この祭りは厄災を祓う儀式も兼ねており、各々の魔力を巨大な水晶のようなものに込め、神に捧げなければならない……ん? どこかで同じような話を聞いたような、聞かないような……? う~ん?
「あ、ではリューク第三皇子殿下でしたら、加護を授けられる可能性もあるのではなくて?」
「そうですなぁ。しかし、まだ赤子ですから、五つになって、祝福の儀を受けてみねば、なんとも言えません」
「そう、ですわね……けれどノアは……」
「ほほっ、ノア公子は特別ですから、一緒にしてはなりませんぞ」
そう! ノアは特別すごい! 何しろ英雄だからな!!
「にょあ、ぅ、っぎょーい!」
「フェリクスや、突然叫ぶと、この爺の心臓が止まるのでな。危険ですぞ」
「にゃ……」
クレオ、ごめんなさい。ノアがすごいから、つい……。
「ふふっ、ぺーちゃんはノアが大好きですもの。ノアのお話になると、興奮してしまいますわよね」
「にゃ!」
そう。お母さんはよくわかっている。
「ホホッ、そうでしたな。それでディバイン公爵夫人、実はその七神祭に、フェリクスを参加させようと思っているのです」
「え? ぺーちゃんを?」
私も、参加出来るのか。まぁ、教皇だしな。当然だろう。
「いやいや。フェリクスは私の孫として、参加するのだよ。教皇としてではない」
違うのか!? しかし、枢機卿もいない今、教皇がいなくては色々問題が……
「うむ……、実はこの七神祭の前に、私が枢機卿になる事が決まっておって、そこの問題はすでに解決済みだのぅ」
クレオが枢機卿!?
「まぁっ、クレオ大司教が枢機卿に? それはおめでとうございます!」
「ホホッ、私は次代の枢機卿が決まるまでの繋ぎですからなぁ。年寄りには荷が重い」
「そんな事はありません。ウィーヌス枢機卿が引退された今、クレオ大司教以外に適した方はおりませんわ」
お母さんの言う通り、クレオが枢機卿なら、それは願ってもない事だ。
「だからの、フェリクスや。今回は孫として七神祭に参加し、各教会の司教たちと交流を深めるのだよ」
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