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第二部 第3章
452.狙われたイザベル6 〜 イザベル視点/テオバルド視点 〜
しおりを挟む「───ウィニー男爵領は、山頂にありますのね」
ウィニー男爵領地を昔の地図と現在の地図、そして正妖精に見てきてもらった情報とを照らし合わせた結果、緩やかな丘だと思っていた所が、実は山頂だという事が発覚したのだ。
周りが隆起して、昔は山だった所が丘のようになったのかしら?
歴史書によれば、グランニッシュ帝国自体、元々島国だったものが、隆起して陸続きになっているようだし。可能性は高い。
グランニッシュ帝国の標高は全体的に高いが、比較的気候が穏やかなのは、焔神の奇跡と言われる火山の地熱が関係しているのかもしれない。
さすが焔の神の加護を持つ皇族が支配する国だけあるわ。本当に奇跡的に、火山の被害が出た事はないみたいなのよ。
しかし、それにもかかわらずウィニー男爵領地は永久凍土だ。
最初は焔神の加護の問題だろうかと考えた。昔はグランニッシュ帝国の土地ではなかったから、加護の範囲外だとか、そんなことなのかと。
しかし、そういった土地はいくらでもあるが、そのどれもが温暖な気候を保っている。これにより、加護を持つ皇帝が自身の国と認めれば、その土地も恩恵を受けられるようだとわかる。
例外として、ディバイン公爵領と隣接する領は別だが、これはディバイン公爵家が風と水の神々の加護を授かっているからだろう。だとしても、常に冬というわけではない。
さらにウィニー男爵領は昔からグランニッシュ帝国の一部であった事も発覚し、加護うんぬんというのは考えから削除された。
「う~ん……やっぱり標高? でも、帝都と同じくらいの高さなのよね……。ねぇ正妖精。この土地に氷に関係あるドラゴンですとか妖精ですとか……、珍獣ですとか、そのような不思議な生き物、生息しておりますの?」
『そんな生き物いないよ。グランニッシュ帝国はボクの縄張りだよ! そんな生き物がいたらすぐにわかるさ!』
という事は、この土地の性質……?
「土地自体の温度が低い……? 焔神の力が弱まっている?」
『やだなぁベル。焔の神の力が弱まる場所なんて、地面が氷で出来てる所じゃないんだからさ。ボク、ちゃんと見てきたけど、全部土で出来てたよ。凍ってはいたけど』
「そうよね。北極じゃあるまいし、氷で出来ているわけ……」
地面が、氷……っ
「正妖精! 地面の下よ!! 地面の下を見てきてちょうだいっ」
『えぇ!? 地面の下!?』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
テオバルド視点
『───ダカラ、ベル、ゲンキナノ~、ッテ、イッテル!』
「…………」
「公爵、奥方の行動を妖精に報告させるとは……、まさか監視しておるのか!? そ、それはよくないと、朕は思うのだぞ!」
皇帝に付いている小妖精に頼み、チロへ繋いでもらったのだが、正妖精は頼んだ仕事を忘れ、妻は大事な事を一人で決めるという頭の痛い報告を受けた私に、皇帝はおかしな誤解をする。
……今日は厄日か。
「そ、そんなに睨まなくても良いではないか!? 正直すごく怖いのだぞ!!」
睨んでいない。私は元々こういう目つきだ。
「旦那様、奥様はご無事なのですか!?」
「無事だ。危険な事はなく、邸でいつものように過ごしているらしい。が、少々問題が起きた。やはり戻らねばならんようだ」
「かしこまりました。馬車ごと移動されるという事で宜しいでしょうか」
「ああ」
「領地へ戻る旨を、タウンハウスへ伝えますので、少々お待ちください」
「頼んだぞ」
ウォルトが帰宅の準備をしている間に、皇帝へ皇后を呼ぶよう伝えた。「朕、一応皇帝なのだぞ!?」などと言いながらも、皇后の所へ向かう皇帝は犬のようだ。
こうして領地へと戻ったのだが……、
『すごいや! ベルの言う通りだったよ!!』
「やっぱり思った通りでしたのね。これで、ウィニー男爵領の金策は何とかなるかもしれませんわ!」
……奇跡を起こすと評判の女神は、まさに今、私の目の前で奇跡を起こそうとしていたのだ。
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