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第二部 第3章
445.謎 〜 テオバルド視点 〜
しおりを挟むテオバルド視点
これは……記録か。過去の映像を魔石に記録させ、動く絵……いや、映像としているようだ。
以前ベルが、「ノアの映像を残せたらいいのに」と呟いていたが、意味がわからず流していた。しかし、なるほど。こういう事だったのか。
『───今、この、記録を見ている者よ……、その探究心と洞察力によって、ここにたどり着き、私の映像を見ている事だろう』
この方が、ウェルス様……。顔は驚くほど私と瓜二つだが、ノアのような銀髪……なるほど。ノアがウェルス様の生まれ変わりというのも納得が出来る。これは、将来のノアの姿だ。
『───その行動力こそが、『管理者』となるに相応しきものである。しかしおそらく、何の管理者か、と戸惑っている事だろう』
ウェルス様は、やはり風と水の神殿の管理者だったか。
ウェルス様の記録は、神殿や管理者の事を説明している。風と水の神殿は、他神殿とは異なり、管理者は一人のみ。氷の特性を持つ者である事、そして探究心、洞察力、行動力、勇気、好奇心旺盛である事が条件なのだと話す。
だからこそ、このようにペンダントを日誌に隠し、公爵家や皇城に興味を示す仕掛けを作ったのだ、と言うではないか。
まさか皇城の地下迷宮へ向かう抜け道は、ウェルス様が作ったのだろうか……。
『今、この映像を見ている者よ。強制はしないが、神殿の管理者はそなたの知的好奇心を満たす事だろう。一度、訪れてから決めてもらいたい。そしてどうか、ア……ルドを、解放……───』
管理者になるかどうかは、自分の目で見て決めろ、と話を終えたウェルス様の映像が乱れ、途切れたのだ。
風と水の神殿が他神殿とは、多少異なる事、氷の特性を持つ者でなくては管理者になれない事はわかったが、何故氷の特性を持つ者で、一人でなくてはならないのか、ディバイン公爵家との関係は何か、などはわからないままだった。
このペンダントは、誰にも見つけられてはいない……。という事は、ウェルス様が管理者となって後、ディバイン公爵家から管理者になったものはいないのか……? ウェルス様は1500年前にディバイン公爵家を興されたが、神殿はそれよりも以前からあっただろう。ならば、氷の特性を持つ者が、ディバイン公爵家以外でもいたとしても不自然ではない。
「風と水の二神から加護を授かった者が、ウェルス様以外にもいたのなら、現在もディバイン公爵家の他に、その血筋が存在している可能性もある」
だとしたら、管理者であったと考えられるウェルス様が、調べていないはずはない。
何しろ管理者の条件は、好奇心旺盛である事だ。
「皇城にも、何か見落としているものがあるのか……それとも神殿に……」
コンコン、コンコン……
ふと顔を上げると、宝物庫の外から、扉をノックする音が聞こえてくるのに気付き、調べていた手元の資料を戻してから、宝物庫の扉を開けた。
「ウォルトか」
「旦那様、奥様とノア様、ぺーちゃん様がお帰りになられました」
その言葉に、安堵と嬉しさが混ざったような気持ちになり、二人の顔を見たいと急いで向かったのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
イザベル視点
戻ったのは午後三時をとっくに過ぎており、どら焼きが食べたいと言っていたノアは、「おやちゅ、ない……」と落ち込んでいた。
神殿で出たおやつは、ナッツや木の実でしたものね……。食べさせてあげたいのはやまやまだけれど、もう夕方ですもの。今食べると、晩御飯が食べられなくなってしまいますわ。
「ノア、どら焼きはまた、明日のおやつの時間にいただきましょうね」
「はい、おかぁさま……」
「ぁい、かぁちゃ……」
まぁ、ぺーちゃんまでノアと同じように落ち込んで。
二人おててを繋いで、肩を落とし、トボトボと歩いている。
あそこまで落ち込んでいるのは、おやつが食べられなかっただけでなく、ももんちゅと、ちろあんとバイバイし、イーニアス殿下が帰ってしまったからだろう。
とっても楽しそうに遊んでいましたものね。
「ノア、ぺーちゃん、晩御飯まで、お母様と謎解きゲームをしましょうか」
「なぞなぞ?」
「にゃじょ?」
「二人が探偵になって、お母様が出すヒントから、犯人を当てるゲームですわ」
落ち込んでいた二人が、興味を持ったのをいい事に畳みかけると、「たのちしょー!」と嬉しそうに寄ってくるので、子供って、意外と体力ありますのよね……、などと思いながら、三人でリビングへと移動したのだ。
この後、テオ様が参加を表明し、謎解きゲームの難易度が上がって子供たちから不満の声が噴出したのだが、大人げないテオ様は犯人をすぐ特定してしまい、ゲームは終了したのであった。
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