継母の心得

トール

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第二部 第3章

443.ひと仕事終えました

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白龍と同じ反応をする、任侠モモンガに戸惑っていると、ノアが名付けについての話を切り出した。

「ももんがー、わたちね、どりゃごんさんと、ももんがーに、おなまえ、ちゅけたいのよ」
『おぼっちゅんが、なぢゅけてくれるので、ござんちゅか!』

話がそれて、気まずい雰囲気から解放され安堵していると、名付けの話が進んでいた。どうやら白龍もモモンガも、ノアに名前を付けてもらう事を喜んでいるようだ。

「フィニも、なまえをつけたとき、とてもよろこんでいたのだ」

イーニアス殿下が、珍獣に名前を付けた時の事を嬉しそうにに話してくれる。

「イーニアス殿下との絆が深まったから、嬉しかったのですわね」
「うむ。わたしも、うれしい!」

フフッ、皇帝陛下と一緒に名前を付けたと仰っていたから、それも嬉しかったのでしょうね。

『それで、ノアは私たちに、どのような名をつけてくれるのですか?』
『あっちゅは、ちゅぶいながいい、でござんちゅね』
「ちゅぶい?」

モモンガの言う「ちゅぶい」の意味がわからなくて、ノアが首を傾げている。わたくしも最初はわからなかったのだが、任侠モモンガだし……「渋い名前」がほしいと言っているのではないだろうか。

「ちゅぶい……あっ、ももんがー、ももちゅぶ!」
『それは、いやで、ござんちゅ……』

そうでしたわ。ノアはあのパペット『げこりん』の名付け親。ネーミングセンスが壊滅的でしたのよ!

「いや? ん~……ももんがー、かぜ……、おしょら……てん、てんちゅー!」

天誅!?

『それも、いやで、ござんちゅ!』
「め? ん~……あっ、ももんちゅ! ももんがー、『ももんちゅ』よ!」
『ももちゅぶや、てんちゅーよりは、まちゅ……もう、それでいい、でござんちゅよ……』

モモンガ、いえ、『ももんちゅ』が諦めましたわ。でも、ももんちゅって、とっても可愛いですわよ。

「どりゃごんさん、どらちゃん?」
『ノア、もう少しじっくり、考えてみましょうか』

白龍、声は穏やかなのに、すごく嫌がっている事が伝わってきますわ!

「はい。ん~……ちろの、どりゃごんさん……どら……わたち、どらやき、たべたい」

ノア、どらちゃんから、どら焼きを連想して、食べたくなったの!? ちょうどおやつの時間!

『……どら、やき?』
「どらやき……あっ、あんこ。どりゃごんさん、『あんこ』よ!」
『あんこ、ですか? わかりました。私はあんこです』

あんこ!? 本当にそれでいいの、ノア?

「まつのだ、ノア。ドラゴンさんはしろいが、あんこはくろい!」
「くりょい!?」

イーニアス殿下のアドバイスに、白龍を見て、あんこを思い出しているのか、あわわ、と両手で口を押さえる息子は、可愛いが、果たしてそこは引っかかる所なのだろうか……。

「どりゃごんさん、あんこ、ちがう。やっぱり、ちろいから、『ちろあん』!」

ノア……っ

『私はちろあんですね。では、今からは、ちろあん、と呼んでください』

白龍が、『ちろあん』になってしまいましたわ……。

『チロト、ニテルノ~』

わたくし肩から飛び降りたチロが、ふわふわと頭上に飛んできて、お揃いだと笑っている。

「そうね。チロのお姉さん? お兄さん? ですわね」
「しょうね。チロと、ちろあん、きょうだいみたいね」
『随分小さな兄弟が、私にできましたね』
『ヨロシク、オネガイ、シマスナノ~』
『ええ。チロ、というのですね。よろしくお願いします。チロ』
『ハーイ、ナノ~』

あっという間に仲良しになってしまいましたわ。

「ぺぇちゃ、みょ。にょあ、にぃちゃ」

ぺーちゃん、チロの姿は見えないけれど、わたくしの呟きに、自分とノアも兄弟だと主張しておりますのね。

「ぺーちゃん、わたちの、おとうとよ」
「にゃ!」

なんて可愛い兄弟なのかしら。

なかなか癖のある名付けを、ひと仕事終えたというようなすっきりした顔のノアと、ご機嫌のぺーちゃんを眺めながら、微笑ましい気持ちになったのだった。

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