継母の心得

トール

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第二部 第3章

437.管理者誕生 〜 テオバルド視点 〜

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テオバルド視点


ノアが試練とやらに向かった後、モモンガに案内されて、塔の地下へとやって来た。

この塔はどうやら湖の中に繋がっていたらしい。

そこは、全面が透明な壁で囲まれており、水中の様子をうかがい知ることができる造りになっていた。

様々な魚が泳ぎ、青はどこまでも澄んで美しい。ノアもきっと、この光景に喜ぶのだろう、と思っていると、透明の壁の外に、白く巨大な蛇……いや、ノアのお気に入りのぬいぐるみのような生き物が現れ、ここで待つよう言ったのだ。
モモンガが言うには、あれはミズチという生き物で、水の神獣らしい。

暫くすると、何があったのか、涙と鼻水の跡をつけた息子が、この部屋へやって来た。

「ノア」
「おとぅさま!」

私を見つけると、嬉しそうに駆け寄ってくるので、抱き上げてやる。

「わたち、ちれん、できたのよ!」
「そうか。泣いたようだが、怪我はないか?」
「ないてないの。あしぇよ」

そう言って、涙の跡を手で擦り、目の端が少し赤くなっているが、汗……?

「……そうか。よくやった」
「おかぁさま、いいこ、ちてくれるかちら」
「ああ。帰ったら、ベルが抱きしめてくれるだろう」

嬉しそうにするノアの顔を、ハンカチで拭いてやっていると、

『幼き子よ、こちらの転移陣の先にある部屋の水晶へ、魔力を込めてください』

蛟がノアを転移陣へと案内する。モモンガはノアの肩に乗って移動しており、キノコ妖精が文句を言っているのを、私は後ろについて見ていた。

転移した先は、青白く光る部屋で、透明の壁ではないようだ。焔神殿の鳥の部屋を思い出させる造りに、ここは神殿の仕様か、と納得する。

『幼き子、ここは風と水の神殿の全てを担う場所。管理者には、今後、定期的にこちらの水晶へ魔力を補充してもらわなくてはならないのですが、よろしいか?』
「はい!」
『おぼっちゅん、では、このすいちゅうに、さわってほちゅう、でござんちゅ』

モモンガに促され、ノアが躊躇いなく水晶へ触れる。

「ピカーッ、ちた」
『魔力の補充は無事終わりましたね。では……』
『あかちゅを、きざむ、でござんちゅよ』

証……というと、イーニアス殿下の背中にあったあのマークか。

「あかちゅ?」
『幼き子、風と水の証を、そなたの身体に刻まねばならないのです。その証を通して、我ら神獣の力の一部を共有するのです』
「あかち! アスでんかの、しぇなか、ありゅの!」

息子は証と聞き、嬉しそうだ。イーニアス殿下とお揃いだからとでも思っているのかもしれない。

『ではモモンガ、やりますよ』
『そうで、ござんちゅね』

モモンガがミズチの頭に乗り、ノアに向かい合う。そして、ノアが青白く光ると何事もなかったかのように首を傾げた。

『おぼっちゅん、おわった、でござんちゅ』
『幼き子、そなたの手の甲に、我らの証を授けました』
「おてて……? なんにも、ないのよ?」
『人間は、証が見えるだけでも騒ぐと聞きます』
『だから、まりょくをこめると、うきだちゅように、ちゅた、でござんちゅ』

焔神殿の鳥にはなかった気遣いだな。

「まりょく、こめりゅ……あ、でてきたの!」

早速魔力を手に集めたらしいノアの手の甲には、青白く光る証マークがあった。意匠は、風と水を合わせたようなものだ。

『幼き子よ。これでそなたは、風と水の神殿の管理者となりました』
「! わたち、かんりちゃ、なった!!」

ノアはミズチの話に満面の笑みを浮かべ、管理者になった事実を誇ったのだ。

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