継母の心得

トール

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第二部 第3章

432.ちぃちゃくないの 〜 テオバルド視点 〜

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テオバルド視点


「健康になる、だと?」
『そうでござんちゅ。からだが、がんちゅうに、なるんでござんちゅよ』

がんちゅう……ああ、頑丈という事か。

「それは、不老不死や人間離れをするという意味ではないのだな?」
『そうではござんちゅん。ただ、びょうきになりにくく、げんきになる、といういみでござんちゅ』

病気し難く、元気に……管理者は、ベルになってもらった方がいいのではないだろうか。そうすれば身体の弱いベルも健康に……

『だんなさん?』
「いや……、ならば問題はない。先程聞かされた説明も、焔の神獣から聞いた事とそう変わらんからな」
『ふちゅちゅうが、きちゅんと、せちゅめいちゅていたんで、ござんちゅか!?』

両手で持っていたナッツを落とし、驚いているのか、大きな目をさらに大きくする。

先ほどから気になっていたが、モモンガはナッツを食べるのだろうか?

「おとぅさま、わたち、かんりちゃ、なりたいのよ」

モモンガと同じように、ナッツを食べようと、スプーンに取り口に運ぼうとしてこぼしていたノアが、話が聞こえたのか、ハッとして私に言うのだ。

「ああ、わかっている」
『だんなさんでなく、おぼっちゅんが、かんりちゅになるんで、ござんちゅか?』

まだ小さなお坊ちゃんが? とノアよりも小さな身体で口にするモモンガに、ノアは「ちぃちゃくないのよ」と反論していたが、どちらも小さい事に変わりない。

「焔神殿の管理者はノアより一つ上の子供だ。ここの管理者がノアであっても構わないのではないか?」
『それは、そうでござんちゅが、かんりちゅは、ちゅんじゅうの、ちゅからを、ちゅかえるようになる、でござんちゅ』

珍獣……いや、神獣の力を幼いノアに使いこなせるのか、と言いたいのだろう。

「もちろん暴走などせぬよう、私が出来るだけフォローする。しかし、息子の魔力コントロールはそこらの大人よりも緻密チミツだ。そうそう暴走する事などない」
『そうでござんちゅか! おぼっちゅんは、てんさい、でござんちゅね!』

毛玉が風に吹かれて転がるように、モモンガがノアの前に移動し、じっと顔を眺める。

「まほお、おかぁさま、おちえてくれたのよ!」
『おかあさま……、おぼっちゅんの、おかあさまならば、さぞちゅばらちゅうかた、なんでちゅうね!』
「おかぁさま、やさちぃ! わたち、おかぁさま、だぁいしゅき!」

そうだろう。ベルは母親としても、妻としても素晴らしい女性からな。……駄目だ。ベルの話を聞くと、会いたくなってくる。早く彼女の元に帰らねば……。

『わかったでござんちゅ! おぼっちゅんに、かんりちゅをおまかせちゅる……、といいたいところでちゅが、じつは……』

モモンガが語りだしたのは、この神殿の特殊な構造だった。



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イザベル視点


「はぁ……、やっとお昼寝してくれましたわ」

テディを抱っこして、ぷすぷす眠るぺーちゃんを眺めながら、ご機嫌ななめの赤ちゃんを宥めるのがこんなに大変だとは……と、溜め息を吐く。
ノアに置いていかれ、泣きじゃくっていたぺーちゃんを、うちの天才犬ドーベルマン二匹と、最近飼い始めた子猫、マディソンたちにも手伝ってもらって、宥めすかし、やっとお昼寝してくれたところなのだ。

そういえば、ぺーちゃんもノアも、あまり泣きじゃくる事はありませんものね。

「ぺーちゃん様が、ここまで泣きじゃくったのは初めての事です。余程ノア様がお好きなのでしょう」

誘拐されたぺーちゃんを、ずっと守って家まで連れてきたのはノアだった。それはぺーちゃんもノアが大好きになるはずだ。

「そうですわね。ノアは今頃、冒険を楽しんでいるかしら……」



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いつも【継母の心得】をお読みいただき、ありがとうございます。

皆様の応援のお陰で、ここまで続ける事が出来ております。

2週間程更新をお休みさせていただき、久々の継母です。
大変お待たせいたしました!
楽しみにしてくださっている皆様、本日より、毎日更新を再開いたします。

今後ともよろしくお願いいたします。

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