継母の心得

トール

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第二部 第3章

420.やる気のノア

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「おかぁさま、わたち、アオとちんでん、いってきましゅ!」

背中にはリュック、靴はスニーカー、腰には小さなタンブラーをぶら下げたノアは、突然そんな事を言って、わたくしに手を振るのだ。

「ちょ!? ノア、ちょっとお待ちなさい。神殿って、教会に行くんですの!?」
「にょあ、ちょーきゃ? ぺぇちゃ、みょ!」

抱っこしていたぺーちゃんが、腕の中でうごうごし始めたので、床に降ろすと、よちよちとノアに手を伸ばしながら歩き出す。今日はヒヨコのロンパースを着ているから、フリフリおしりが可愛らしい。

「ぺーちゃん、きょーかい、ちがうのよ。ちんでん」
「にゃ? ちぃ、じぇ?」
「しょうよ。あにょ……あのね、みじゅと、かじぇの、ちんでん!」

何ですって!?

「ノア、なんで急に、神殿に行こうと思い立ったんですの?」

慌てて止めに入り、膝をついて息子と目を合わせると、両手を包むように握り込んで、呼吸を整え聞いたのだ。

「わたちも、ちゅよくなるの!」
「強く……?」
「にょあ、ちゅっ、ぉい!」

ぺーちゃん、今のはわかりましたわ。そうね、ノアは強いですわよね。

「わたち、もーっと、ちゅよくなる! あかいとりさん、おちえてくれたの。ちんでんいくと、ちゅよくなれる!」

むんっと気合いを入れるように、拳を高く上げ、天井を見るノアに、焔神殿の珍獣を思い出す。

「もしかして、さっきまでオウム……いえ、あかいとりさんとお話ししておりましたの?」
「はい! アスでんかと、アカと、アオと、あかいとりさんと、わたちよ」
「あらあら、たくさんのお友達と通信しておりましたのね」

楽しそうでいいのだけど、一人と妖精たちで未知の場所に行こうとするのは、見過ごせませんわよ。

「ノア、強くなりたいって気持ちは、お母様、とっても素晴らしい事だと思いますわ」
「はい!」
「けれど、子供と妖精だけで神殿に行くのは、とっても心配ですわ」
「ちんぱい……?」
「ちぃ、にゃい!」

首を傾げるノアに、出来るだけ優しい声で、わかりやすいように語りかける。

「ノアはお外に遊びに行く時、妖精とノアだけで遊びに行くかしら?」
「いかないの。おかぁさまと、カミラと、みりゃんだと、あとね、ぺーちゃんと、アオとチロ、みーんな、いっちょ!」
「そうね。皆でお出掛けしますわよね。それはどうしてかしら?」
「どちて……? あ、たのちぃから!」

ノアはう~ん、と考えて、嬉しそうに答える。その可愛らしさは天使級……いや、天使そのものだ。

「大勢いると、楽しいですわね。他にはあるかしら?」
「ほか……、あのね、わたち、できないこと、たくさんありゅの。だから、カミラに、たしゅけてもらってる!」
「だったらノア、わたくしが、アオとノアだけで神殿に行くと言った時、とっても心配だと思ったのは何故なのか、お母様の気持ちがわかったのではなくて?」

ノアの目を見つめると、ノアはハッとするようにわたくしの目を見返す。

「おかぁさま、ちんぱい、ごめんなさい……」
「どうしてごめんなさいをするのかわかって、きちんとごめんなさいが出来ているのだから、とっても偉い子よ」

よく出来ました! と思いっきり抱きしめて、褒めていると、「きゃー」と喜ぶノアに、思わず頬擦りをしていると、そこへ……

「ノア、私が共に行こう」
「あ、おとぅさま」

え、テオ様? 今なんて仰ったの……?

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