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第二部 第3章
402.皇城のパーティー1 〜 テオバルド視点 〜
しおりを挟むテオバルド視点
義父と義弟と共に皇城へやって来ると、会場にはすでに多くの貴族が揃っていた。
「随分大規模なパーティーだね……」
義父上は緊張した面持ちで会場を見渡すと、喉を鳴らす。あまりパーティーに出席する人ではないからか、慣れていないのだろう。同じ慣れていないオリヴァー殿の方がまだ、リラックスしている印象を受ける。
「お義兄様、お姉様から、会場に入ったらお義兄様と離れないよう言われていますので、よろしくお願いします」
……どうやらオリヴァー殿もリラックスには程遠いようだ。ベルはほとんどパーティーに出席していなかったにも関わらず、最初から実に堂々としていたから何とも思わなかったが、今思うと、彼女のメンタルの強さは並大抵ではないようだ。
「僕はお姉様と違って、華やかな場は苦手です……」
ベルもどちらかというと、華やかな場よりは、静かな場所を好むようだが、ベル自身が華やかだからな。彼女がそこに在るだけで、全てが華やぐように思える。
「私も苦手だよ……」
義父上とオリヴァー殿は、親子だけあって中身が似ているようだ。
「そんなに緊張する必要もない。この国の皇帝夫妻は、いつもと変わらぬ面子です」
料理好きで色んな意味で残念な皇帝と、好奇心旺盛なこちらもまた色んな意味で残念な皇后の二人だ。緊張する要素など皆無だろう。
「閣下、私はいつも皇帝陛下と皇后陛下の前で緊張しています……」
「僕も、胃が痛くなるほどです」
なぜあの二人を前に緊張出来るのかイマイチわからないが、仕方ない。
「普段のお二人であれば、なんの問題もありませんので、そのまま付いてきてください」
「よろしくお願いします」
「頼りにしています」
家族に頼りにされるのは、嬉しいものだな。
「氷の大公様だ……」
「なんて美しい……っ」
「一緒にいらっしゃるのは、シモンズ伯爵でしょうか?」
「クソッ、あれではシモンズに話しかけられないではないか」
「シモンズ伯爵家のご嫡男は確か、婚約者がいらっしゃらないのでしたな?」
「ウチの娘は年頃でして───」
遠巻きにこちらを見ている参加者たちは、私たちが聞こえていないとでも思っているのだろうか。先ほどから結構な声量で話している。中には、
「成金が……っ」
「ディバイン公爵家の威光を借りて威張り散らすとは、知れておりますな」
「どうせディバイン公爵家の支援で立て直したのだろう」
などと嫉妬する声まで聞こえてくる。
どこの家門だ……。その顔、覚えたぞ。
「公爵夫人はいらっしゃらないのね」
「妊娠中だという噂ですわ」
「あの悪女が妊娠ですって!?」
ベルのどこが悪女だと言うのか……っ。
まだそのような噂があるのだと思うと、憤りを感じ得ない。
「───今宵は朕の催しに集まってくれて、感謝する」
陛下の挨拶と共に、乾杯の音頭が取られると、皆楽しそうに各々好みの飲み物を飲み始める。あちこちから笑い声や話し声が聞こえ、一年前には絶対にあり得なかった光景が目の前に広がった。
これも、全て私の妻のお陰だな。
つい口の端が上がりそうになるのを我慢しながら、義父上とオリヴァー殿を見れば、彼らもジュースやワインを口にしていた。
「お父様、お義兄様、あちらに美味しそうな肉がありますよ!」
肉……?
「本当だね。我が家では見たことがない、大きな肉の塊だよ。オリヴァー」
「でも、あれは上級貴族や陛下しか手をつけてはダメそうですよ」
この会場に、手をつけてはダメな料理などないというのに、二人はヒソヒソと話しながら、羨ましそうに肉の塊とやらを見ている。その様子がベルと重なって見えて、吹き出しそうになった。
「お二人とも、お好きなものを食べると良い。ここに手を付けてはダメな料理などありませんよ」
「そ、そうなんですか?」
「あれを、僕たちが食べてもいいんですか!?」
そうか……、ベルの食事が質素だったという事は、この二人も当然そうなのだろう。
「それと、シモンズ伯爵家は上級貴族です」
「「え!?」」
何を驚く事があるのか。
古い歴史を持つシモンズ伯爵家が上級でなくて、何が上級と言うのだろうか。
全く……。
妻もその家族も、その謙虚さが好ましいものだ。
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いつも【継母の心得】をお読みいただき、ありがとうございます。
皆様の応援やコメントが日々の励みになっております。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
有り難くも、コミカライズの第二話も更新され、イフさんのイケメン具合に驚かれた方も少なくなかったのではないでしょうか。
わたくしも、なんてイケメン! と感動しました!
そして、今回はノベルの4巻の件でのお知らせです。
5/27出荷予定の【継母の心得4】は、書泉様では限定のSS付きの予約が開始されております。
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店頭には5/29頃に並ぶ予定です。電子書籍派の皆様は、少し待っていただく事になりますが、ぜひ、宜しくお願いいたします。
皆様、いつも本当にありがとうございます。
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