継母の心得

トール

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第二部 第3章

393.秘密の会合2

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「それではこれより、本日の議題である新素材の名称を決めていきたいと思います」

ウォルトの進行で始まった秘密の会合には、皇帝陛下、皇后陛下、ディバイン公爵、シモンズ伯爵と、この国のトップが揃い踏みで、ディバイン公爵夫人であるわたくしと、シモンズ伯爵家嫡男であるオリヴァーは圧倒され気味で、端の席に目立たないよう座っていた。

「お姉様、何で僕がこの会合に呼ばれたんですか!?」
「わたくしだって、何で自分がここにいるのかわからないのに、あなたが呼ばれた理由もわかるはずありませんわよ!?」

コソコソと話すわたくしたち姉弟の目の前で、次々候補が挙げられていく。

「やはり次々と変化していく素材だから、朕はフォックスやラクーンが良いと思うのだ。それか、シモンズ伯爵家で開発したのだから、シモンズの綴りを逆から読んで、スノミス、というのはどうだろうか」
「アタシは神秘的な素材だと思うから、アルカーナ……ゴージャスに、レース・アルカーナとかおすすめね」

皇帝陛下と皇后陛下は、なるほど、と思うような候補を挙げていく。するとテオ様が、

「この素材はベルとシモンズ伯爵家のオリヴァー殿が開発したのだから、ベルとシモンズで……ベルシモン、ベルンズ、ベリッシモなどが合うのではないだろうか」

わたくしの名前が入るのはさすがに恥ずかしいですわ。あら、最後のはイタリア語ですわね。

「私も閣下の意見に賛成です。イザベルとオリヴァーの名前を取って、イザヴァーやベルオとかどうでしょうか」

お父様はちょっと黙っていてくださいませ。

「父上はあまり名前のセンスがないから……」

オリヴァーは真っ赤になって俯いてしまう。かくいうわたくしも、自分の父のセンスを疑ってしまった。

イザヴァーとベルオはさすがに酷いですわよね……。

「お姉様はどんな名前を考えているのですか?」
「わたくし? そうねぇ……、最初の新素材がゼロで、ゴムがアン、プラスチックがドゥなんて、数字でも良いのかも、と思っておりますわ」
「なるほど……僕は、前にお姉様が言っていた、ポリカーボネイトやラテックス、ヴンダーの響きなんかが格好いいと思います」

皆がそれぞれ出した新素材の名称候補はお父様のもの以外、どれもおしゃれですわ。

「うぬ……、どれも捨てがたいのだ」
「そうね……グランニッシュ帝国の主産業を担っていく素材だから、覚えやすくて言いやすいものがいいんだけど」

それでしたら、やっぱり数字かしら。

「であれば、『ベリッシモ』だろう」
「そうね。アタシはテオ様に賛成よ!」

テオ様の言葉にすかさず賛成したレーテ様、ブレませんわね。

「奥様とシモンズ伯爵家の名を冠した名称ですね」
「僕もお義兄様のセンスに間違いはないと思うので、賛成です」
「私のベルオやイザヴァーはダメかい? 閣下と同じようなものだと思うのだけど」
「お父様、全然違いますよ」
「そ、そうかい?」

お父様、オリヴァーからはっきり言われて、悲しいからって、わたくしを捨てられた子犬のような目で見るのはやめてくださいまし。フォローできませんわ。

「アタシの案のレース・アルカーナは、イザベル様の開発した化粧品のブランド名にするのはどう?」
「あら、良いですわね。上品で神秘的な名前ですし、今後は教会と共同で、と考えておりましたので、丁度良いですわ!」
「ん……? イザベル様、聞いてもいいかしら?」

あら? 皇后様のお顔が引きつっておりますわ。

「構いませんわ」
「ねぇ、どうして教会と共同で化粧品開発をする気でいるの……?」
「いやですわ、皇后様。もちろん、わたくしが作り出した化粧水の成分に、聖水を使用しているからですのよ」
「えぇ!?」

とまぁ、皇后様がひっくり返るハプニングもありましたけれど、新素材の名前は、『ベリッシモ』に決定しましたのよ。



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いつも【継母の心得】をお読みいただきまして、ありがとうございます。

皆様のお陰でここまで続ける事ができております!
いつも素敵なコメントや応援、本当に支えになり、感謝の気持ちでいっぱいです。

今回は、5月下旬に刊行予定の【継母の心得4】の書影を公開いたします。

とても素敵なイラストをノズ様が描いてくださいました。
ノズ様、いつも素敵すぎて昇天しそうなイラストをありがとうございます。
美麗なテオ様とイザベル様、可愛いノア君、最高です!

そして、ついにアカとアオがカラーで表紙デビューいたしました!



アカ: アカ、カワイー!

アオ: アオ、ウシロスガタ……

正妖精: ボク一人、表紙デビュー出来てない! 何で!?

正妖精のびっくりするほど麗しい姿は、人物紹介で見れます!

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