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第二部 第2章
374.にゃんこ語
しおりを挟む枢機卿の子供は娘ではなく、実は息子だった!?
皇后様の衝撃的な話に愕然とする。
辺境伯が自身の孫を、勝手に養子に出す事も許せませんが、性別問題まで!?
「辺境伯が、性別を間違ったという事ですの?」
「間違ったというより、わざと間違った性別を枢機卿に教えたのよ」
まさか、辺境伯は枢機卿が子供を見つけられないよう、仕向けたという事ですの!?
「探している性別が違えば、絶対見つからないもの。それが辺境伯の狙いだったんだと思うわ」
「そんな……」
一年と少し前に子供が産まれて、養子に出した……。もしそれが男の子だったなら……
その時、一歳と数ヶ月のぺーちゃんが、わたくしの目に留まったのだ。
「大司教、あの、失礼ですが、ぺーちゃんはちょうど同じくらいの年頃だと思いますの。まさか……」
そんな偶然はないだろうと思いながらも、気になってしまい、失礼な事とはわかっていたがつい、大司教に聞いてしまった。
「ディバイン公爵夫人、私もこの子に出会った時を思い出してみたのですがな……少し、時期がズレているのではないかと思うのです。それに、この子には両親の記憶が……いや、とにかく、フェリクスではないと、私は考えますなぁ」
「にゃ……?」
そうですわよね。そんなはずありませんわ。だってもしぺーちゃんだったなら、枢機卿は自分の息子を政敵として誘拐を指示したという事になりますもの。それではあまりにも悲惨ですわよ。
「大司教、おかしな事を言ってしまい、申し訳ありませんわ」
「いいえ。同じくらいの年頃のようですからな。そのように思われるのも無理はありません」
大司教は気にすることはないと許してくださり、ぺーちゃんの背中を慣れた手付きでぽんぽんとしながら、ルネさんに目を向けた。
「さて、ルネさんと言ったかね……」
「はい」
「あなたの目的は、お姉さんの氷の棺を維持する為に、氷の魔石に魔力を補充する事と、ウィーヌスの子供を探す事で間違いないかの?」
大司教が目的を確認し、彼女の人となりを見ているのか、一挙手一投足も見逃さないよう、じっと様子を伺っている。
「間違いありません。ウィーヌス様は姉を生き返らせたいと考えているようですが、私は……死んだ人間は生き返る事はないと、理解しています」
「であれば何故、氷の棺を維持したいのかな?」
「それは……」
大司教の問いに彼女の瞳が揺れる。
「……ウィーヌス様の御心を、壊さぬ為です」
大事なお姉さんを埋葬せず、そんなにまで枢機卿の為に尽くすのはどうしてなのか……、ルネさんの行動を見ていればわかるような気がした。
「では、ウィーヌスはこの神殿内で何をしようとしているのか、知っておりますかな?」
「ウィーヌス様は、神殿の宝物庫にあるという、鍵を探しています」
正妖精が報せてくれた通り、鍵を探していますのね。まぁ、アカがイーニアス殿下のおもちゃ箱にポイしてしまったのだけど……。でも、その鍵は一体何の鍵なのかしら?
「鍵を手に入れ、聖女を連れて、何をしようというのか」
「……」
「ルネさん、もしウィーヌスが間違っている事をしようとしているのであれば、止めなければならない」
ルネさんは黙って俯いてしまい、それ以上は答えようとしない。
「ちゃ、ぅ~にゃ!」
その時、ぺーちゃんがルネさんに向かって猫のような声を出したのだ。
「おやおや、フェリクス。ルネさんに白状しろと迫っては、ルネさんも困ってしまいますぞ」
大司教はぺーちゃんの言っている事がわかる、スーパー能力をお持ちなのだったわ。にしても、ぺーちゃんったら、そんな事言っていましたの!?
「っ……お姉様……」
ぺーちゃんのにゃんこ語を聞いたルネさんの様子が、突然変わった。
「ぺぇちゃ、ぅにゃ、にゃい!」
「ぺーちゃんは、お姉様ではない、と言っておりますな」
大司教の能力って、猫の言葉もわかったりするのかしら?
「しかし、どうして急にフェリクスを見て、お姉さんの事を思い出したのですかな?」
「私の姉も……、偶に、にゃーにゃー言っていたからです……」
え、ルネさんのお姉様も、にゃんこ語を!?
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