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第二部 第2章
363.フロちゃんが危ない!
しおりを挟むテオ様曰く、オリヴァーもドニーズさんも教会内にいるらしい。閉じ込められているわけではないようで、今のところ危険はないようだ。ただ、ドニーズさんに関しては、命を狙われているらしいので、油断出来ないと……
「命を狙われている!? ドニーズさんはこの教会にいますのよね!? 暗殺者が、教会内を跋扈しているという事ですの!?」
そんな危険なところに子供たちがいるのなら、今すぐ移動しなければ……っ
「ベル、だから君や子供たちは皇宮に戻るべきだ」
わたくしにそう言って、皇后様を見るテオ様の足元で、イーニアス殿下が「あ」と声を上げた。
「たまねぎのしんでんは、かごがないと、わながさどうする」
「しゅっごい、きけんなわなね!」
「そうだ。しんでしまう、わなだ」
「ぅにゃ?」
子供たちが聞き捨てならない事を口にするので、神殿へ行った事のある皇后様に目を向ける。
「そういえば、妖精がそんな事を言っていたわ。それでアタシたち、特別に期間限定の加護を焔神からいただいたのよ」
「その加護は、神からのものでしたら大丈夫なのですわよね!?」
「確かノアちゃんは、風と水の神の加護を持っているんでしょ。それでも焔神が期間限定で加護を与えたから、あの神殿は焔神の加護がある者だけ、罠が発動しないのだと思うわ」
『そう! あれ、ひのしんでん!』
『ほむらのかみの、かご、ひっす!!』
な、なんですって!?
「フロちゃんは、焔神の加護は持っておりませんわよ!?」
聖女だから、加護があっても光の神のものですわ!
「フローレンスが、あぶない」
「フロちゃん、あぶにゃいの!」
「にゃい!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ゴム製品のおもちゃ、帝都支店で販売開始します】
~ おもちゃの宝箱帝都支店 ~
帝都支店長視点
本店で売り切れ続出するほど大人気の、シモンズ伯爵家が独自開発したという『ゴム』という素材を使った、風船やゴム製拳大動物シリーズ、ボールなどが、おもちゃの宝箱、帝都支店でも明日から販売を開始する。
ゴム製品は柔らかく、動物シリーズはお風呂に入れたり、投げてボールにしたりも出来る上、インテリアにしてもおしゃれだ。触り心地もいい。
風船は息を入れて膨らませるとボールのようになるが、軽くてふわふわしていて、なんとも不思議なおもちゃだ。これがゴム製品の中でも一番人気で、本店ではあっという間に売り切れたらしい。
ボールは、遊び方のサンプルとして、名物巨大滑り台の着地場をボールプールにしてみたが、これがふわふわで、子供たちが喜ぶ顔が想像できる。
「風船は一個売りだから、会計横に置いた方がわかりやすいわよね」
「店長、注目商品ですし、店舗入口のコーナーにも置きますか?」
「うーん……動物シリーズは置いてもいいけど、風船は入口のコーナーにはちょっとねぇ……あ、注目商品のコーナーを一角に作って、風船を膨らませたものをサンプルに置いて、ポップを付けたらどうかしら?」
「それ、いいっスね! 膨らんでないものは、どうやって遊ぶかもわからないですし、遊び方を描いたポップを貼り付けとくっス!」
明日の発売日に向けて、閉店後にバタバタとディスプレイを変えていく。皆生き生きと働いていて、楽しそうだ。
やっぱり、自分で考えたものを店に反映出来るから、やる気が違うのよね。もう、前の職場には戻れないわ。
「はぁ……この動物シリーズ、ぷにぷに感がたまらん……っ」
変態のようなセリフを吐きながら、動物シリーズの犬をぷにぷに握っている店員は女性で、後ろでドン引きしている男性店員を全く気にしていない猛者だ。
「こーら、サボってないで入口に並べてちょうだい」
「はーい! 店長、これ社割で買えますか? 欲しいです!」
「ゴム製品は在庫があまり確保できていないから、売れ行き次第よ」
「やっぱりかぁ~。シモンズ伯爵家、ゴム製品沢山作ってくれないかなぁ」
「はいはい。お喋りしていないで、仕事しましょう」
「はーい」
この子の気持ちはよくわかる。私も動物シリーズが欲しいわ。あの感触は、絶対ストレス発散になるもの。
翌日、
「店長! 風船が……っ、風船が足りません!」
「ボールと動物シリーズも残りわずかです!!」
「他のおもちゃもついで買いされ、少なくなっています!」
一日で完売するとは、しかも他のおもちゃまで……、さすがに予想を上回ってしまった。
「足りない! 商品が全く足りない! 今すぐベル商会に連絡してぇ!」
これが『ゴム製品おもちゃショック』の始まりである。しかし数ヶ月後、今度は伝説となる『オムツショック事件』が起こるとは、この時は誰も、想像すらしていなかったのだ。
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