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第二部 第2章
353.小言は愛情 〜 イザベル視点/ドニーズ視点 〜
しおりを挟む子供たちは暫く内緒話を続け、わたくしは蚊帳の外で、マディソンやカミラと苦笑いを漏らしていた。
「あの子たち、何かおかしな事を考えていないといいのだけれど……」
どうにも心配ですわ。
「奥様、ノア様は転移の件でとても反省いたしました。奥様にも坊ちゃま……いえ、旦那様にも黙って行動を起こすような真似はされないと思います」
マディソンの言う通りですわ。ノアが黙って転移した時も、わたくしの為でしたし、帰ってきてからはそれはもう、かわいそうなくらい、猛省しておりましたもの。そのノアが、危険な事をするとは思えませんわ。ただ……
「ノアもイーニアス殿下も、正義感が強いのと、友達思いで、それだけが心配ですのよね……」
「確かに、ノア様もイーニアス殿下も、強い正義感と優しさ、それに伴う力がございますね」
「そうですの。力を持っているから、余計心配で……」
子供たちは、真剣な顔をして話し合っている。そんな顔を見ると、どうしても不安になるものだ。
「自由にさせてあげたいとは思うのよ。だけど、どうしても心配が勝ってしまいますの」
「それが親心というものでございますよ」
親心……
「わたくし、最近うるさく言い過ぎてないかしら……」
「奥様がうるさいという事になれば、私はウォルトからどれだけうるさいと思われている事でしょう」
戯けたように言うマディソンに、呆気にとられる。
「まぁ、マディソンはウォルトに、そんなにも苦言を呈しておりますの?」
「もちろんでございます。毎日、毎日、グチグチと言っては煙たがられておりますよ」
「そんな風には見えませんわ」
ウォルトは執事長として、とても優秀で、常にビシッとしていますのに……?
「我が子可愛さに、つい、目についた事を言ってしまうのです」
「文句のつけどころがない息子さんだと思いますけれど」
「奥様、人間には外面というものがございます。私の夫とは違い、ウォルトは外面だけはいいものですから」
「ま、まぁ、そうでしたの?」
「はい。そういった面でも小言は絶えませんが……ゴホンッ、とにかく、根本にあるのは愛情です」
愛情……。確かにわたくし、愛情過多だと言われそうなほど、ノアを溺愛しておりますわ!
「ノア様は、奥様の深い愛情を理解しておりますよ。ですから、うるさく言い過ぎている、などと仰らず、堂々と愛情を注いであげてくださいませ」
「マディソン……」
「もし、行き過ぎだという事があれば、私どもがお止めします。安心なさってください」
「そうですよ。奥様! カミラがいつでもフォローいたします!」
お任せください! と胸を張るカミラに、マディソンは生温い目を向けながら頷いていた。
「マディソンもカミラも、頼りにしておりますわ」
わたくしは幸せ者ね。可愛い息子も、素敵な旦那様も、こんなに頼りになる仲間もそばにいてくれるのだもの。
気持ちが和み、口の端が緩む。
「おかぁさま」
内緒話が終わったのか、少し興奮しているノアがやって来てわたくしを見上げたのだ。
ソファから下り、膝をついてノアと視線を合わせると……
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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ドニーズ視点
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