継母の心得

トール

文字の大きさ
上 下
186 / 387
第二部 第2章

335.約束

しおりを挟む


「チロ、赤い鳥さんのお話は信じても大丈夫かしら?」
『なっ!? わしは尊き存在なのだぞ! そのわしの言葉を信じられんのか!?』

色々オウムに質問したのだけれど、どうしても胡散臭さが払拭出来なかったので、最後にチロに、オウムは信じてもいいのか聞くと、『ダイジョウブナノ~』と自信満々に答えてくれた。

『ダメナノ、セイカクダケナノ~』

なるほど、と信じる事にしたわけだ。

皇后様と皇帝陛下はまだ言い足りないようでしたけれど、イーニアス殿下に悪影響は無いという事と、「チロちゃんがそう言うなら」と、これ以上は何も言いませんでしたわ。オウムはギャッギャッと鳴いていましたけれど。

「イーニアス殿下、ノア、ぺーちゃん、きりが良い所でトランプはお終いにして、こちらにいらしてくださいませ」

子供たちは、わたくしの言葉に「はーい」と可愛いお返事をして、トランプを片付けると、嬉しそうにやって来た。お片付けが出来る良い子たちである。

今はイーニアス殿下がぺーちゃんを抱っこしておりますのね。

「イーニアス殿下、ありがとう存じますわ」
「うむ。ぺーちゃんは、とってもおとなしくて、だっこしやすい」
「ぺぇちゃ、ぅ、こ!」

イーニアス殿下に褒めてもらえた事が嬉しかったのだろう。ぺーちゃんがきゃらきゃらとわらって、片手を上げる。 

「しょうよ。ぺーちゃんいいこね」
「にゃ!」

もうっ、この子たちの可愛さ、世界一ですわ!

「あの、イザベルふじん、あかいとりさんの、ごかいは、とけただろうか……」

イーニアス殿下が心配そうに、小さな声で聞いてきたので「大丈夫ですわ。皇后様も皇帝陛下も、お怒りを収めてくださいました」と安心させる。殿下は小さく息を吐いて、ご両親の元へ歩いていった。皇后様たちはそんな顔色を窺う殿下の態度にショックを受けたのか、

「何よりも大切なイーニアスに、勝手に手を出されて頭に血が上ってしまったの。冷静さを失ってしまってごめんなさい」

と謝罪して、抱きしめておりましたわ。冷静になってくださって良かった。

「では、子供たちもこちらへ集まったので、管理者になった事の注意点をお伝えいたしますわ」

ノアは、管理者になりたいと張り切っていた。わたくしは反対だけど、ノアが望む事を止められはしないのだろう、と覚悟を決め、注意点を聞いてもらう事にしたのだ。

「ディバイン公爵夫人、注意点とは何なのだ?」
「先程赤い鳥さんから聞いた話から、気をつけなくてはいけない、いくつかの事項が浮上しましたの」
「や、やはり危険な事が!?」

皇帝陛下がイーニアス殿下を抱きしめて震えている。

「赤い鳥さんは、危険な事は無いと仰っていましたが、魔力量が増えるという事は、魔法の威力も上がるということ。イーニアス殿下の魔法は火の攻撃魔法がメインです。その威力が上がるという事は……」

皇后様は殿下の5歳の誕生パーティーの一幕を思い出したのか、顔色を変え真剣なお顔でわたくしを見た。

「まずやるべき事は、自身の力を知る事ですわ。テオ様と訓練されておりますから、そこはテオ様にお任せいたします」
「ああ。任せておけ」
「それと、月に一度の神殿訪問ですが、イーニアス殿下がある程度大きくなるまでは、保護者を伴って行かれるべきかと思います」

いくら妖精やオウムがそばにいるとはいえ、人外である彼らと人間の感覚は違うものだ。危険もあるかもしれない。

「もちろんそのつもりよ」

力強く頷く皇后様の後ろで、殿下を抱きしめたままの皇帝陛下も、ぶんぶんと頷く。

「次は絶対朕も行くのだ!」
「ちちうえ、いっしょにいくの、たのしみです」
「イーニアスぅ!」

フフッ、仲の良い親子ですこと。

「それとノア」
「はい!」

ノアは自分の名前を呼ばれると、張り切ってお返事する。

「あなたはまだ管理者ではないけれど……」
「かんりちゃ、なるのよ!」
「……お母様は、ノアが大変な思いをするのではないかと、心配ですわ」
「ちんぱい、ないの。わたち、せかい、すくうヒーローよ!」

可愛すぎるヒーローは、えっへんと胸を張り、意思を曲げようとはしない。

「……では、お母様とお約束してほしいのだけど」
「おやくしょく?」
「そう。お母様やお父様に相談もなく、神殿に行ったり、管理者になったりしないこと。何か行動を起こす時は必ず、わたくしやお父様に相談するのよ」
「はい! わたち、しょーだん、おやくしょくよ!」

神殿に行く時は、絶対テオ様について行ってもらいましょう。変な珍獣だったら、テオ様が何とかしてくれるでしょうし。


しおりを挟む
感想 11,225

あなたにおすすめの小説

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… 6月8日、HOTランキング1位にランクインしました。たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

私には何もありませんよ? 影の薄い末っ子王女は王の遺言書に名前が無い。何もかも失った私は―――

西東友一
恋愛
「遺言書を読み上げます」  宰相リチャードがラファエル王の遺言書を手に持つと、12人の兄姉がピリついた。  遺言書の内容を聞くと、  ある兄姉は周りに優越を見せつけるように大声で喜んだり、鼻で笑ったり・・・  ある兄姉ははしたなく爪を噛んだり、ハンカチを噛んだり・・・・・・ ―――でも、みなさん・・・・・・いいじゃないですか。お父様から贈り物があって。  私には何もありませんよ?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。