継母の心得

トール

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第二部 第2章

330.地下迷宮探検11 〜 イザベル視点/ノア視点 〜

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イザベル視点


いきなり弟のオリヴァーの話をふってきましたけれど、もしかしてオリヴァーと知り合いなのかしら? でも、オリヴァーから枢機卿猊下とお知り合いになったと聞いた事はありませんわ……。

「フフッ、困惑させてしまいましたね。実はディバイン公爵夫人の弟君とは、先日、劇場の前でご挨拶させていただいたのです」
「まぁっ、劇場で?」
「友人と観劇する予定だったのですが、友人の予定が急遽変わってしまいまして。そこにチケットを購入出来なかったあなたの弟君の姿をお見掛けしましたもので、チケットをお譲りしようとお声がけをいたしました」

オリヴァーったら、そんな事一言も……って、当たり前ですわ。わたくし、今まで領地にいたのですもの。手紙もそんなに早くは届きませんわよね。

「そうでしたの。弟がお世話になったようで。ありがとう存じますわ」
「いえ、それが断られてしまいまして」

困ったように眉尻を下げて笑う枢機卿猊下に、オリヴァーったら、まさか枢機卿猊下だと気付いていなかった? と不安に襲われる。

「もしかして、弟が何か失礼をしましたでしょうか?」
「まさか! とても優しい弟君ですね。使用人とも一緒に観たいから、と仰っていましたよ」

わざとらしいほどの笑顔を向ける枢機卿猊下に、不穏なものを感じる。

わたくし、先入観なく人を見るようにしているつもりですけれど……ぺーちゃんの政敵だと思うからこんなにも胸がざわつくのかしら?

「そうでしたの……」
「ですがその時に、ディバイン公爵夫人は領地にいらっしゃるというようなお話をされていたので、こちらでお会いして驚きました」

相手から領地という言葉が飛び出して、身体が跳ねそうになる。

「お、オホホ……、先日帝都に戻って来たばかりですのよ。弟はアカデミーに通っておりますので忙しいようで、連絡に行き違いがあったのかしら」
「……そうでしたか」

皇后様の転移で戻ってきました、とは言えませんものね。
にしても、枢機卿猊下の浮かべている笑みが、何だか意味ありげに見えてしまいますわ。

「ああ……そういえば、弟君と一緒にいらっしゃった小さな姫君は、夫人ともお知り合いでしょうか?」
「え?」

オリヴァーと一緒にいる小さな女の子って、フロちゃんの事かしら?

「とても可愛らしい子ですね」
「え、ええ……」

フロちゃんが聖女だとは気付かれていないでしょうけど……本当に気付いておりませんわよね?

「……本日はお話できて良かったです。私はそろそろ失礼させていただきますね」

枢機卿猊下はそう言って軽く会釈をし、去っていった。
その後ろ姿を眺めながら、心がざわつくような何かが燻っている気がして、わたくしは眉をしかめたのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ノア視点


「───さいご、またピカァちて、そちたらみんな、いたのよ!」
「ノア……お母様、どこからツッコめば良いかわかりませんわ」

ぼうけんがおわって、みんなでおうち、かえってきたの。
すぐにね、おかぁさまに、おはなち、ち……して、あげたのよ! おかぁさま、こまったおかおちてわたち、みてるの。どぉちてかしら?

「でも、無事で良かったですわ……っ」

おかぁさまのぎゅう、だいしゅきよ!

「おかぁさま、たのちかった!」
「フフッ、良かったわね」
『アオもたのしかったー!!』
「アタシは心配しすぎて倒れるかと思ったわよ!!」

アオがわたちと、おかぁさまのあいだにはいって、うれちしょおにちてるの。アオ、かわいいのよ。でも、こーごーさま、ぷんぷんちて、アスでんか、しゅんってちてる。

さっきね、あかいとりさんと、しょーだんせずに、けーやくちたって、めっ、されたの。

「神殿の管理者って何なのよ!? 赤い鳥!? ウチの子の優しさにつけ込んで悪魔みたいに契約しやがって! ひっ捕まえて焼鳥にしてやるわ!」

こーごーさま、あかいとりさん、いいちとよ?

「皇后様、落ち着いてくださいまし……。ところで、アカとアオはずいぶん、その……ギラギラさせてますわね。キノコ帽子に付けている、ネックレスや王冠はなんですの? 引くほど大きなブルーダイヤが付いておりますわよ……呪われそうですわ」
『れーじょーごっこ!! ぱーてぃーいく!!』
「どういう遊びですの……」

アオ、ほーもちゅっこから、たくさん、ギラギラ、とってきたのね。

おかぁさま、アオみてふぅって、いきはいて、わたちのあたまなでなでしてくれたのよ。

『アスげんきない。アカ、パーティーいかない。アスといる……』
「アカ、わたしはだいじょうぶなのだ。アオと、あそんでくるといい……」
『アス、げんきだして。アス、わるくない!』
「アカ……わたしが、なんのそうだんもなく、かってなことをしたのが、わるいのだ。わたしは、わるいこなのだ」
『アス……』

アスでんか、なきそうよ。

「アスでんか、わたちも、わるいこ……」

たのちかったけど、わたちも、わるいことちたの。

「ノア……」
「あーっ、もう! 二人とも、反省しているならそれでいいわ。次は同じ事をしないように、ちゃんとアタシやイザベル……いえ、テオ様に相談するように!」
「皇后様!? わたくしには相談してはダメなのですか!?」
「ははうえ、おこって、いないのですか?」
「元々あなたたちに怒っていないもの。イーニアスもノアちゃんも、ちゃんと反省していい子よ! それに、世界滅亡と聞いて行動できる優しい息子を、アタシは誇りに思うわ」
「ははうえ……っ」

こーごーさま、わたちとアスでんか、ぎゅうちてくれたの!
アスでんか、げんきなったのよ!

「あのね、あかいとりさん、ひがちの、ち…しんでん、いきなさいって。ちんじゅういるの!」
「喋る赤い鳥さん……オウムかしら? 東の神殿に珍獣?? 珍しい動物が神殿にいますのね」
「はい! わたち、ひがしのしんでん、いきたいのよ!」
「まぁっ、ノアは珍獣ハンターね!」

ちんじゅう、はんたぁ! かっこいいなまえね。

「はい! わたち、ちんじゅうはんたぁ!!」
「わたしも、ちんじゅうハンターだ!」
『アオも!! アオもちんじゅーハンターする!!』
『アカもー!』
「うむ。アカもいっしょだ」
「もちろん、アオもいっちょ!」
『ノアだいすきー!!』
「わたちも、アオだいすきよ」

おかぁさま、わたちね、かいぞくのおおさまで、こおしゃくで、ちんじゅうはんたぁになる!!

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