継母の心得

トール

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第二部 第2章

327.地下迷宮探検8 〜 ノア視点/イザベル視点 〜

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ノア視点


【───先程も言ったが、我ら神獣の神殿は、この世界の東西南北、そして中央に存在する。世界を安定させるために、創造神様が創られ、人間がその魔力で維持してきたのだ】

まりょくで、いじ……いじって、なぁに?

「ノア、『いじ』とは、そのままのじょうたいを、ずっと、つづけることなのだ」
「アスでんか、しゅごい!」
「クリシュナせんせいの、じしょのおかげだ」
「まほーのじちょね!」
「うむ。まほうの、じしょだな」

アスでんか、むじゅかちぃこと、たくさんしってるの。しゅっごいのよ!

【こら小僧ども、わしの話を聞かんか!】

おこられたの……。

【ゴホンッ、しかし、その魔力を注いでくれていた前代が亡くなってから随分経つ。二千年だったか……? もうその辺は忘れてしまったが、とにかく、わしの力で保たせているものの、わしの力は魔力とは別物。なかなか難しくてな。もって、後数百年。要は、数百年後に世界が滅ぶ】
「せかいが、ほろぶ……」
「しょんな……、おかぁさま、ない……?」

わたちたち、たいへん! って、おかおみあわせたのよ。

【だからこそ、各神殿に管理者が必要だ。イーニアスよ、ひと月に一度ほどでよい。おぬしの魔力をこの石に注いでくれれば、この神殿は維持出来る。そして小僧、おぬしは風と水の気が強い。風と水の神殿の管理者となれる素質がある】

かじぇ、みず……でぃばいん、こうちゃくけ、かじぇとみずのかみさまの、かご、あるって、おとぅさまいってたのよ!

【だからこそ、お前たちに世界の命運がかかっておるのだ!】

わたちたち、しぇかいの、めーうん……

「わたしたちが、やらねば、せかいがほろぶ……」
【そうだ。おぬしの魔力があれば、神殿の修繕や石像兵の稼働、掃除なども出来る。それに、わしの代理人といっても、神から何かメッセージがあれば、イーニアスを通じて皆に伝えるだけだ。とはいえ、神からのメッセージなど、ここ数百年ないのでな。やる事は実質、魔力を注ぐ事だけだな】

あかいとりさん、はやくちで、おはなちしてる。ぶぁっはっはってわらってるの。おもちろいこと、あったのかちら?

「かみから、メッセージ?」

アスでんか、さっきの、かみさまのおこえ、おもいだちてるのよ。わたち、アスでんかみて、しょうね! ってうん、うんちたの。

「さっき、ひのかみさま、おこえちた!」
【なんじゃと!? そんなバカな……】
「ほむらのかみさまが、とくべつに、きょうだけ、みなにかごをくださると、いっていました」

あかいとりさんに、おちえてあげたら、ぎゃっぎゃっておどろいて、はねバタバタちたのよ。

【ならば、イーニアスの加護は、今日限りという事か!?】

しょんな……って、とりさん、おげんきなくなちゃった。

「あかいとりさん、わたしはもともと、ほむらのかみさまの、ごかごをいただいて、います」
【おおっ、であれば問題ない! 早くここに魔力を……っ】
「せかいを、すくえるのなら……」

アスでんか、しぇかい、おたすけする、ヒーロー、なるのね!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



イザベル視点


司書に用意してもらった植物図鑑は、内容が公爵家にあるものと似通っており、収穫があったとは言い難いものだった。

公爵家のご先祖に植物学者がいらっしゃったと聞きましたし、植物図鑑はうちのと図書館にあるものの方が充実しているみたいですわ。

「……次は建築の歴史と、周辺諸国についても知りたいですわね」

植物図鑑を閉じて立ち上がり、個室を出る。右奥を見ると司書と目が合い、すぐにやって来てくれたので、建築関係と周辺諸国の詳しい状況がわかる本をお願いし、植物図鑑を返却する。

「少々お待ちください」と言い残し、司書が本を探しに行った直後だ。隣の個室の扉が開き、中から空色の髪をした美しい女性が出てきたではないか。
相手もこちらに気付きお互い軽く会釈をする。

女性なら、おそらくわたくしの方が身分は上だけれど、皇宮図書館という場所からして、他国の王族という可能性も捨てきれませんわ。つまり、わたくしからお声をおかけすると失礼にあたる場合も……ですが、もしわたくしより身分が低ければ、この微妙な空気のまま、時間だけが過ぎていきますわよね。こういう時、写真があればこんな事は起こりませんのに……。

にしても、空色の髪ってどこかで……

「初めてお目にかかります。ディバイン公爵夫人。私はウィーヌス・ウラノ・ディオネと申します」

にこやかに話しかけてきたその人に、ぎょっとする。なぜなら、

「まぁっ、ディオネ辺境伯家の……いえ、その空色の御髪と、お名前がウィーヌス様といえば、枢機卿猊下ではございませんか!?」

教会の最高顧問でディオネ辺境伯家出身の御方。わたくしより身分の高い方でしたわ! 枢機卿の扱いは皇族と同等ですもの。

「失礼いたしました。わたくしはイザベル・ドーラ・ディバインと申します。お初にお目にかかれて光栄ですわ」
「フフッ、よく私が枢機卿だとおわかりになりましたね」

枢機卿猊下は意外だというように目を瞬かせた。

「ご高名は存じ上げておりますわ」

現在教皇が空位である教会では、実質この方が実権を握っている。

大司教と二分する権力をお持ちの方ですわ。

つまりこの方が、大司教とぺーちゃんの政敵ですのね。


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