178 / 393
第二部 第2章
327.地下迷宮探検8 〜 ノア視点/イザベル視点 〜
しおりを挟むノア視点
【───先程も言ったが、我ら神獣の神殿は、この世界の東西南北、そして中央に存在する。世界を安定させるために、創造神様が創られ、人間がその魔力で維持してきたのだ】
まりょくで、いじ……いじって、なぁに?
「ノア、『いじ』とは、そのままのじょうたいを、ずっと、つづけることなのだ」
「アスでんか、しゅごい!」
「クリシュナせんせいの、じしょのおかげだ」
「まほーのじちょね!」
「うむ。まほうの、じしょだな」
アスでんか、むじゅかちぃこと、たくさんしってるの。しゅっごいのよ!
【こら小僧ども、わしの話を聞かんか!】
おこられたの……。
【ゴホンッ、しかし、その魔力を注いでくれていた前代が亡くなってから随分経つ。二千年だったか……? もうその辺は忘れてしまったが、とにかく、わしの力で保たせているものの、わしの力は魔力とは別物。なかなか難しくてな。もって、後数百年。要は、数百年後に世界が滅ぶ】
「せかいが、ほろぶ……」
「しょんな……、おかぁさま、ない……?」
わたちたち、たいへん! って、おかおみあわせたのよ。
【だからこそ、各神殿に管理者が必要だ。イーニアスよ、ひと月に一度ほどでよい。おぬしの魔力をこの石に注いでくれれば、この神殿は維持出来る。そして小僧、おぬしは風と水の気が強い。風と水の神殿の管理者となれる素質がある】
かじぇ、みず……でぃばいん、こうちゃくけ、かじぇとみずのかみさまの、かご、あるって、おとぅさまいってたのよ!
【だからこそ、お前たちに世界の命運がかかっておるのだ!】
わたちたち、しぇかいの、めーうん……
「わたしたちが、やらねば、せかいがほろぶ……」
【そうだ。おぬしの魔力があれば、神殿の修繕や石像兵の稼働、掃除なども出来る。それに、わしの代理人といっても、神から何かメッセージがあれば、イーニアスを通じて皆に伝えるだけだ。とはいえ、神からのメッセージなど、ここ数百年ないのでな。やる事は実質、魔力を注ぐ事だけだな】
あかいとりさん、はやくちで、おはなちしてる。ぶぁっはっはってわらってるの。おもちろいこと、あったのかちら?
「かみから、メッセージ?」
アスでんか、さっきの、かみさまのおこえ、おもいだちてるのよ。わたち、アスでんかみて、しょうね! ってうん、うんちたの。
「さっき、ひのかみさま、おこえちた!」
【なんじゃと!? そんなバカな……】
「ほむらのかみさまが、とくべつに、きょうだけ、みなにかごをくださると、いっていました」
あかいとりさんに、おちえてあげたら、ぎゃっぎゃっておどろいて、はねバタバタちたのよ。
【ならば、イーニアスの加護は、今日限りという事か!?】
しょんな……って、とりさん、おげんきなくなちゃった。
「あかいとりさん、わたしはもともと、ほむらのかみさまの、ごかごをいただいて、います」
【おおっ、であれば問題ない! 早くここに魔力を……っ】
「せかいを、すくえるのなら……」
アスでんか、しぇかい、おたすけする、ヒーロー、なるのね!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
イザベル視点
司書に用意してもらった植物図鑑は、内容が公爵家にあるものと似通っており、収穫があったとは言い難いものだった。
公爵家のご先祖に植物学者がいらっしゃったと聞きましたし、植物図鑑はうちのと図書館にあるものの方が充実しているみたいですわ。
「……次は建築の歴史と、周辺諸国についても知りたいですわね」
植物図鑑を閉じて立ち上がり、個室を出る。右奥を見ると司書と目が合い、すぐにやって来てくれたので、建築関係と周辺諸国の詳しい状況がわかる本をお願いし、植物図鑑を返却する。
「少々お待ちください」と言い残し、司書が本を探しに行った直後だ。隣の個室の扉が開き、中から空色の髪をした美しい女性が出てきたではないか。
相手もこちらに気付きお互い軽く会釈をする。
女性なら、おそらくわたくしの方が身分は上だけれど、皇宮図書館という場所からして、他国の王族という可能性も捨てきれませんわ。つまり、わたくしからお声をおかけすると失礼にあたる場合も……ですが、もしわたくしより身分が低ければ、この微妙な空気のまま、時間だけが過ぎていきますわよね。こういう時、写真があればこんな事は起こりませんのに……。
にしても、空色の髪ってどこかで……
「初めてお目にかかります。ディバイン公爵夫人。私はウィーヌス・ウラノ・ディオネと申します」
にこやかに話しかけてきたその人に、ぎょっとする。なぜなら、
「まぁっ、ディオネ辺境伯家の……いえ、その空色の御髪と、お名前がウィーヌス様といえば、枢機卿猊下ではございませんか!?」
教会の最高顧問でディオネ辺境伯家出身の御方。わたくしより身分の高い方でしたわ! 枢機卿の扱いは皇族と同等ですもの。
「失礼いたしました。わたくしはイザベル・ドーラ・ディバインと申します。お初にお目にかかれて光栄ですわ」
「フフッ、よく私が枢機卿だとおわかりになりましたね」
枢機卿猊下は意外だというように目を瞬かせた。
「ご高名は存じ上げておりますわ」
現在教皇が空位である教会では、実質この方が実権を握っている。
大司教と二分する権力をお持ちの方ですわ。
つまりこの方が、大司教とぺーちゃんの政敵ですのね。
2,402
お気に入りに追加
34,140
あなたにおすすめの小説
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした
仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」
夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。
結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。
それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。
結婚式は、お互いの親戚のみ。
なぜならお互い再婚だから。
そして、結婚式が終わり、新居へ……?
一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?
【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。