継母の心得

トール

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第二部 第2章

322.地下迷宮探検3 〜 レーテ視点/イザベル視点 〜

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マルグレーテ視点


乗馬服を着用し、足に馴染んだブーツを履く。
腰にはイザベル様からもらったタンブラーと鞭、左肩には『りゅっく』という便利なバッグを引っ掛け、準備万端よ!

「ははうえ!」
「こーごーさま、ごきげんうりゅ、うりゅわし…ごきげん、よろちーでしゅか!」

イーニアスの宮へ移動すれば、二日前から皇宮に泊まっているノアちゃんに、それは可愛らしい挨拶をされる。
イーニアスも嬉しそうに寄って来て、二人の可愛さにキュンキュンした。

だって……っ、だって……!

「なんて可愛いの!! 色違いのクマさんりゅっくを背負ってるなんて!! ソロモンは!? ソロモンもクマさんリュックなのかしらっ」
「母上、私はクマさんという年ではありませんから……」

後ろから声が聞こえ振り返ると、ソロモンが恥ずかしそうにリュックを背負って立っていた。
リュックはクマさんではなく、無地のおしゃれなもので、似合っているけど、少し残念だわ。

「あにうえ!」
「イーニアス、そのりゅっく、とても可愛いですよ。ノア君も」
「はい!」
「あにうえは、かっこいーです!」
「そうでしょうか。ありがとうございます。それにしても、このりゅっくもそうですが、すに、かー? というこの靴、変わった見た目ですが、とても歩きやすいです」
「このクツは、はやくはしれるのです!」
「しゅごーく、はやいのよ!」

あら、アタシはそれもらってないわよ!? 探検から帰ったら、イザベル様にどういう事か聞かないといけないわね!

「さぁ皆、準備は良いかしら」
「「「はい!!」」」
『『はーい!!!』』


◇◇◇


『こっち!!』

地下迷宮にはどこから入るのかしら。イザベル様は絵画から出てきたと言っていたけど……と、思っていたら、妖精が案内してくれるみたい。

案内されやって来たのは、なんとネロの執務室だった。

「レーテ!! もしかして朕も誘いに来てくれたのか!?」
「違うわ」

部屋に入ると涙目のネロが、私たちの姿を見た途端破顔して、駆け寄ってきたから、仕事をしなさいと追い払ったわ。

「レーテ!?」

はらはらと泣いているネロを尻目に、イーニアスたちの進む方を見る。

『ここ!! このほん、たおす!!』

「うむ」とイーニアスが部屋の隅にある本棚へと近づいていく。

あの本棚は、確かに古いものだけれど、何の変哲もないただの本棚よ?

「こ、皇后陛下、その格好は一体……」
「殿下方も、見慣れない格好をされていますな……」

ネロの執務室にいた事務官たちがざわつき始めた。

「あなたたちは下がりなさい」

皇族の隠し通路を知られるわけにはいかないと、部屋の中にいた使用人や護衛、事務官を追い出し、イーニアスの様子を見守る。
しかしイーニアスは、背伸びをし、手を伸ばした体勢のまま、プルプルしているではないか。

「とどかぬ……」

と困った様子でキョロキョロと周りを見渡す我が子に、キュンとした。

梯子を探しているのね。

「イーニアス、どうしたのだ? この本を取ればよいのか?」

と、ここで、邪魔が入った。
これは子供たちの冒険だというのに、ネロが手伝いを買って出たのだ。

「ちちうえ、はい! そのほんを、たおしてください」
「? うむ」

仕事を放り出して、愛息子を構うネロに、「あんたは仕事しなさいよ」と言ったのだけど、「ちょっとだけ、手伝うだけなのだ」と本を倒している。

まったくもう……。

その後も、妖精の指示に従い、3冊の本を倒した途端、本棚がまるで扉のように開いたのだ。

「ほ、本棚が!?」

ネロもイーニアスも、その場にいた皆が驚きを隠せない。

『ここ、いりぐち!!』

本棚の向こう側は、階段になっており、結構深くまで続いている。

そりゃあそうよね。ここは3階で、この階段は地下まで続いているのだろうし。

「わぁ! ほんだな、とびらだったの!」
「ほ、本当に……地下への入口があったのですね……」
「あにうえ、ノア、ここからは、きをつけていくのだ」

楽しそうだわ!

「朕の執務室に、こんな入口が……っ、レーテ、やっぱり朕も一緒に」
「ダメよ。皇帝が居なくなったら大騒ぎになるじゃない!」
「そんなぁ」

うるうると瞳を潤ませるけど、絆されないわよ。

「じゃあ、行ってくるからね。あんたは仕事をしっかり片付けるのよ。後、事務官や護衛にはこの事がバレないように、フォローよろしく」
「えぇ!?」

そう言い捨て、本棚の扉の中へと足を踏み入れた。



「……みんな、帽子の魔道具に光を灯しなさい」

特に明かりがあるわけではないので、内部は真っ暗だ。階段を転がり落ちてはいけないので、まずは明かりを確保する。
帽子の光を灯せる魔道具と、ライトの魔法を使い、危険がない程度に内部を照らす。

「ソロモン、イーニアスと手を繋いであげて。アタシはノアちゃんと手を繋ぐから」
「はい。母上。イーニアス、私と手を繋いで、ゆっくり階段を降りましょう」
「はい。あにうえ」

息子たちは手を繋ぎ、自分で出したライトの魔法で足元を照らしながら階段を降りていく。

「さ、ノアちゃん。アタシと手を繋ぎましょう」
「はい!」

ノアちゃんは本当に、いい子よね。

それにしても、緩やかな階段で良かった。急な階段なら中止する所だったわ。

そんな事を考えながら、私たちは地下へと降り立ったのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



イザベル視点


いつか使うのではないかと、ノアの為にリュックとスニーカーを作ってもらっていたのだけれど、まさか地下迷宮探検に使用する事になるとは思いませんでしたわ。

「かぁちゃ、にょあ……」

ぺーちゃんがキョロキョロとノアを探している。皇宮という事で慣れないというのに、ノアがいなくなってしまったからか落ち着きがない。

不安なのね……。

「ぺーちゃん、ノアはイーニアス殿下と……課外授業に行ったのですわ」
「ぅにゃ?」
「お勉強の時間ですのよ。だからぺーちゃんは、お母様と一緒にノアが帰ってくるのを待っていましょうね」
「ぁーい!」

片手を上げてお返事するぺーちゃんが可愛らしい。

マディソンが目を細めて頷いていますわ。

「ぺーちゃんはお母様と何をして遊びましょうか」
「ぅ~、にゃ!」
「あら、遊び歌がよろしくて?」
「にゃ!」

わたくしの言葉に大きく頷くぺーちゃんは、昨日から遊び歌にハマッているのだ。

「フフッ、じゃあ、グーチョキパーで色んな形を作ってみましょうね」
「ぁーい」

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