165 / 385
第二部 第2章
314.お姉様、何やってんだ 〜 オリヴァー視点 〜
しおりを挟むオリヴァー視点
「あ……、あ、あの……っ」
今日はよく話しかけられる日のようだ。今度は女性のようだけど……。そういえばディオネ様は、男性だよね? 女性だったのかな?
さっきの事を考えながら、声の聞こえてきた方へ振り返ると、劇団の腕章を付けたスタッフが立っているではないか。
「と、突然申し訳ありません! 輪舞の裏方スタッフなのですが、先程の会話が聞こえてしまいまして……っ」
やはりこの女性は、劇団関係者のようだ。
さっきの会話って、もしかしてチケットの譲り合いがダメだったのかな? でも、僕らちゃんと断ったから問題にはならないはずだ。
「劇団の方が、僕に何のご用でしょうか?
「あ、あのっ、し、シモンズ伯爵家の方だと聞こえて……っ」
ああ……。劇団の人に知り合いはいないし、新素材の事で注目されているから、そっちの話でもしたいのかな。チケットの事が問題になったわけじゃないみたい。
「もしや、女神……いえ、ディバイン公爵夫人のご親族ではないかと思い、失礼ながらお声をかけさせていただきました!」
なるほど。ディバイン公爵関係か。でも……
「女神? ディバイン公爵夫人は、僕の姉ですが……」
「め、め、女神様の弟君であらせられましたか!!」
「はぃ?」
え、何? お姉様の知り合い? あらせられって、どんだけへりくだってるんですか!?
「オリヴァー様、もしかしてディバイン公爵夫人のお作りになった、商会の関係者でしょうかね?」
ドニーズが耳打ちしてくれたけど、お姉様を女神とか言ってくるこの変な人が、商会の取引先の人だったりするのだろうか?
「申し訳ございません!! 女神様の弟君とも知らず、大変失礼をいたしました! 皆様のお席はもちろんご用意させていただきますので、どうぞお入りくださいっ」
「えぇ!?」
席を用意って、ディバイン公爵家の関係者だから!? それなら義兄の名前を使ったみたいで恥ずかしいんだけど!
土下座でもしそうなくらいの勢いで謝罪されるが、これにはドニーズだけでなく、護衛や侍女も驚いて一歩引いている。しかも野次馬が集まりだして、何事だというように僕らを見ているではないか。
「いえ、あの……貴族だからと特別扱いはちょっと……」
「なんと!? さすがは女神様の弟君……っ、遠慮は無用でございます! 女神様の為に、いつでもVIP席を空けておりますので」
怖い、怖いっ。何この人!?
ドニーズ、助けてと目で訴えるが、ちょっと距離を取られているのは何でかな?
「ぇ、ちょ、さっきから女神様ってなんですか!?」
「女神様は、この輪舞を救ってくださいました、演出家兼、脚本家兼、作曲家です!」
はぁ!? お姉様、一体何をやらかしているんですか!!
「ディバイン公爵夫人は多才な方々だとは思っていましたが、作曲や脚本、演出などもなさっておいでとは、すごい方なのですね」
「大人気の劇団の演出って、すごすぎませんか!」
「ディバイン公爵夫人が携わったからこそ、人気が出たのでは?」
ドニーズや侍女が後ろでそんな話をしながら盛り上がっている。
ちょっと、本気で恥ずかしい。
「本日の演目は、女神様の演出、脚本、作曲である、モンスタープリンセスです! 様々な動物や、森の白い精霊が出てくるのですよ」
「よーてーたん!」
精霊と聞いたフローレンスは、目を輝かせて即座に反応した。
「妖精ではなく、精霊なのですよ」
「ちぇーれ?」
「はい! カタカタ動く精霊です」
カタカタ動く精霊って何!? お姉様、本当に何やってるんだ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「護衛や侍女もいますから。ねぇ……」
感情の読めない目で三枚のチケットから手を放すと、ヒラヒラと足元に落ちていく。長蛇の列を作る劇団もこれでは何の意味もない。と、その場を離れるために歩き出した。
目立つ空色の髪が揺れ、行き交う人々がチラチラと視線を寄越す。
注目されるのが当たり前なのか、気にする様子もなく、劇を観ることなく去っていったのだ。
2,529
お気に入りに追加
32,636
あなたにおすすめの小説
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。
誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。
でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。
「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」
アリシアは夫の愛を疑う。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
アリシアの恋は終わったのです【完結】
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
【完結】裏切ったあなたを許さない
紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。
そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。
それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。
そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。