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第二部 第2章
309.私は雑魚か 〜 ぺーちゃん視点 〜
しおりを挟むぺーちゃん視点
「ぅ、りぇお!」
「おおっ、フェリクス! じーじの見舞いに来てくれたのですね」
魔王と共に帝都の教会へ戻って来た私は、クレオがベッドに寝たきりになっている姿を見て、とてもショックを受けた。
もし、このままクレオが死んでしまったら……っ
「じょ、っちゃ!?」
「どうしたのかと言われますとお恥ずかしい。ちょっと腰をやってしまいましてなぁ。いやはや、年には勝てません」
「にゃ!?」
こ、腰だと?
「そうです。ぎっくり腰です」
ぎっくり腰……え? 爺危篤の知らせを受けて帰ってきたら、ぎっくり腰?
「にゃー!!」
驚かすなっ、ちょっと……ほんのちょっぴり、泣いちゃったじゃないか!
「いたた……。フェリクス、ベッドで暴れるとじーじの腰に響くのでやめてくだされ」
「ぉにゃ」
私は、お母さんと魔王から危篤の知らせを聞いて、皇后様のびっくり能力で気絶しそうになりながらも、急いで帰って来たんだぞ! 魔王に抱っこで運ばれて、ここまで来たんだぞ!!
「……クレオ大司教、教会の状況は」
ムキーッとお猿さんのように布団を叩いていると、魔王が理由知り顔でクレオに質問したのだ。
「どうやら、帝都の教会は枢機卿派が6割を占めているようですな……いつからこのような体たらくになったのか……っ」
「残り4割は教皇派か」
「……いえ、4割中ほとんどの……2割以上の者は教皇様の存在すら知らぬ一般のシスターや司祭です」
「実質教皇派は2割にも満たぬという事か」
「私の力が足りぬばかりに……」
「いや、教皇の存在は公表されていない。それでも教皇派が存在するという事は、あなたのお人柄があったからこそだろう」
「ディバイン公爵……」
え、教皇派が2割にも満たないって……本当?
ちょっと待って。回帰前は教皇派はもうちょっといたんだが!? 逆だよ逆! 枢機卿派が4割だった! だから私は目の上のたんこぶとして殺されたんだからな。そんな、2割に満たないって、それもう雑魚だぞ!? 私、雑魚だぞ!
「こんな状態で、年寄りの私がいつまでこの子を守ってやれるのか……」
「ぅえお……」
「大司教、あなたがそのような顔をしては、ぺーが不安になる。まずは療養し、体調を整える事だ」
「そうですな……」
クレオはベッドに横になったまま、私を見てくる。
いつまでも、元気でいてくれ。じーじ。
「しかし、あなたがぺーを急いで連れて来いと言うのでこうして来たはいいが、このような状況ではぺーにとって危険でしかない。何故わざわざ、ぺーを呼んだ」
私を呼んだのは、クレオだったのか?
「……これを」
クレオが胸元を握りしめ、ゆっくりとネックレスを外すと、私にそのネックレスを渡してきたのだ。ペンダントトップが、鍵の形をしたそれを……。
「これは?」
魔王が私の後ろからじっとペンダントトップを睨みつけてくる。怖い。
「これは、歴代の教皇の証である杖と指輪、そして教皇だけが見る事を許された『神の書』が保管された部屋の鍵です」
ああ、何かあったな。そんなものも。
「フェリクス、これはお前が教皇だという証なのだよ」
「にゃ?」
そんな事はわかっているが?
「神の書だと? 聞いたことがないが……」
「神の書に関しては、私も詳しくはわかりませぬがな、何やら聖なる地に通ずる道を示しているとかいないとか、そのような噂は聞いたことがありますなぁ」
「聖なる地?」
「私もそれ以上はわかりませんがな」
そう。あの書には杖と指輪に同時に触れ、本を開いた者にしか見えぬ魔法がかかっているんだ。
そして、本には神獣の住む地に通じるマップのようなものが書かれている。
まぁ、どこのマップかわからないから意味ないけど。
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