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第二部 第2章
300.ご案内します
しおりを挟むミランダが不穏な事を耳打ちしてくれたのだけど、何ですの。その怪しい人たちは。
「現在執事が対応しておりますので、奥様は会う必要はございません。何かあってはいけませんので、屋敷の中へお入りください」
「え、ええ。子供たちに危険が及んでもいけませんものね」
話を聞いていたカミラは、すぐにノアたちの所へ行き、屋敷内に入るよう話している。
護衛に視線を送り、ノアとぺーちゃんの周りを固めてもらうと、わたくしも立ち上がる。
「さぁ、二人とも。おやつの時間ですわよ」
「ぅ、ちぃ、ぁちゅ!」
「ぺーちゃん、おいちぃおやちゅ、たのちみって!」
ノア、よくぺーちゃんの言葉がわかりましたわね!?
「ぺぇちゃ、ぁちゅ!」
「ぺーちゃんのおやちゅ、きょおの、なにかちら」
「ぅ~……ぅちぇん、とぉ!」
「ふれんちとーしゅとがいいの?」
「ぁーい!」
ノアが、ぺーちゃん語を理解して会話しておりますわ! なんという言語理解力の高さ!!
仲良くおててを繋いだ二人は、ゆっくりわたくしの方へ歩いてくる。その際、ナラとデュークはまるで二人を護衛するように寄り添っていた。子猫もデュークの背中に乗っており、周りを警戒しているように見えるから面白い。
「ミランダ、その教会関係者という方たちは、門の外にいるのよね?」
「はい。絶対に公爵家の敷地内には入れませんのでご安心ください」
ミランダがここまで言うという事は、確実に大司教の使いではないようね。ぺーちゃんを狙って来たのは明らかですわ。ですが、ここはディバイン公爵家ですのよ。簡単に侵入出来るとは思わないことね。
「奥様、悪い顔になってますよ~」
「ホホホッ、わたくしったらつい」
カミラに言われて、子供たちに見られる前に顔をマッサージしましたわよ。
元々悪女顔なのに、これ以上怖い顔になったらノアとぺーちゃんに嫌われてしまいますわ。
だけど、今日はテオ様が帝都に転移した日ですわ……。あの誘拐事件といい、まるでタイミングを図ったようにやって来ますわね。考えたくはないけれど、使用人の誰かが情報を流している……?
『ベル、シヨーニン、スパイ、イナイノ~』
チロも他の妖精も、スパイはいないと言っているし、わたくしも公爵家の優しい使用人を疑いたくはない。
それに、テオ様が転移している事実は、使用人の中でもウォルト、ミランダ、カミラ、そしてテオ様とわたくし、ノアの護衛騎士、そして影しか知りませんもの。その中の誰かがスパイだなんて、絶対ありえませんわ。
「チロ、わかっておりますわ。ですがタイミングが良すぎるのも事実。この謎は解かなくてはならないわ」
でないと、またあの誘拐事件のような事が起きてしまいますもの。
「考えられるのは、特異魔法だけれど……」
「おかぁさま、どぉちたの?」
ノアがわたくしを心配そうに見上げてくるのでハッとした。
「あ、あら、いけませんわ。お母様、考え事をしておりましたの。ごめんなさいね」
「おかぁさま、はやく、おやちゅたべ、いくのよ」
「ええ。そうしましょう」
ノアは感受性が強い子だから、心の機微を読むのが上手ですものね。ノアの前では態度や顔に出してはだめね。不安にさせてしまいますわ。
「きょーのおやちゅ、ふれんち、とーしゅとかちらね」
「フフッ、そうだと良いですわね」
「にゃ!」
けれど、タイミングが図れる特異魔法って、やっぱり未来予知ぐらいしか思いつきませんのよね……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
執事(影)視点
ぺーちゃん様を迎えに来たと、堂々とこのディバイン公爵邸にやってきた愚か者共が、教会関係者を装って、いかにも清廉潔白ですというように門の前に立っている。が、全ての行動が怪しすぎるのだ。
御者とフットマンに扮したディバインの影を、やすやすと昏倒させた手腕を持つ者たちが所属する犯罪組織、エンプティ。おそらくは同業者が犯罪組織に堕ちたのだろう。そうなるとこんな巫山戯た行動をする奴らでも油断は出来ない。
首領は教会関係者に扮した者が多くいると言っていた。この男女もそのうちの一人だと考えるのが妥当だろう。
「申し訳ございませんが、クレオ大司教からは必ずご自身が迎えに来ると伺っております。我々もその約束を違わぬよう、クレオ大司教御本人のみに、お引渡しいたします」
こんな巫山戯た行動をしているという事は、こちらに引き付けておいて、他から侵入を図る可能性が高い。だが、
「ワ゛ン゛!!」
「ウォ゛ン゛!!」
「っヒィ!!」
「たす……っ」
公爵邸には最恐の警備隊がいるのだ。味方には温厚な彼らも、敵となれば別人、いや、別犬となる。常に目を光らせ、侵入者には容赦などしない。何処にいようと追い詰め、狩るのが彼らの仕事だから。
「っ……そ、そうですか。では、またクレオ大司教に確認をして、改めて参ります」
「いいえ。お帰りいただく必要はございません」
「え?」
「せっかくお越しいただいたのですから、ご案内いたします」
「あ、案内?」
「はい。地獄へ、ですが」
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