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第二部 第2章
295.ぺーちゃんと犬 〜 ぺーちゃん視点 〜
しおりを挟むぺーちゃん視点
クレオが帝都に戻っていった。アイツはもう年だし、長距離の移動をさせるのも心配だ。それに、私がいないと寂しがるし、騙されやすい。やっぱり一緒に行けば良かったと、後悔してしまう。
「ぺーちゃん、おじぃさまない、さみちぃ。おげんき、だちて」
「にょあ……」
ノアはやっぱり優しい。私の元気がないと心配して声をかけてくれるのだから。
でも、寂しいがっているのはクレオだから。私じゃない。
「ぺーちゃん、さっきの、ナラとじゅーく、みにいくのよ」
「にゃ?」
ナラとデュークとは、先ほど言っていた公爵家のワンちゃんか!!
「にゃ!!」
もちろん見に行くとも! もふもふは大好きだ。触る事も出来るだろうか。出来ればお腹に顔を埋めたい。
「わたちとおてて、ちゅないでくださーい」
「ぁーい」
ワンちゃんだ。回帰前は犬や猫を飼いたくても飼えなかったから、今世は絶対飼いたいと思っていた。可愛いもっふもふの長毛種が良い。出来れば犬も猫も両方飼いたい。後、個人的にはフクロウも気になっている。
「ノア、本当にナラとデュークを見せてあげますの?」
イザベル・ドーラ・ディバインが、困った顔でノアに小声で話しかけている。
何だ。今からワンちゃんの所に行くのだから、邪魔しないでもらいたい。いくら改心したといっても、いつ意地悪してくるかわからない。まだ信用してないんだからな。
「おかぁさま、ぺーちゃん、あいたいって」
「そう……。ナラとデュークは賢いから大丈夫だとは思うけど、ちょっと大きいから、ぺーちゃんがびっくりしないように気をつけてあげましょうね」
うぅ、やっぱり良い人かもしれない……。
「はい! ぺーちゃん、ナラとじゅーく、すべりだい、いっちょできるのよ!」
ワンちゃんが、すべり台を滑るのかぁ! それはすごいっ。にしても、大きいワンちゃんだという事だから、飛びかかられないようにノアの後ろにいた方がいいかもしれない。
「こっちよ」
「ぁーい」
楽しみだ!
◇◇◇
ピーンと立った耳に太い首。シュッとした筋肉美と長い手足。睨まれただけで漏らしそうになるほどの鋭い眼光、チラチラとのぞく牙。今にも飛びかかって喉元を噛み千切られそうな威圧感……
「ワンッ」
「ウォンッ」
「にょっ!」
どどどど、ドーベルマン!! 格好いいけど、でも、ぺーちゃんは殺されるのではないだろうか!? ガブッとされたら確実に終わる。
「ワンッ」
「ウォンッ」
「にゃっ!」
何でこんなに吠えるの!?
「ナラ、じゅ、でゅーく、このこ、ぺーちゃんよ」
「ワンッ」
「ウォンッ」
「ぎゃっ」
さっきから吠えられる度に、恐ろしくて悲鳴が上がる。
ノアの後ろで距離を取っているからまだ耐えられるが、もしこれが間近で……、ん? 何だか頭上からへっへっへ……って聞こえてくるような……しかも生温い……いや、べちょっとする?
「あ、じゅーく、ぺーちゃんのあたま、なめちゃめっ、よ」
「クゥ~ン……」
え、なめ、なめ……!? 私はあの大きな口で、頭を舐められた!?
「ぺぇちゃ……ぁっきゅん……」
頭をぱっくんされ……?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
イザベル視点
「おかぁさま、ぺーちゃん、ねんねよ」
「まぁ……、赤ちゃんって突然ねんねしちゃうのかしらね」
ぺーちゃんがナラとデュークに遭った瞬間、眠気が勝ったのか、すぴすぴ鼻息をたてて眠ってしまいましたのよ。せっかく楽しみにしていたのに、目が覚めたら残念がるかもしれないわ。
そういえば、前世の友人の子供も、よくご飯中に寝ていたっけ。
「ウォンッ」
「クゥ~ン……」
ナラがデュークを叱っていますわ。きっと驚かせたと思ったのね。
「ナラ、ぺーちゃんは眠くなってしまったみたいなの。赤ちゃんは眠るのがお仕事だもの。デュークが悪いわけではありませんのよ」
「ウォン?」
「ワフッ」
「ただ、後ろに回っていきなり舐めてはダメよ」
「クゥ~……」
「ウォン」
あら? わたくし犬と会話しておりません?
『ナラト、デューク、トーッテモ、カシコイノ~!』
チロが言うのだから、ナラとデュークは人間の言葉がわかるという事ですのね。
「ナラ、デューク、ぺーちゃんの目が覚めたら、またご挨拶しましょうね」
「ワンッ」
「ウォンッ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~ おまけ ~
「奥様、犬とも話せるらしいっ」
「妖精が見えて、お話もできて、さらに動物とも話せるなんて!」
「やはり女神だ!!」
「さすがディバイン公爵家の奥様だわっ」
「鳥や花とも喋れるらしい!」
「奇跡の人、いや、女神!!」
こうして、尾ひれが付きまくった噂が公爵家内を飛び交い、イザベルは女神としてより信仰されるようになったとか、なってないとか……。
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