継母の心得

トール

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第二部 第2章

292.視える人

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クレオ大司教の突然のお願いに、ぺーちゃんはご両親がいないと仰っていたから、お仕事の時のお世話が大変なのかしら? と簡単に考えてしまったのだ。

わたくしも妊娠中で外出をあまりさせてもらえませんし、仕事はウォルトが他の方に振っているので子供たちを見ることは可能ですわ。それに、もうすぐ本邸の侍女長であるマディソンが来ますもの。彼女はウォルトの母親ですし、子育てのベテラン。頼りになりますのよね。

「もちろん構いませんわ」

託児所のようで素敵だわ。なんて思って頷いたのだ。

「ディバイン公爵夫人、ありがとうございます。本当に助かりますぞ。……このまま教会にいれば、フェリクスはいつまた拐われるか」
「え?」
「最悪殺されるやもしれぬのです」
「な、何ですって!?」

ぺーちゃんが、命を狙われていますの!?

「きょ、教会ですのよね!? 何故ぺーちゃんが教会で命を狙われますの!?」
「おや? 公爵から何も聞いておりませなんだか……」

大司教は少し思案した後、チラッとわたくしの肩と、子供たちの方を見る。偶然、そこには妖精たちがいて、ドキリとした。

「公爵夫人は、『神託』というものをご存知かな?」
「神託……確か聖者に神々からのメッセージが届く事ですわよね?」

何かしら、急に……

「その通り、神託とは神から人間へのお告げです。グランニッシュ帝国の聖者様が最後とも言われておりますが、今から70年程前、その最後の聖女様が神託を受けました」

フロちゃんという聖女が生まれています。とは言えませんわよね。

「御神託の内容は何だったのですか?」
「『夜の帳が下りる時、全てを見通す瞳持つ赤子立つ。その者未来を知り、信心なる者を導く』」

赤子ってまさか……

「これが70年前あった神託ですな。待てど暮らせど、そのような赤子は現れず、盛大に勘違いした者がいつの間にやら教会に巣食ってしまいましたがなぁ……」

遠い目をする大司教に、今まで苦労なさったのね。と同情してしまう。

「クレオ大司教、その赤子とは……」
「お察しの通り、ぺーちゃん……いえ、フェリクスです」
「まぁ……っ」

やっぱりぺーちゃんが、神託の赤ちゃんでしたのね!

「では、誘拐事件は教会内部の方が指示したと? それなら何故、ノアが狙われたのか……」
「公子様が何故狙われたのかは定かではありませぬが、ぺ……、フェリクスを拐ったのは恐らく教会内部の者でしょう。何しろ、フェリクスの世話を頼んだシスターが姿を消してしまいましたのでな」

長年の付き合いの者でしたが、取り込まれておったのでしょう。と悲しそうに俯く。

信じていた人に裏切られて、しかもお孫さんまで誘拐されて、ご心痛はいかばかりか……。

「大司教、もしかして昨日、ぺーちゃんを連れ帰ってから何かございましたの?」
「危険にさらすことのないよう、片時も離れなかったのですが……どうやらわしの飲み物に睡眠薬が混ぜられるようになりましてな……」
「睡眠薬!? そ、ど、どうしておわかりになりましたの!?」

睡眠薬が混ぜられていたのも驚きだが、何よりそんなものが混ぜられていたとどうしてわかったのか、そっちの疑問が先に立ってしまった。

「どうしてわかったのかと申しますと、ディバイン公爵には昨日お伝えしたのですが……、私は昔から“視える者”でね」

ん? 見えるって何が?

「こちらに伺った時からずっと、あなたの肩に親指ほどの小さな光が、そして公子様とぺーちゃんの間に一つ、拳大の光が見えているのですよ」
「え!?」

まさかこの人、妖精が見えますの!?

『ベル~、チロ、タメシテミルノ~』

チロがそう言ってわたくしの肩から飛び上がり、ふわふわと大司教に近づいていく。

「おや、こちらに来ていただけるのですかな?」
『ホントーニ、ミエテルノ~』

クレオ大司教が、視える人でしたの!?



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いつも【継母の心得】をお読みいただきありがとうございます。
コミックシーモアの、『みんなが選ぶ!! 電子コミック大賞2024』の入賞が発表されました!
残念ながら、【継母の心得】は入賞出来ませんでしたが、多くの読者様に応援していただき、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました!

今後とも皆様に楽しんでいただけるよう、頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします。

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