継母の心得

トール

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第二部 第2章

279.勘違い 〜 ぺーちゃん視点/ノア視点 〜

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ぺーちゃん視点


「問題なく眠りました」
「……寝たフリをしていないだろうな」
「まさか。一人は赤ん坊ですよ。演技なんて出来やしません。それに、この薬は大人も眠らせる強力なものですし」
「何だと? それは身体に問題ないのか。依頼者からは傷一つつけるなと言われているんだぞ」

誘拐犯から変な薬を嗅がされたが、何故か身体に異変は起こらず一体何をされたんだ、と戸惑っていた。そんな時に、ノアから寝たフリをするよう耳打ちされ、急いで演技をしたのだ。
どうやら私の上手すぎる演技を信じ込んでいるようで、気付きもしない。

赤ん坊だが大人顔負けの、私の演技力に恐れおののくがいい!

だけど、目を閉じていると、本当に眠くなってく、る───



「───ぺーちゃん、おきるの……」
「んにゅ……」

クレオか? まだ眠いんだ。もう少し、眠らせて……

「ぺーちゃん、あかちゃんだから、おねむ?」
「……にゃ」

あれ? クレオじゃない。子供の声が聞こえる……?

「チロ、アオ、どうちよ……。しょうよね、わたし、ぺーちゃんだっこちて、はこぶのよ」

ん? 子供の、しかも一人の声しか聞こえないのに、誰かと会話しているように感じるのはなんでだろうか?

「むり、ないの。わたし、ちかりゃもち!」

あ! ノアの声だ。

「にょあ!」

そうだった。私は誘拐されて、薬を嗅がされて樽につめられたんだ!

「おっきしたのね」
「ぁーい!」

おそらくあの薬は、遅効性だったんだ。決して、演技していたらそのまま寝てしまったわけじゃあない。

「あのね、わたしたち、たるのなかいれりゃれて、どこか、いどうしてるのよ」
「にゃ」
「しょれでね、いま、ガタガタ、なくなったの」

んん? ガタガタ……揺れが収まったという事だろうか。

「ちとも、ないの」

ちと……人か。まさか、あの二人が今いないのだろうか。

「いまのぅち、だっちゅちゅよ!」
「だ、ちゅ!?」

子供二人で、脱出出来るのか……!? ノアだけならまだしも、私は赤ん坊だ。足手まといになるのは目に見えている。

「ぺぇちゃ……こぁい」

ノアの足手まといにはなりたくない。

「だいじょぶよ。こわくないの。じぇったぃ、わたしまもるのよ」
「にょあ……」

こんなに幼いノアが頑張っているというのに、心が大人な私が躊躇うなんて、あっていいのか。いいや。あってはならない! 私は、大人だ!! ここから出て、奴らの黒幕も含めて一網打尽にしてやる!

「ぺぇちゃ、ゃりゅ!!」
「ぺーちゃん、いいこよ」
「にゃ! ぺぇちゃ、えりゃーぃ!」

犯人めっ、お前たちの黒幕はわかっているんだぞ!

「ぺーちゃん、ちょっと、しーよ」
「にゃ……」

そう、奴らの黒幕は……、イザベル・ドーラ・ディバイン、お前だ!!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ノア視点


~ ぺーちゃんが目覚める少し前 ~


たるのなか、ぺーちゃんといっしょ、いれられて、ぬのかぶって、おうまさんたべるくさ、のしぇられて、おふたしまったの。

『ノア、クルシー、ナイ!?』
「アオ、だいじょぶよ」

おうまさんの、ぶるぶるっておこえ、きこえたから、たぶんばしゃよ。

「ガタガタ、ちてる……」
『タル、ニバシャ、ノセラレタ!!』
『ノア、シー、ナノ。タルノソバ、オトコイルノ』

チロにちゅーいされて、おくちふさいで、ごめんなさぃって、ピカピカちてるアオとチロ、みたのよ。

『チロ、バシャドコイク?』
『ミナトアルホー、ムカッテルノ』

みなと……うみ?

『ノア、フネノセラレル!?』
『フネ、ノセラレタラ、カゲ、オイツケナクナルノ~!』

たいへんよ! だっちゅちゅ、ちなきゃ!

「アオ、チロ。わたし、だっちゅちゅ!」
『ノア、ソト、カンシイル!! ミツカルト、アブナイ!!』
『アオノ、ユートーリナノ』

ふね、のしぇられると、かげおいちゅけない。わたし、おかぁさまと、あえなくなるのよ。

「おかぁさま、あいたい!」
『ノア……』
「おかぁさまの、おそば、かえりゅの!」

じぇーったい、かえりゅのよ!!


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