継母の心得

トール

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第二部 第2章

278.出来る事をしよう 〜 テオバルド視点/ノア視点 〜

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テオバルド視点


突然現れた皇后に、またもや帝都に引っ張って来られ、仕事量にうんざりしながらも、大粛清からこっち、これが普通かと書類を片付けていると、廊下から皇帝陛下が皇后に引きづられていく音が聞こえてくる。

いつもの事か。

気にせず書類に書かれた数字を目で追う。

「朕は、はんこ押しの刑はもう嫌なのだ~」
「罰じゃなくて、アンタの仕事でしょうが!」

うるさい。

『アカ、アスノトコロ、イコー!』
『アオ、スイーツタベルー!!』

やかましい。

『テオノ、ヘヤデ、タベルー!!』

何故そうなる。キノコどもはどうして私の部屋にいるんだ。

『プリ~ン、プリンプリン、アオノプリン~!!』

私の机の上で踊るな。わざわざ視界に入ってくるんじゃない。

『ベルト、ノア、オデカケ。イエ、スイーツナイ!!』

ちょっと待て、

「ベルが出かけただと……?」
『テオ、テートキタアト、ノアト、デート!!』

韻を踏んで得意気な顔をするな。

「ベルは身重の身体で外出したのか……」
『ベル、イッテタ!! ニンプ、ビョウニンジャナイ。テキドナウンドー、ヒツヨウ。ココロ、スコヤカニ!!』
「ベル……っ」

まったく。私の妻はじっとしていられないようだ。

「外出ならば、私がいる時にすれば良いものを」
『テオ、カホゴ!!』

うるさい。

『テオ、タイヘンナノ~!』

今度は何だ。

突然聞こえてきたチロの声に、随分と切迫した声だと訝しむ。

『ノアガ、ユーカイサレタノ~!!』
「何だと!?」

チロの言葉を聞いた瞬間、心臓が何かに引っ掻かれたような衝撃を受けた。

「ノアは無事なのか!? ベルは……!?」
『ノアモ、ベルモ、ブジナノ!』

そうか、二人は無事か……。

『チロ、ノアトイッショ! ベル、ミランダ、ゴエーイッショ、アンゼンナトコロ、イルノ~』

少し安堵するが、ノアは未だ誘拐犯と共に公爵家の馬車で移動しているという。

一刻の猶予もない……っ

「チロ、出来るだけ犯人を刺激するな。ノアを傷つけられないよう守ってくれ」
『モチロンナノ!』

ノアのそばにいてくれたのがチロで良かった。もし他の妖精ならば、誘拐犯に何かしらの攻撃をして激昂させていたに違いない。

「チロがノアのそばにいるという事は、ベルのそばにはたまごだけか……。アオ、チロの声が聞こえたな」
『キコエタ!! アオ、ノアタスケニイク!!』

アオは頭に血が上っているのか、私の指示も聞かず勝手に行動しようとしていた。

「アオ! 焦る気持ちはわかるが待つんだ」
『テオ、ドーシテ!? アオ、スグノアノトコロ、イク!!』
「お前が今ノアの所へ向かっても、どうする事も出来ない。お前は今すぐ、アカにベルの所へ移動するよう指示をして、正妖精を私の元へ連れて来るんだ」
『デモ……!!』

納得出来ないのか食い下がるアオに、自身の焦りを隠して説得する。

「ノアのそばにはチロがいる。お前は、自分が出来る事をやってから、ノアのそばについてやってくれ」
『……ワカッタ!! アオ、デキルコトスル!!』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ノア視点


『ノアヲ、ハナセー!! アオガ、ユルサナイゾー!!』

アオ、わたしのため、わるいちと、めっしてくれてるの。

『アオ、イマハナスト、ノアキケンナノ』
『デモ……ノア、ニモツチガウ!!』

だいじょぶよ。わたし、アオきてくりぇたから、このくらい、へいき!

『ノア、イタイトコロ、ナイ?』

しんぱいしょうに、おかおのまえ、ふよふよちてるアオ、やさしぃのよ。

「このまま赤ん坊とガキを樽に入れろ」
「はい。この上から布と藁を被せて良いんですよね」
「ガキどもが騒がないよう、眠らせてからだ」

おおきな、たるのなか、ぺーちゃんといれりゃれたの。

「ふぇ……っ」
「ぺーちゃんっ」

おくち、ハンカチで、ふしゃがれて、そちたらアオが、ピカッてちて、ぺーちゃんとわたしも、ピカッちたの。

『ノア、ネンネノフリ、スルノ~!』

ねんね? ぺーちゃんも?

『ペーチャント、ネンネノフリ、スルノ~』

チロにうんして、ないちゃいしょうな、ぺーちゃんに、ないしょの、ねんねよって、ちゅたえたのよ。そしたらぺーちゃん、こてんちたの。

ぺーちゃん、えらいのよ。


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