継母の心得

トール

文字の大きさ
上 下
126 / 408
第二部 第2章

275.英雄ノア 〜 ???視点 〜

しおりを挟む


???視点


「にょあ!!」
「何だ? 赤ん坊の目が覚めたのか。……まぁ良い。二人で大人しくしていろ」

荷物のように降ろされたノアは、キョロキョロと周りをうかがい、私を見た。


◆◆◆


「───教皇猊下、お話にあったオリヴィア側妃は処刑され、リッシュグルス国の第一王子は病気でお亡くなりになりました。現在第三王子であったジェラルド様が国王となり、グランニッシュ帝国の友好国として、とても良い関係を築いております。そして、ネロウディアス帝はぴんぴんしておりますし、韜晦皇帝と大変評判ですな。あの大粛清は本当に爽快でしたぞ」
「ちょんにゃ、びゃかにゃ……っ」

クレオに前世の話をした時、私は皇族とディバイン公爵家の情報をいち早く手に入れたくて、クレオに頼んでいたのだ。

前世では、グランニッシュ帝国は、絵に描いたような酷い独裁国家で、オリヴィアという側妃に惑わされたバカな皇帝が掌で転がされ、結局隣国と通じていたオリヴィアに騙され搾取された挙げ句、隣国との戦争に発展し、国力を大きく削がれた所で周辺諸国が攻めてきて滅びた。

だからこそ、そんな運命を辿りたくないと、早めに彼らの情報を手に入れ、ノアに接触を図ろうとしたのだが……。

「戦争ですか? ディバイン公爵のおかげで、この国の防衛は万全。戦争のせの字も出ぬほど平和でございますなぁ」

ディバイン公爵も、生きているのか!?
どういう事だ……。回帰前とは全く違う!

「ディバイン公爵家の嫡男であらせられるノア公子は、とても優秀だそうで、イーニアス皇太子殿下と共に、デビュタント前にも関わらずすでに有名で、市井でも大人気なのですよ。グランニッシュ帝国は安泰ですな」
「にょあ!」

実は、ノアは私の憧れの人だ! あの人は、優しく強く、皆の英雄ヒーローだった。聖女フローレンスを守る為に、共に戦った同士でもある。

「んにゅ? いーにーぁちゅ?」
「イーニアス皇太子殿下は、ネロウディアス帝と皇后マルグレーテ様の間に生まれた皇子で、皇太子として立太子しておりますよ」

イーニアスが皇太子というのは、回帰前のままだ。
しかし市井でも人気?? 私の知っているイーニアスは、皇帝になるためにノアの命を狙い、聖女であるフローレンスを手に入れようとしていた悪者だぞ。

「イーニアス皇太子殿下とノア公子は幼い頃から大変仲がよろしいようで、最近は『おもちゃの宝箱』にも二人一緒に顔を出しているようですな。ディバイン公爵夫人のお店ですから、安全ですし行きやすいのでしょう。私も一度は行ってみたいのですが、カフェはいいにしても、おもちゃとなると、この爺ではハードルが高くて……」
「にゃか、い? もちゃ? ぃばいん……ふじん?」

何だそれは!? まず、イーニアスとノアはそのように馴れ合う関係ではないはずだ! むしろ敵対していただろう!? おもちゃの宝箱なる店など聞いた事もないし、ディバイン公爵夫人だと!? 奴はノアを虐待していた悪辣非道な女ではないか!

「にょあ、らぃじょぶ、にゃ!?」
「? 大丈夫とは、何がですかな?」
「にょあ、ぃばいん、ふじん、いじめりゃれてりゅ!」
「ハハハッ、まさかそのような事はございませんよ」
「ふにゅ!?」
「あの母子は大変仲が良いと有名ですし、実際笑い合いながら手を繋ぎ、お出かけしている所をよく見ます。それに、ディバイン公爵夫人はとても評判の良い方ですよ」

何だと!?

回帰したら、世界は一変していた。
馬車は何かこう、シュッとスタイリッシュになっているし、あの地獄のような揺れも軽減され、何より変形するのだ。子供のおもちゃなるものは溢れかえっているし、もうなんか……怖い!

そんな戸惑いの中で、どうしてこうも変わってしまったのかを調査していた所、イザベル・ドーラ・ディバインが全ての中心に在る事を突き止めたのだ。


◆◆◆


などという話をしたばかりだったが、まさかこんな所でノアに出会えるなんて!

「くれぐれも騒ぐなよ。殺されたくなければな」

男はそう言い残し、部屋を出て行った。

何だかわからないが、ノアと二人にしてくれたのは幸運だ。ノアならあんな奴ら一捻り…………

「こじょみょ!!」

ノアはまだ、小さな子供だった!!

「あかちゃん……?」
「にゃ!?」

の、ノアに話しかけられた!!

しおりを挟む
感想 11,471

あなたにおすすめの小説

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

離縁を言い渡したら、追いかけられる羽目になりました

ネコ
恋愛
 公爵家に嫁いだミレイユは、激務の夫が“仕事”という口実で愛人のもとへ通う姿に気づかないふりをしてきた。けれどある日、開き直った夫は「家名のために耐えろ」と言い放つ。もはや我慢の限界に達したミレイユは離縁を宣言。すると何故か、あれだけ放置していた夫が必死にミレイユを引き止めようと動き出す。もう遅いのに――。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。