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第二部 第2章
275.英雄ノア 〜 ???視点 〜
しおりを挟む???視点
「にょあ!!」
「何だ? 赤ん坊の目が覚めたのか。……まぁ良い。二人で大人しくしていろ」
荷物のように降ろされたノアは、キョロキョロと周りをうかがい、私を見た。
◆◆◆
「───教皇猊下、お話にあったオリヴィア側妃は処刑され、リッシュグルス国の第一王子は病気でお亡くなりになりました。現在第三王子であったジェラルド様が国王となり、グランニッシュ帝国の友好国として、とても良い関係を築いております。そして、ネロウディアス帝はぴんぴんしておりますし、韜晦皇帝と大変評判ですな。あの大粛清は本当に爽快でしたぞ」
「ちょんにゃ、びゃかにゃ……っ」
クレオに前世の話をした時、私は皇族とディバイン公爵家の情報をいち早く手に入れたくて、クレオに頼んでいたのだ。
前世では、グランニッシュ帝国は、絵に描いたような酷い独裁国家で、オリヴィアという側妃に惑わされたバカな皇帝が掌で転がされ、結局隣国と通じていたオリヴィアに騙され搾取された挙げ句、隣国との戦争に発展し、国力を大きく削がれた所で周辺諸国が攻めてきて滅びた。
だからこそ、そんな運命を辿りたくないと、早めに彼らの情報を手に入れ、ノアに接触を図ろうとしたのだが……。
「戦争ですか? ディバイン公爵のおかげで、この国の防衛は万全。戦争のせの字も出ぬほど平和でございますなぁ」
ディバイン公爵も、生きているのか!?
どういう事だ……。回帰前とは全く違う!
「ディバイン公爵家の嫡男であらせられるノア公子は、とても優秀だそうで、イーニアス皇太子殿下と共に、デビュタント前にも関わらずすでに有名で、市井でも大人気なのですよ。グランニッシュ帝国は安泰ですな」
「にょあ!」
実は、ノアは私の憧れの人だ! あの人は、優しく強く、皆の英雄だった。聖女フローレンスを守る為に、共に戦った同士でもある。
「んにゅ? いーにーぁちゅ?」
「イーニアス皇太子殿下は、ネロウディアス帝と皇后マルグレーテ様の間に生まれた皇子で、皇太子として立太子しておりますよ」
イーニアスが皇太子というのは、回帰前のままだ。
しかし市井でも人気?? 私の知っているイーニアスは、皇帝になるためにノアの命を狙い、聖女であるフローレンスを手に入れようとしていた悪者だぞ。
「イーニアス皇太子殿下とノア公子は幼い頃から大変仲がよろしいようで、最近は『おもちゃの宝箱』にも二人一緒に顔を出しているようですな。ディバイン公爵夫人のお店ですから、安全ですし行きやすいのでしょう。私も一度は行ってみたいのですが、カフェはいいにしても、おもちゃとなると、この爺ではハードルが高くて……」
「にゃか、い? もちゃ? ぃばいん……ふじん?」
何だそれは!? まず、イーニアスとノアはそのように馴れ合う関係ではないはずだ! むしろ敵対していただろう!? おもちゃの宝箱なる店など聞いた事もないし、ディバイン公爵夫人だと!? 奴はノアを虐待していた悪辣非道な女ではないか!
「にょあ、らぃじょぶ、にゃ!?」
「? 大丈夫とは、何がですかな?」
「にょあ、ぃばいん、ふじん、いじめりゃれてりゅ!」
「ハハハッ、まさかそのような事はございませんよ」
「ふにゅ!?」
「あの母子は大変仲が良いと有名ですし、実際笑い合いながら手を繋ぎ、お出かけしている所をよく見ます。それに、ディバイン公爵夫人はとても評判の良い方ですよ」
何だと!?
回帰したら、世界は一変していた。
馬車は何かこう、シュッとスタイリッシュになっているし、あの地獄のような揺れも軽減され、何より変形するのだ。子供のおもちゃなるものは溢れかえっているし、もうなんか……怖い!
そんな戸惑いの中で、どうしてこうも変わってしまったのかを調査していた所、イザベル・ドーラ・ディバインが全ての中心に在る事を突き止めたのだ。
◆◆◆
などという話をしたばかりだったが、まさかこんな所でノアに出会えるなんて!
「くれぐれも騒ぐなよ。殺されたくなければな」
男はそう言い残し、部屋を出て行った。
何だかわからないが、ノアと二人にしてくれたのは幸運だ。ノアならあんな奴ら一捻り…………
「こじょみょ!!」
ノアはまだ、小さな子供だった!!
「あかちゃん……?」
「にゃ!?」
の、ノアに話しかけられた!!
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