継母の心得

トール

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第二部 第1章

257.中学生時代の気持ち

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「これは何だ……」
「奥様がノア様の為に描かれた、ノア様の剣だそうです」

ノアの部屋の壁に飾られた、騎士ノアの図と、魔法剣の図を見ながら呆然と呟いたテオ様とそれに丁寧に答えるウォルトの姿を目にし、オタク心を抑えきれなかった恥ずかしさが今更ながらに込み上げてきた。

「ガードの装飾部に、魔石を嵌め込む……なるほど。新素材で作られた剣ならば、それも可能か……」

いえテオ様、そのように真剣に考察されても困りますわ。ますます恥ずかしくなってきましてよ。

「おとぅさま、しょれ、わたちのしゅっごーい、けん!」
「そのようだ。もしこの魔法剣とやらが完成すると……いや、そうだな。ノア、一つ言っておくが、お前は将来騎士ではなく、ディバイン公爵の地位に就く。国中の騎士たちを纏める立場だ」

テオ様、そのお話はノアがもう少し大きくなったらで良いのではなくて?

「ちがうのよ。わたち、おかぁさまの、きちよ!」

ほら、ノアが戸惑っておりますわ。

せっかく父子がコミュニケーションを取っているので、わたくしはノアとテオ様のやり取りを見守る事にし、一歩下がる。

「お前はディバイン公爵家の後継者だろう」
「? おとぅさま、こーけーちゃ、なぁに?」

そうよね。幼いノアにはまだ、後継者の意味もわからないですわよね。

「ディバイン公爵の後を継ぐ者だ。つまり、私の次に公爵になる者の事を言う」
「わたち?」
「そうだ。お前がこの家を継ぎ、繁栄させていく」
「はんえ? わたち、できる?」
「もちろんだ。お前にしか出来ない」

まぁっ、テオ様がノアにきちんと教えを説いておりますわ!

「わたち、こーけーちゃとぉ、きち、しゅる!」
「……ああ。もうそれでいい」
「あとね、かいじょくの、おーさまも!」
「……」
「しょれと、アスでんかの、しょっき、とぉ……」

ノア、食器ではなく、側近ですわね。

「まだあるのか。一体いくつなりたいものがあるんだ」
「わたち、たぁくさん!」

フフッ、たくさんなりたいものがありますのね。

「ベル……二つほどに絞った方が良いのではないだろうか」

真面目ですわね!

「テオ様、子供の頃はたくさんなりたいものがあるものですのよ。そんなに心配しなくても大丈夫ですわ」
「そういうものなのか……」

わたくし、テオ様の幼い頃を見たくなってきましたわ。
この人、根が真面目すぎますのよね。そこが好ましいのですけれど。

「おかぁさま、アスでんかの、けんも、かいてほちぃの」
「イーニアス殿下の剣も?」

ノア、テオ様の前でオタク心をさらけ出せと!?

「アスでんか、ひのまほお、ちゅかうの。だから、ひのけん!」
「わかりましたわ! イーニアス殿下の剣、描きますわよ!」
「おかぁさま、ありがと、ごじゃぃましゅ!」

ペコリとお辞儀をするノアが可愛くて可愛くて!!

「ほぅ、イーニアス殿下の魔法剣も描くのか」
「おとぅさまのけん、かく?」
「そうだな。イーニアス殿下のものを描いた後にお願いしようか」

えぇ!?

こうして、ノアに応援されながら炎の魔法剣と、テオ様の魔法剣を描きあげたのだ。
わたくし、中学生時代を思い出しましたわ。


~ 後日 ~


「わぁ! かっこいいのだ!!」
「しょれ、アスでんかのけんよ!」

まるで自分が描いた、と言うように胸を張るノアが面白い。

そうよね。ノアが色々考えてくれましたものね。あんなにはしゃいじゃって、可愛いですわ。

「ほのおの、けんだ!」
「ここ、ひのまほおの、ましぇきいれるのよ。しょしたら、ボーッって、なるの!」
「ボーッて、なるのか!」
「しょう!」

もう、この子たち可愛すぎますわ! そんなに喜んでくれるなら、わたくしいくらでも描きますわよ。

「イザベル様のお陰で、イーニアスが大喜びしているわ。ありがとうね」
「フフッ、喜んでいただけてこちらも嬉しいですわ」

ノアがイーニアス殿下の剣の絵を見せたいと言うので、無理を言って皇后様に来ていただいたのだけれど、皇后様もちょうど日記の話をしたかったのだと嫌な顔を一つせず来てくださったのには助かりましたわ。

「それでね、アタシ、皇城に提出された事故の記録を調べてみたのよ」

事故の記録!? そんなものがありましたの───


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