108 / 385
第二部 第1章
257.中学生時代の気持ち
しおりを挟む「これは何だ……」
「奥様がノア様の為に描かれた、ノア様の剣だそうです」
ノアの部屋の壁に飾られた、騎士ノアの図と、魔法剣の図を見ながら呆然と呟いたテオ様とそれに丁寧に答えるウォルトの姿を目にし、オタク心を抑えきれなかった恥ずかしさが今更ながらに込み上げてきた。
「ガードの装飾部に、魔石を嵌め込む……なるほど。新素材で作られた剣ならば、それも可能か……」
いえテオ様、そのように真剣に考察されても困りますわ。ますます恥ずかしくなってきましてよ。
「おとぅさま、しょれ、わたちのしゅっごーい、けん!」
「そのようだ。もしこの魔法剣とやらが完成すると……いや、そうだな。ノア、一つ言っておくが、お前は将来騎士ではなく、ディバイン公爵の地位に就く。国中の騎士たちを纏める立場だ」
テオ様、そのお話はノアがもう少し大きくなったらで良いのではなくて?
「ちがうのよ。わたち、おかぁさまの、きちよ!」
ほら、ノアが戸惑っておりますわ。
せっかく父子がコミュニケーションを取っているので、わたくしはノアとテオ様のやり取りを見守る事にし、一歩下がる。
「お前はディバイン公爵家の後継者だろう」
「? おとぅさま、こーけーちゃ、なぁに?」
そうよね。幼いノアにはまだ、後継者の意味もわからないですわよね。
「ディバイン公爵の後を継ぐ者だ。つまり、私の次に公爵になる者の事を言う」
「わたち?」
「そうだ。お前がこの家を継ぎ、繁栄させていく」
「はんえ? わたち、できる?」
「もちろんだ。お前にしか出来ない」
まぁっ、テオ様がノアにきちんと教えを説いておりますわ!
「わたち、こーけーちゃとぉ、きち、しゅる!」
「……ああ。もうそれでいい」
「あとね、かいじょくの、おーさまも!」
「……」
「しょれと、アスでんかの、しょっき、とぉ……」
ノア、食器ではなく、側近ですわね。
「まだあるのか。一体いくつなりたいものがあるんだ」
「わたち、たぁくさん!」
フフッ、たくさんなりたいものがありますのね。
「ベル……二つほどに絞った方が良いのではないだろうか」
真面目ですわね!
「テオ様、子供の頃はたくさんなりたいものがあるものですのよ。そんなに心配しなくても大丈夫ですわ」
「そういうものなのか……」
わたくし、テオ様の幼い頃を見たくなってきましたわ。
この人、根が真面目すぎますのよね。そこが好ましいのですけれど。
「おかぁさま、アスでんかの、けんも、かいてほちぃの」
「イーニアス殿下の剣も?」
ノア、テオ様の前でオタク心をさらけ出せと!?
「アスでんか、ひのまほお、ちゅかうの。だから、ひのけん!」
「わかりましたわ! イーニアス殿下の剣、描きますわよ!」
「おかぁさま、ありがと、ごじゃぃましゅ!」
ペコリとお辞儀をするノアが可愛くて可愛くて!!
「ほぅ、イーニアス殿下の魔法剣も描くのか」
「おとぅさまのけん、かく?」
「そうだな。イーニアス殿下のものを描いた後にお願いしようか」
えぇ!?
こうして、ノアに応援されながら炎の魔法剣と、テオ様の魔法剣を描きあげたのだ。
わたくし、中学生時代を思い出しましたわ。
~ 後日 ~
「わぁ! かっこいいのだ!!」
「しょれ、アスでんかのけんよ!」
まるで自分が描いた、と言うように胸を張るノアが面白い。
そうよね。ノアが色々考えてくれましたものね。あんなにはしゃいじゃって、可愛いですわ。
「ほのおの、けんだ!」
「ここ、ひのまほおの、ましぇきいれるのよ。しょしたら、ボーッって、なるの!」
「ボーッて、なるのか!」
「しょう!」
もう、この子たち可愛すぎますわ! そんなに喜んでくれるなら、わたくしいくらでも描きますわよ。
「イザベル様のお陰で、イーニアスが大喜びしているわ。ありがとうね」
「フフッ、喜んでいただけてこちらも嬉しいですわ」
ノアがイーニアス殿下の剣の絵を見せたいと言うので、無理を言って皇后様に来ていただいたのだけれど、皇后様もちょうど日記の話をしたかったのだと嫌な顔を一つせず来てくださったのには助かりましたわ。
「それでね、アタシ、皇城に提出された事故の記録を調べてみたのよ」
事故の記録!? そんなものがありましたの───
2,984
お気に入りに追加
32,636
あなたにおすすめの小説
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。
誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。
でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。
「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」
アリシアは夫の愛を疑う。
小説家になろう様にも投稿しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
アリシアの恋は終わったのです【完結】
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。