継母の心得

トール

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第二部 第1章

246.いざ、ディバイン公爵領へ

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「気を付けて帰ってちょうだい」
「ノア、かえったら、あそびにいく」
「朕も! 朕もイーニアスとともに遊びに行くのだ!」

領地へ帰る日、馬車に乗り込む少し前、玄関での事なのだけれど。何故か使用人の中に皇帝一家が混ざってお見送りしてくれているのだけれど……、皇帝一家はフットワークが軽すぎではなくて?

「皇帝陛下、皇后様、わざわざお見送りに来てくださいましたのね」
「アスでんか! じぇったい、あしょび、きてね」
「うむ! もちろんだ」

わたくしが皇后様と皇帝陛下へ話しかけている横では、感動のお別れをしているノアとイーニアス殿下がいる。
感動の再会ごっこも会うたびにやっていますけれど、お別れは少しの間でも寂しいですわよね。

「テオ様が領地に帰る日なのよ! 見送りに来るのはファンとして当然よ!」
「ブレませんわね……」

ブレない皇后様を、なんなら尊敬の念すら抱きながら見ていたら、今度は皇帝陛下が声をかけてくる。

「公爵、夫人、気を付けて帰るのだぞ。少し前に襲撃されたばかりなのだから、護衛も増やした方が良い」
「陛下、護衛はすでに増やしている」
「そ、そうか。ならば良し!」

皇帝陛下、テオ様の返しが不敬でも何も言わない度量の広さ、さすがですわ。

「皇帝陛下、ありがとう存じますわ。そうだ。おもちゃの宝箱帝都支店で、冬場に期間限定のイベントがございますの。よろしければ皇后様と殿下方で行ってみてくださいまし。あ、日程さえ仰っていただけましたら、貸し切りで遊べるよう、スタッフに伝えておきますわ」
「イベント? よくわからぬが、夫人が言うのなら楽しいに違いない! レーテ、イーニアス、家族で行ってみるのだ!!」
「おもちゃの、たからばこに、いけるのですか!?」
「あら、貸し切りって、イザベル様、大丈夫なの?」

皇后様が心配そうな顔を向けるが、皇帝一家をお迎えするのに、開店前や開店後、まして通常営業中になど考えられないだろう。それに、お子様も12人(赤ちゃん含む)いらっしゃいますし。

「もちろんですわ。皇后様も、皇帝陛下も、たまには殿下たちみんなとおもちゃ屋さんでおもいっきり遊んでくださいまし!」
「ありがとう、イザベル様!」
「子供たちが絶対喜ぶのだ!!」

皇后様と皇帝陛下はキャッキャと子供のように喜んでくれたが、その隣でイーニアス殿下とノアが話している声が耳に届く。

「アスでんか、おもちゃの、たかりゃばこ、いく?」
「うむ! ふゆげんていの、たのしいことが、あるらしい!」
「わたちも、アスでんかと、いっちょ、あしょびたい……」
「ノア……」

あらあら、そうよね。ノアも仲良しのイーニアス殿下がおもちゃの宝箱に行くと聞いたら、一緒に遊びたいですわよね。

すると、ノアのつぶやきにイーニアス殿下が顔を上げ、わたくしを見たのだ。

「イザベルふじん!」
「え、はいっ」
「ノアも、おもちゃの、たからばこに、ともにいっても、かまわぬだろうか」

えぇ!?

「殿下、ノアはこれからディバイン公爵領に戻りますのよ? 帝都支店に行くのは…」
「おかぁさま、だめぇ?」

ノアと殿下の可愛い上目遣いに、くぅっと歯を食いしばる。

「あら、いいじゃない。アタシの能力があれば、距離なんて関係ないわ! 貸し切りにする時には迎えに行くわよ」
「ははうえ、ありがとう、ございます!」
「こおごおさま、ありがと、ごじゃいましゅ!」

勝手に話が進んでおりますわ……。

「皇后様、あなたは皇后様ですのよ!? 毎回思うのですが、皇后様自らが目下の者を迎えに来るなど……、もう少し皇后陛下としての自覚をお持ちになってくださいませ。皇后陛下はあなた様しかおりませんのよ!?」
「自覚云々は、イザベル様にだけは言われたくないわよ。それに、プライベートな事なんだから、迎えに行ける者が迎えに行けばいいのよ。だってアタシたち、友だちじゃない!」
「まぁ……っ、そんな事を言われたら、嬉しくなるじゃありませんか!」
「オホホッ、本当、イザベル様ってば素直の可愛い人よね」

こうして、おもちゃの宝箱に一緒に行く約束をしたわたくしたちは、領地に戻る旅に出発したのだ。



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